目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
デラーズ艦隊の旗艦、グワデン『ドーンリュストゥング』。
リリー・マルレーンを自爆させ、コロニー残骸の消滅を確認したシーマたちはこの艦に回収された。
「お初にお目にかかります、エギーユ・デラーズ大佐。今回の救援、感謝にたえません」
眼の前に立つスキンヘッドの男に敬礼をするシーマ。
階級は同じだが、こちらは新任である。立場として下手に出た方が良いと判断した。
「デラーズで構わんよ。こちらも名のある海兵隊とともに戦えて光栄だ、シーマ・ガラハウ大佐」
厳しい顔を崩しはしなかったが、デラーズは友好的に手を差し出し握手を求める。
応対しながらもシーマは自嘲した。
「良い噂ではないでしょう。我らはジオンの海賊とまで呼ばれてますからな」
「口さがない連中はそう言うのだろうな。しかし、貴殿は達成困難な任務のことごとくをこなし、軍の底を支えている存在だ。私にとって貴殿を尊敬こそすれ、軽蔑などするはずもない」
「止めてください。私を含め、全員海賊崩れのようなガサツな連中ですよ」
「ただ品行方正なだけでは歴戦の軍人と言えんだろう。知っておるか? 貴殿の海兵隊は『ジオンの虎』と呼ばれておることを」
「虎? アタシらがですか?」
「そうだ。勇猛さを讃えた呼称だ。悪名も賞賛も表裏一体。貴殿は胸を張っておればよい」
真っ正直な賞賛に、シーマは背筋が痒くなるような面持ちであった。
デラーズは次いで、シーマの背後に立つガトーに目を向けた。
「ガトー大尉であったな。貴官のことはドズル中将より聞き及んでおる」
「はっ。ギレン閣下直属の大佐に名を覚えて頂き望外の光栄であります」
「そうしゃちほこばらんでもよい。賊軍に、元部下がいたそうだな」
「……はい。残念ながら、捕らえることはできず」
「こちらでも捕虜は多数捕らえている。調査はこれからとなるが、もしかすれば中に知った顔がいるかもしれんな」
「デラーズ大佐、ギレン総統は今回の件をどこまで知っておられで?」
シーマはデギンに聞いた。
本作戦は軍内部でもかなり固い箝口令が敷かれたものだ。
「すべてギレン閣下の慧眼だ。本国でも不穏な動きをする連中がおってな。それを監視し、閣下が導き出した結果が奴らの『廃コロニー落とし』というわけだ。まあ、君たち突撃機動軍の動きを監視もしていたがな」
食えないオヤジだ、とシーマは舌を巻く。そして機動軍の防諜のレベルの低さに怒りを覚えた。全てが後手、秘匿情報も抜けているなどとんでもないことだ。戻り次第、今回の件は強く告げねばなるまい、と考えた。
「何にせよ、貴殿の決死の行動でコロニーを兵器として使うなどという、人類史上最悪の蛮行は阻止された。謙遜は美徳だがもっと自身の立場に誇りを持つが良い」
「ありがたくはありますが、過分な評価ですな」
「本心なのだがな。なあ、ガトー大尉、貴官からみて、海兵隊はどうであったかね?」
「はっ。彼らは確かに無頼なところはありますものの、その技量と軍務における気組みは我々宇宙軍も見なうべきところがありました」
真面目くさった顔でそう褒めそやすガトーの様子に、とうとうシーマはいたたまれなくなった。
「止めな。それ以上は嫌味に聞こえるよ」
「私としては本心を述べたつもりです。あの戦場において、シーマ大佐は実に
にやり、と笑うガトーの言葉に、シーマは目を見開く。
なるほど、これは彼なりのアイスブレイク、冗談なのだと理解した。
そして、MSを貸したあの時の意趣返しも兼ねているのだろう。
「くっくく――アンタ、本当にいい男だわ!」
堪えられずに笑ったシーマに続いて、デラーズも笑う。
「いや、いいね。あたしゃアンタを誤解してたよ。本当にいい男だ、宇宙軍が居づらくなったら、いつでも海兵隊に来な」
「ふむ。抜け駆けは感心せんぞ、シーマ大佐。ガトー大尉の腕と人柄はこちらも聞き及んでいる。私の部隊も選択肢としたらどうだ?」
そしてまた三人は笑う。
シーマにとっては久方ぶりの心からの笑顔であった。