目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
厄介だなぁ。
画像を見て思った感想を率直に表すと、その一言になる。
ペイルライダー。
これもゲームに登場した機体だ。
連邦が開発したペイルライダーは、ジオンより亡命してきたクルスト博士がもたらしたEXAMシステムを元に開発された、特殊な戦闘システムHADESを搭載している。
HADESは蓄積した戦闘データから敵の行動予測をおこない、操縦介入する半自律型のOSだ。
リミッターの強制解除と、それに伴う暴走といった問題をEXAMから引き継いでおり、作戦遂行時の意思決定システムとしてパイロットを必要とするが、対象の生存性は一切考慮していない。
フルスペックを発揮したその能力は、まさに戦場の死神に相応しい。
原作では10にも満たない子供に耐G強化処置を施し、搭乗させるという、非人道的兵器だ。
この世界でのペイルライダーがどのような経緯を辿っているかわからないけど、類似の機能はあるんじゃなかろうか。
「かわった見た目をしているな」
ゼクス大佐はそう批評する。
ペイルライダー(仮定)は、胴体こそ僕の前世知識にあるような見た目だが、頭部が特殊な見た目だ。
バイザーのようなもので前面部が覆われており、ガンダムやジムのようなツインカメラやゴーグルなどは見当たらない。人の耳にあたる部分には小型のブレードアンテナ。頭頂部にはさらに大型のブレードアンテナを装備してる。
組み立て中か、解体中の画像らしく、上半身しか写っていないために全貌はわからない。
「試作機というのが気になるな」
「ムラサメ研究所にて、私とマリオン少尉は同系の機体と対峙した経験があります。それをふまえて評価するなら、正直なところ、1個小隊程度では容易く平らげられてしまうかと」
「ほう、それほどか」
ニムバス大尉の口調は、暗にこちらの部隊の実力に疑問を持っている様子が含まれていた。それを受けて、ゼクス大佐は不敵に笑って返す。
「本作戦の目的は、マスドライバーの確保となっておりますが、本官はこの新型機の奪取も視野に入れるべきかと愚考します」
「新型を? なぜだ?」
「当該機に組み込まれているであろうシステムの性能が優秀だからです。MSの戦闘力を大幅に引き上げることができる。これを量産すればジオンの勝利は盤石のものとなるでしょう」
「それはどうですかね」
思わず口出してしまった。
ニムバス大尉の鋭い視線がこちらを射抜いてくる。
「たしか、フィンゴ中尉だったな。私とは反対の私見を持っているようだが?」
「EXAMは自律型操縦システムでしょう。ミノフスキー粒子の中ではその安定性に不安が残ります」
戦闘となれば溺れるほどのミノフスキーを散布する戦場では、AIはまともに機能しなくなる。MSに搭載されているものは巨大な防護殻に閉じ込めているからこそ機能しているが、それでも時折不具合が出るほどだ。
故にその都度パイロットが修正してやらねばならない。この科学全盛の時代においてAI技術が発展しなかったのは、この世界にミノフスキー粒子というものが存在していたからだろうと、僕は思っている。
「しかも、フルスペックを発動すれば暴走、パイロットの安全も考慮しないなんて問題あり過ぎます」
「だがそれを差し引いたとしても、あまりあるほどの戦闘力を持つ」
「個の戦闘力が突出したとて大して戦果はあげれませんよ。せいぜい特攻兵器として敵陣に突っ込ませるぐらいしかない。それなら爆弾でも投げ込んだほうがよっぽど有用ではないですかね」
「貴様、上官に対する態度ではないな」
ニムバス大尉の表情が、猛禽のような鋭さを持つ。ものすごい威圧感だ。
「そこまでだふたりとも。今回の作戦は、マスドライバーの奪取が最優先だ。新型機についてはオプションとする。連邦が開発したOSというものも気になるしな」
大佐のとりなしで場が収まったけど、殺されるんじゃないかと思いました。
「なあ、なんでマスドライバーの奪取なんだ? ぶっ壊すんじゃいけねぇのか……いけませんの?」
空気を読まずに発言したのは、僕の隣に座るキリシマ曹長だ。
確かに普通ならば、奪うよりも破壊するほうが簡単そうに思える。けど、今回の目標は地中に埋まっているので、空挺強襲破壊は難しい。
「壊さず手に入れれば、奴らにプレッシャーを与えることができるからね」
壊せばそれまでだが、残っていればその設備をこちらが使うこともできる。
現在連邦が展開してる宙域に、地上からコンテナ機雷を巻くことだってできるわけだ。奪ったほうが戦略的に有利な選択肢が増えるというわけである。
「ふーん」
まどろっこしいですわね。
なんていまいちわかってなさそうな発言をして、キリシマ嬢が肩を竦めた。