目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第142話 Side『宇宙の虎』

 

 海賊戦。

 

 要は突撃だ。

 

 戦術戦略もあったものではない。

 

「本気ですかい?」

 

「コロニーは動き出した。時間がないんだよ」

 

 廃コロニーの行き先はまだわからない。

 

 キシリアが想定したとおり地球かもしれないが、そこにたどり着くまでにはかなりの距離がある。

 

 ここからもっとも近いのはサイド3であり、もしこの質量の物体がコロニー群にぶつかれば生まれたデブリで祖国は壊滅的被害を被るだろう。

 

 保有する核ミサイルを使えば吹き飛ばすことも可能だが、それでも生まれた衝撃波は消せない。

 

 ルウム宙域で連邦が放った核により、サイド5は致命的ともいえる被害を受けたのは記憶に新しいことだ。

 

 他サイドの宙域で迎撃したとしても被害は同じ。

 

 1億を超える人の命が、無慈悲な真空の中へと放り出されることになる。

 

 そして総延長20キロにもなる鉄くずが地球に落ちれば、さらなる環境災害を引き起こすことだろう。

 

 そうなれば、連邦もジオンも、ルールのある戦争などと建前を言ってはいられなくなる。それぞれの資源を根こそぎ奪いさるまで戦う殲滅戦だ。

 

「だから、潰すならここしかないんだよ」

 

「無茶が過ぎますぜ! まだ敵の数は多い!」

 

「時間との勝負さね! 最悪、ぶつけた艦のエンジンを暴走させて爆破する」

 

 デトローフは絶句する。

 

「それは……」

 

「なんだい。またあの日の地獄(・・・・・・)を見たいって言うのかい」

 

 シーマの言葉に艦橋は静まり返った。

 

 この艦に搭乗する乗組員は、海兵隊設立からのメンバーであり、件のダイクン過激派鎮圧作戦において、知らされぬまま、コロニー1つを毒ガスで死滅させた人員だ。

 

「今度は毒ガスなんて比じゃないほどの人が死ぬんだ。ここで尻尾巻いて逃げりゃ、アタシたちは今まで以上に後ろ指指される人間になる」

 

「……わかりました。シーマ様がそう命令されんなら、俺らは付き合いますぜ」

 

 シーマは頷くと、ガトーの方へと改めて向き直った。

 

「そういうことだ少尉。出撃したらこの艦には帰ってくんじゃない。後方のパプアに戻って離脱しろ。それと、機体は貸すだけだ。必ず無傷で私に返せ。いいな?」

 

「はっ! アナベル・ガトー少尉。命令を受諾しました」

 

 こんな時でも堅苦しい表情を消さず敬礼する気障な男に、シーマは苛立ちが止まらない。どこまでも気に食わないやつだ。

 

「あんた、いい男だね(・・・・・)

 

「はっ! ありがとうございます!」

 

 こちらの皮肉にすら生真面目に返してくる相手に、さっさと行けと手を振り退出を促す。

 

「デトローフ味方に信号を送りな! リリー・マルレーンの両翼囲むように配置。左右の盾にして突っ込む!」

 

「アイアイサー!」

 

 クルーは優秀だ。

 

 やると決めれば細かい指示を飛ばさずとも、必要な行動をテキパキと行い進めていく。

 

「シーマ様もノーマルスーツを着てください」

 

「非戦闘員は脱出艇に乗ったか?」

 

「いや、結局一人も降りませんな」

 

「なんだ、バカばかりか」

 

「なにせ艦長が敵に正面から突進するバカですからな」

 

「言うじゃないかデトローフ」

 

 シーマはにやり、と笑うと副官の脇腹に拳を叩き込んだ。

 

「今度の格闘戦訓練でたっぷり揉んでやるよ! そうすりゃ、お前らのたるんだビール腹も少しは引き締まるだろうさ!」

 

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