目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
ガトーがこの作戦に志願したのは、離反した部下をこの手で粛清するためでもあった。
彼らがMSを持って造反する際、寝返りを持ちかけられた。
持ちかけてきたのはルウム戦役以後に配属となったまだ若い士官で、自分以上に生硬な表情の男だった。
生真面目な性格であり、部隊の中では長距離狙撃に長けた技量をもつパイロットだった。
デブリ帯からの狙撃と聞いて、彼のことが思い出された。
『隊長も我々とともに、ジオンの正統を正しませんか』
そう告げた彼は、今のジオンは簒奪者であるザビ家が独裁を敷いており、当初ダイクンが目指した宇宙民の自治独立を始めとした、人類の革新を目指す国家とはおよそ似つかない方向へと向かっているという。
それを正道へと戻すため、廃コロニーを地球へと落とす。
気が狂っているのか! とガトーは唾棄した。
自分たちが生まれ育った大地とも言えるコロニーを、地球へと落とすなど、そんな悪魔じみた所業を受け入れるわけにはいかない。
だが、彼を始めとした面々はそれをする権利が自らにある、と信じて疑わなかった。
『しょせんは
そう告げた部下は、去っていった。
あの時止められなかった自身の不始末にケリをつける。そのためだけにガトーはドズル中将へ頭を下げ、海兵隊による討伐任務に志願したのだ。
「海兵隊はあまり良い噂を聞かんが」
曰く、軍紀を逸した行動言動が多い。
曰く、全員が元犯罪者などで構成された懲罰部隊である。
宇宙軍とは指揮系統が異なっているためか、悪評ばかりが目立つ。
極めつけは、大戦前にムンゾにあるバンチコロニーで起こった反ザビ家運動だ。当時かなり大規模なデモであったが、これを海兵隊は毒ガスを使って鎮圧した。
いや鎮圧などという生易しい言葉ではない。まさに虐殺したのだ。
事前に住民へ他コロニーへの避難勧告が成されていたものの、避難せずに残った住民を保護するわけではなく、諸共に毒殺した。
この事件は公には発表されず、激発性の伝染病によるものであるとされた。
軍の栄光を汚した爪弾き者。
それが、これまで抱いていた海兵隊の面々への印象であった。
だが、実際に会ってみれば彼らは純然な軍人であった。
確かに無頼な面が目立ち、排他的なところがある。だがそれは、これまで行ってきた作戦と、悪評により周りから距離を取られた結果、身についた習性ともとれた。
事実、ガラハウ大佐の下で厳格な規律により統率されている。
そしてパイロットの腕もいい。
デブリの群れを高速で駆け抜ける自分の背後に、ぴったりとついてきている。
それどころか、こちらの一挙手一投足を見逃さず、不審な動きをすれば背中から撃つという様子さえ見えた。
彼は監視役なのだ。
自分がテロリストと接触があったのは事実、そして、長距離での敵の狙撃が成功したことにより、何らかの方法で艦の位置を相手に送っているのではないか、と疑われたのだ。
自分が汚名を被せられる側となって、見えてくるものもある。
艦橋でのやり取りは、ガトーにとって、彼ら海兵隊は信用に値するものだという確信を抱かせるのに十分であった。
彼らは彼らなりの矜持をもち、ジオン軍人として任務にあたっている。
「ならば私も、その行動を持ってあたるのみ」
スロットルペダルを強く踏み込む。
僚機はぴったりと背後を捉えている。並のパイロットではこうはいかない。
大小様々なデブリ、それこそレーダーでは捉えられないほど微細ものでさえ、当たればこちらの損傷は免れないのだ。普通ならば加速をためらう。したとしても、障害物を避けきれずに、自らがデブリとなることだろう。
「宇宙軍の旦那、敵さんの隠れてる場所にあてでもあんのかい?」
近距離通信にノイズ混じりの濁声が届く。後方を追尾する僚機からだ。
確かニードルという名前であったな、と考える。
主戦場を外れたせいか、ミノフスキーの濃度が薄くなっているようだ。
「このデブリ帯はそう広くはない。ましてやMSの巨体を隠せるものは限られている」
「スナイパー相手に虱潰しかよ。とんだ任務だぜ」
上官相手に呆れを隠さない返答。
以前ならば眉をしかめたかもしれない。だが今は気にもならなかった。彼はできない、などと言っていないからだ。
前方、宙を漂う残骸から、青白い光が飛び立つ。
スラスターの光だ。
次の瞬間、ガトーのコックピットにアラートが鳴り響いた。