目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第158話 Side『もうひとつの箱』

 

 完全に暴走してるな。

 

 友軍であるはずのジムもどきを屠って、ゆっくりと『死神』は振り返る。

 

 ジムもどき達は、何が起きたのか把握しきれていないのか、呆然と立ち尽くしていた。

 

『OAAAAAAAAAAA!!』

 

 再度、暴走した声を張り上げて『死神』は連邦のMSへと飛びかかる。

 

 右前腕のビームサーベルから光弾が飛ぶ。どうやらビームガンとしても使用可能のようだ。

 

 ジムもどきはなんとか盾でライフルの一撃を凌いだが、盾ごと左腕を吹き飛ばされ、後方に転倒。

 

 そこに『死神』が降り立ち、コックピットへビームサーベルを突き立てた。

 

 ここに至って、残りのジムもどき達はこの蒼い機体が味方ではなく、狂人だと悟ったようだ。

 

 同僚の仇とばかりに、何体かが『死神』へと銃口を向ける。

 

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

『死神』が手近いジムもどきに飛びかかろうとしたとき、マリオン少尉の悲痛な叫びが響き渡った。

 

 何かの拍子に拡声器のスイッチが入ったのか。

 

『死神』はその声に反応して、擱座したままの少尉のゲルググへと飛びかかる。

 

 ニムバス大尉が腕部の機関銃で牽制するが、相手はそれを難なく躱すと、代わりに動けない大尉の機体へと標的を定めた。

 

 やられる、と誰もが思った。

 

 だが、大尉のゲルググと『死神』の間に割って入ったのは、連邦のMS――ガンダムもどきだった。

 

 相手のビームサーベルを同じくビームサーベルで受け止める。

 

「そこのジオン! どっか行ってろ! 騒がれるとクソうるせぇ!」

 

 拡声器から放たれた連邦兵の声は若い、というより子供のようだった。

 

『OAAAAAAAAAAA!』

 

 頭に響き続ける叫び声。

 

『死神』は跳躍後に宙返りを決めると見事に着地、左腕からワイヤーアンカーを撃ち出す。MSの常識を超えた、とんでも挙動だ。

 

 ガンダムもどきを狙ったその一撃は、割り込んだゼクス大佐の大剣に切り払われた。

 

 切断されたワイヤーから、電流が弾ける。

 

 ヒートロッドだった。

 

「ニムバス大尉! 機体を捨ててマリオン少尉を保護しろ!」

 

 高速でビームサーベルを繰り出してくる相手をいなしながら、大佐は指示を出す。

 

「くっ! しかし大佐!」

 

「君が少尉の機体を操縦するんだ。作戦区域から離脱しろ。どのみちその状態では足手まといだ!」

 

「私は! ……了解しました」

 

 プライド傷ついただろうなぁ。でもさすがというべきか、大尉は足の効かない機体を這わせて、転倒したまま今では微動だにしないマリオン少尉のゲルググにたどり着くと、万が一にも暴れないように上から手足を抑え込むようにしてから、自身は機体から飛び降りた。

 

 マリオン少尉のゲルググのコックピットハッチを緊急ボタンで開放すると、素早く中に乗り込む。

 

 その間、ゼクス大佐は先程の連邦兵とタッグで『死神』とやりあっていた。

 

 どうも違和感があるんだよな。

 

 EXAMやHADESといったAIに、戦略、戦術といった思考があるわけではないはずだ。というより、そんな高度なものをAIが組めるはずがない。

 

 事実、目の前の推定HADES機はめちゃくちゃに動いており、その攻撃対象もランダムに思える。

 

 しかし、この戦場に響く叫び声と、マリオン少尉の異変。なんらかのサイコミュシステムを搭載してるんだろうか。

 

「試してみるか」

 

 そう口にして、僕はスナイパーライフルを構えた。

 

 

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