目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第144話 Side『宇宙の虎』

 

 ミノフスキー粒子下でも、極短距離ならば赤外線レーザーによるロックオンは可能だ。

 

 自身の機体が背後、ニードルの機体からのロックオンを感知してアラートを鳴らす。

 

 考えるよりも先に咄嗟にペダルを踏み込み、機体を横にいなした。

 

 瞬間、さらに前方、コロニーへの電力供給用太陽電池パネルの残骸から放たれた光条が、今まで自身がいた場所を貫いていく。

 

 すでに僚機のロックオンは外れていた。

 

 ――ビームに気づかせるために敢えて向けたのか。

 

 いつの間にかミノフスキー濃度が上がっている。通信不可能と考えての行動だろう。

 

 荒っぽい注意喚起だが、助かったのは事実だ。

 

 敵のザク高機動型が近づいてくる。

 

 狙撃ポイントであった残骸から外れるように迂回しつつ、こちらの側面を叩くつもりのようだが、すでにスナイパーの位置が露呈した以上、その動きは囮の役を担えない。

 

 ニードルが前に出た。

 

 マシンガンを撃ち放ち、進行方向を阻害し動きを限定する。

 

 そこをガトーはビームライフルの一射で沈めた。

 

 よく訓練されている。

 

 教練通りと言えばそれまでだが、実戦でマニュアル通りに動けるということは、それだけ場数を踏んだ証でもある。普段の無頼さとはかけ離れた、洗練された動きだ。

 

 狙撃されないようにランダム機動で残骸に近づく。

 

 鈍く光る太陽光パネルの断片。

 

 見えた。

 

 スキウレに乗ったゲルググ。

 

 肩に302の部隊番号。

 

 ――やはり彼奴か!

 

 別ルートから接近したニードルが、マシンガンの掃射でスキウレを破壊するが、ゲルググはその前に離脱。

 

「私が始末をつける!」

 

 そのためにここに来たのだ。他者に獲らせるわけにはいかない。敢えてオープン回線で発したが、このミノフスキーの海では僚機に伝わることはないかもしれない。

 

 ガトーはライフルを捨て、武装をビームナギナタへと切り替える。

 

 距離をとる相手は、牽制のマシンガンを撃つが、デブリを盾にして防ぐ。

 

 分離したプロペラント・タンクを投げ、それを腕部機関砲で爆発させると、それを目眩ましに一足に距離を詰めた。

 

 慌てた相手はビーム・ナギナタを構えようとする。

 

「未熟!」

 

 敵の右腕を手首から切断、返す刀で両の足を薙ぎ払う。

 

 苦し紛れに伸ばした左腕を――機関砲を撃つ気だったか――さらに切り捨てる。

 

 体当たりとともに頭部を掴み、デブリに機体を叩きつけた。 

 

 まるでガラスが割れ砕けたように太陽電池パネルが宙に舞う。

 

「ここまでだ伍長」

 

「その声……ガトー隊長?」

 

 接触回線で聞こえてくる男の声。

 

「そうだ。貴様を追ってきた。なぜ軍を裏切った!」

 

「私は使命に目覚めたのです! 全宇宙民を覚醒に導くという崇高な使命に!」

 

「何を世迷言を」

 

「聞いてください隊長! 今のジオンは間違っています! このまま戦争が進み勝利すれば、ザビ家の独裁によりこの地球圏は逼塞する。建国の父、ダイクンが掲げた宇宙民の覚醒、ニュータイプによる人類の革新は起き得ない!」

 

「また同じことを……そんなあやふやな事柄のため、コロニーを兵器とするのか! 貴様には人としての良識はないのか!」

 

「言ったはずです。そして決別した。誰かがやらねばならんのです!」

 

 やはり会話が成り立たない。

 

 何が彼を変えた? いや、ここは思考をめぐらす場ではない。

 

「伍長、君を拘束する。貴様が語る真のジオンとやら、後でじっくりと語って貰おう」

 

「……」

 

 コックピットハッチが開く。

 

 出てきた彼の手には、拳銃が握られていた。

 

「無駄な抵抗を――」

 

「我々は必ずや星の屑(・・・)作戦を成し、人類を導く! (ネオ)ジオン万歳!」

 

 叫ぶと銃口を自らの頭部に向け、その引き金を引いた。

 

 

 

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