目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「そうだ。ヤツラは自分たちを、『新時代の先導者』であると僭称し、我々のような古い既得権益にしがみついた存在を『オールドタイプ』と呼んで蔑み、全人類がニュータイプとして覚醒することを目的としているのだそうだ」
「なんですかそれは」
巷にあふれるカルト集団の教祖が語るような内容に、シーマは目眩がした。
そんな旧世紀からある誰かの垢にまみれた思想に、多数の軍人が感化され、反旗を翻すなど、とんでもない悪夢であった。
「本当に全員ニュータイプということはないんでしょうが……まさか、信じておられで?」
考え込むような素振りを見せるキシリアに、シーマは驚きを隠せない。
「ダイクンの語ったニュータイプ論、そうした人間が本当に居るのかはわからん。だが、エスパーと呼べる人間が実在しているのはこの目で確認しているし、そうした知覚能力に優れた存在を人工的に生み出す研究はすでに形を成している」
シーマはもう一度資料に目を通す。
捕虜の尋問の結果、このけったいな兵器によって突如感応波が個人の頭に飛んできて、ニュータイプとして覚醒したのだと、捕虜たちは口にしている。
彼らは、頭の中に浮かんでくる情報を瞬時に読み取ることができ、そして、その力を使って、戦況を読み取り、敵の位置を把握し、攻撃を回避することができると語っていた。
――頭の狂ったエスパーの集団。そんな連中にアタシの部下はやられたのか。
苛立ちと憎悪が込み上げてくる。
「どのような手段を用いて、ニュータイプ覚醒を行っているのかは結局はわからん。GENERATION-Zeroその言葉を発した連中は、全員死んだよ」
「死んだ?」
「ああ、正確には生物学上死んではいないという状態だが、完全に精神が壊されている。遠隔操作でな、精神を崩壊させられたと見られる」
「そんなことが?」
「捕虜の頭部には特別機械的処置が成された跡はなかった。彼らの言を信じるなら、感応波によって相互に通信、監視を行い、秘密を漏らそうとする人間がいれば、即座にそいつの記憶を抹消できる――そんな兵器があるということだ」
サイコミュによる遠隔催眠装置か? ニュータイプと呼ばれる超能力者たちも、そういった技術により生み出されるということなのか? いや、そもそも、そんなものを造り上げることのできる組織が存在するのか? シーマは疑問を抱く。
もし仮に、その非人道的な兵器の開発に成功していたとすれば……。
ジオンにとって最悪のシナリオが浮かぶ。
中枢部にテロリストの手先が入り込んでいる可能性が出てきたのだ。
「サイコミュの技術は、ジオンではフラナガン機関で研究を行っている。当機関にも相当数のシンパが入り込んでいたようだ。となれば、組織の解体もせねばならん」
キシリアは頭の痛い問題だと、疲れた様子を見せた。
「信用できる人間は少ないし、しかも確実に任務を遂行できるだけの有能さを持つ者となると、ますます少なくなる」
とキシリアが言った。
「今更飴で釣ろうとでも?」
シーマは相手の意図を察し、敢えて挑むように言った。
キシリアは、今後も自分をこの狂信者たちの相手に据えようと考えている様子だった。
「ただの飴で気を引けるほど、貴様が楽な相手なら良かったのだがな。さらに名誉や義理で動くような輩でもあるまい、お前たちは」
「私たち海兵隊は、公国の海賊集団なんて軽蔑されていますからね。放し飼いの虎のようなもの。飼い馴らせないと、その喉笛を噛みちぎるかもしれませんよ?」
「そうか。私が望むのは盲信じゃなく、貴重な能力だけだ。貴様が軍人として価値を示すかぎり、公国も《・・・》お前には餌を与え続けよう」
シーマは笑って言った。
「度量のある上官ってのは、大好きだね」