目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「ガルマ、私も君に陳情があるのだが」
「ん? なんだ、言ってみろ。善処はしよう」
ゼクスは、オルド・フィンゴに頼まれた要件を伝える。
「我が部隊のザクの修理の件で――」
「ああ、それならしばらく駄目だ」
皆まで言わせずガルマは首を横に振った。
現在本国とグラナダでMSの増産を行っているが、予定されている第2降下部隊と第3降下部隊に配備する分で手一杯であり、予備のパーツを取り寄せる余力がないのだ。
HLVで送るにも、まだ地上が安全な状況とはいえない。軌道がズレてしまえば、よくて物資の消失。最悪、敵に鹵獲されかねない。
「ああ、状況は理解しているとも。だから、先に我らが撃破したMSのパーツを使わせてもらいたいのだ」
「連邦のだと?」
「本国に送るサンプル以外に、余っているのがあるだろう」
ゼクス・マーキス少佐が率いる第一機動小隊が撃墜したMSの数は5体だ。状態の比較的よい機体を第2降下部隊降下後に予定されている資源物資とともにグラナダに送る予定であった。
「使えるのか? 同じパーツを使っていると言っても、完全に同一というわけではないだろう。部品の生産設備もここにはないのだぞ」
「破損した片脚だけを交換すればよいのだから、なんとでもなるそうだ。無理ならば、下半身を61式とくっつけると言っていたな」
ガルマの理解が追いつかない、といった表情にゼクスは、オルドの話を聞いた時に自分もこんな顔をしたのだな、とおかしさを覚えた。
「君のところは随分とユニークな整備士がいるんだな」
「いや、パイロットさ」
「パイロット? やけにMSに詳しいようだが」
「元開発本部勤めであったらしい。ルウム前からMSの開発に関わっていたそうだ。MSの整備士として従軍し、いろいろあってこうなった」
いろいろ、の部分でゼクスはおかしそうに笑みを浮かべる。彼がこうした正直な感情を表に出すのはあまりないことで、ガルマは件の人物に興味を覚えた。
「元開発本部か……ふむ」
「ああ、あと、ジオ・マッドに頼んでザクM型のシーリング材を増産して送って欲しいそうだ」
「M型? ああ、水中用の試作機か。開発部だったのなら知っていて当然だろうがーー」
「そんなものを一体何に使うんだ? 現段階で水中戦をする予定なんかないぞ」
「私も聞いたのだがね。ドムの問題を解決する、だそうだ」
「ドムの――」
そこでガルマは他部隊から上がっていた陳情に思い当たる。先に話た連邦のMSよりも、直近で問題となっているものだ。
「詳しく聞きたい。その者を呼んでもらえないか」
***
「オルド・フィンゴ中尉であります」
「ああ、楽にしたまえ」
と言われてもね。
地球攻撃軍にくっついてきたシゲさんと再会して、旧交を温める間もなく、先の戦闘で破損したキリシマ嬢のザクをどうするか二人で悩んだ。
ザニーの120mm砲を受けた左脚はフレームごと吹き飛んでしまっていて、応急処置をすればどうにかなるというものではなかった。予備のパーツがあれば脚部を交換するだけでなんとかなるのだが、あいにく現在のMSの数は払底に近い。
予備や新品のザクは、次の第2降下作戦を待たねばならないだろう。最悪、第3降下までかかるかもしれない。
さらにもっと困ったことが起きている。
ドムの稼働率が悪いのだ。
陸上戦用として開発されたドムだが、予想されたよりも機動性と運動性が悪い。ゼクス少佐も「機体が重い」と表現していた。他の部隊からも、ドムの不満が上がっている。
原因は明白だった。
ドムの給排気口が石や砂でつまり、本来の性能を引き出せていない。凡そ、2割近く想定された機動力より低減している。中には完全に稼働しなくなるものまで存在した。関節部にも砂は入り込んでおり、それが動きを大きく阻害している。
地球の環境が、コロニー民が思うよりも劣悪だったというわけだ。
ザクにはこうした問題はほとんど起きておらず、当初は首をひねったが、これはザクⅡJ型がもともとF型として宇宙で運用することを想定されていたからだ。気密性が非常に高く、運動性を気にしなければ水中でも短時間なら活動できるほどだ。完全ではないので、その後はオーバーホール行きになってしまうが。
一方、ドムは当初から地上で運用する前提であったため、空冷機能を強化した結果、気密性がザクより低下してしまったのだ。
ドムは地球侵攻の要として開発されたMSだ。ホバーによる高速展開で連邦に先制打撃を与える。これができないとなると、これから予定されている作戦のすべてを1から考え直さないとならない。
「そうか。それで、M型のシーリング材が欲しいと?」
僕の説明を聞いてガルマ大佐は大きくうなずいた。
「中尉が上げてきた陳情は他の部隊からも上がっている。MSの整備、稼働率については私も悩んでいたところだ。M型のシーリング材を使うことで、それが解決するというのだな」
いや、解決はしないよ。