目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第141話 Side『宇宙の虎』

 

 閃光が迸る。

 

 メガ粒子の光条が、漆黒の宇宙を縦横に飛び交い、大小の爆発が立て続けにこちらの網膜を焼いていく。

 

「左翼弾幕薄い! これ以上寝ぼけたことしてんなら、そのケツにミサイル打ち込んで撃ち出してやると伝えな!」

 

 動きの鈍い味方をシーマは殴り飛ばしてやりたい気持ちだった。

 

 作戦宙域に到達した瞬間、大量のミノフスキー粒子によるジャミングと、ムサイ級6隻からなる部隊の襲撃を受けた。

 

 勧告などあらず、相手は事あるを予想して待ち構えていたのだ。 

  

「このシーマに楯突こうってのが気に要らないね!」

 

 激情家な面のある彼女は、苛立ちをこめて吐き捨てた。

 

 敵の規模は予想よりも大きい。

  

 相手はコムサイやパプアといった艦も見受けられ、非正規部隊でありながら、出撃したMSの数も多かった。

 

 敵のMSはほとんどが、いまや旧式と呼ばれるようになってしまったザクⅡF型であり、こちらのゲルググとは性能差に大きな隔たりがある。

 

 しかし敵は宙域に漂うデブリを利用しつつ、こちらの艦隊へと距離を詰めてくる。

 

 一方、待ち伏せを受けたことで初動の遅れた海兵隊は、MSの展開が遅滞したことで防戦に手一杯であった。

 

 伏兵があることは予測していたが、啓開に人員を割く余裕はなかった。

 

 なぜならば、キシリアが言う通り奴らが廃コロニーに核パルスエンジンを取り付けていれば、作戦は時間との勝負になる。

 

 エンジンの取り付け阻止。それができなければ、コロニーに潜入して、大量の爆薬による爆破解体をしなければならない。

 

 目的のために多少の出血は承知の上であったが、相手の練度が思った以上にいい。

 

 通信もままならないミノフスキーの海で、連携の取れた動きをしている。

 

「やっぱりこいつらは連邦じゃないね」

 

 戦術はジオンに近い。情報通り、正規軍の中から裏切った者たちのようだ。

 

「4番艦撃沈!」

 

 通信士の悲痛な声に、今度こそシーマは舌打ちを返した。

 

「どっからだい!?」

 

「デブリ帯からです! 高出力のビームを確認!」

 

「アイツら、まさか空間移動砲台(スキウレ)まで持ち出してんのか!?」

 

 スキウレは、ムサイなどに使われるメガ粒子砲を転用して、MSが搭乗して使用可能な火器として最近開発されたものだ。

 

 核融合炉のジェネレーターを内蔵をし、スラスターによる移動も可能である。

 

 デブリからの狙撃なら、戦艦によるものではないだろう。その巨体を大小様々な無数のゴミが漂う場所に置くほど酔狂に富んだ人間は居ない。自分が新しいデブリになってしまうからだ。

 

 実際にスキウレを使ったかは定かではないが、コンピューター任せの狙撃も不可能なこの環境で、戦艦を一発で撃ち落とすなどどれほどの腕を持ったスナイパーだ。

 

 テロリスト集団の戦闘力を侮っていた一刻前の自分の顔を殴ってやりたい、とシーマは思った。

 

「大佐、私もMSを使わせてもらいたい」

 

 ガトー少尉の申し出に、シーマは露骨に顔をしかめた。

 

「少尉、アンタはうちらのお目付け役だ。この乱戦じゃ、部下を探して説得なんてできんだろ。大人しくしときな」

 

 万が一にでも彼に死なれてしまっては困る。

 

 もしものとき、海兵隊が裏切ったわけではないという証人になってもらうためだ。

 

「しかし狙撃兵は厄介でしょう」

 

「まさかデブリ帯に突っ込むとでも? 尚更許可はできないね。そもそもこの環境での狙撃など、そうそう当たるもんじゃ――」

 

 言いかけた瞬間、船体が揺れた。

 

「どっからだい!?」

 

「左舷第4ブロック被弾! デブリ帯からのメガ粒子砲!」

 

「馬鹿な! あの距離で!?」

 

 艦は止まってなどいない。誘導装置も効かない環境では、本来掠らせるのも難しいはずだ。

 

 さらに状況は悪化する。

 

「シーマ様! 目標が移動を開始しています!」

 

 エンジンを取り付けられた巨大なコロニーの残骸が、後部から青白く焚かれたスラスターの火を見せ移動を始める。

 

「ああくそ!」

 

 シーマは髪をかきあげた。

 

 すべて後手に回っている。

 

 敵の防衛線は堅牢で、突破するにはまだ時間がかかる。

 

 ――どうする?

 

 移動を始めたコロニーはそう容易く止まらない。宇宙空間は無重力といえど、質量までなくなるわけではない。膨大な質量をもつ物体を動かすには、それと同等以上の推力が必要となる。

 

 艦隊すべてのメガ粒子砲とミサイルを撃ち込んだとしても、どうにかなるかわからない。

 

「ガトー少尉、MSに乗るならあたしのゲルググに乗っていきな」

 

 申し出にガトーは驚く。

 

「ハンガーに連絡。出撃待機しているパイロットはいるかい!?」

 

「はっ! ニードル伍長が補給のために戻って、待機しておりますが」

 

「アイツか」

 

 一瞬ためらう。

 

 ニードルは自身の部下の中でも、とりわけ下品な男だ。だが、実力は高い。

 

「繋ぎな! 急げ!」

 

「はっ!」

 

 艦橋モニターにMSコックピットに座る、男の顔が映った。

 

「へい、シーマ様、なにか御用ですかい?」

 

「うるさい。大佐と呼べ! これからアンタにはお客(ゲスト)をエスコートしてもらうよ」

 

「はぁ? なんですそりゃあ」

 

 醜悪とも見れる顔にはりついた目をギョロリ、とニードルは剥く。別段威圧しているわけではない。生まれつきの顔だ。

 

「デブリ帯に潜んだ狙撃兵が厄介だ。これからガトー少尉があたしのゲルググでそいつを始末に行く。アンタは露払いだよ」

 

「宇宙軍のボンボンの世話ですかい?」

 

「任せたよ。異論はないだろ」

 

「シーマ様の命令なら、やりますよ」

 

 肩をすくめる姿を映して通信は切れた。

 

「大佐、私なら一人でも問題はありませんが」

 

「こっちに問題があるのさ。宇宙軍、ドズルの大将の部下を一人で死なせたとあっちゃ、あたしらの悪名にさらにハクがついちまうからね。それとデトローフ!」

 

「はっ!」

 

「非戦闘員を脱出艇に移しな。これからリリー・マルレーンで海賊戦に移るよ!」

 

 

 

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