目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第160話 Side『もうひとつの箱』

 

 指定されたチャンネルに、部隊内のオープン回線で繋ぐ。

 

「やあコンニチハ(・・・・・)、連邦さん」

 

「こんにちは、ジオンさん」

 

 通信から聞こえてきたのは女の声。たぶん若い。

 

地球連邦軍技術開発局極東支部(E.F.F.T.D.J)所属の、カスミ・キサラギ支部長よ。施設から通信してる。悪いけどふざけてる時間はないの、本題を言うわ」

 

 早口でやたらハキハキとした口調。仕事できるけど、ゴーイングマイウェイって感じで他者に嫌われるタイプかなー。

 

「貴方達が対峙してる蒼い機体は無人機よ。不完全な(・・・・)ね。貴方達が推察した通り、人の殺意の高さに反応して攻撃を加える」

 

 頭いい人だな。こちらが相手の仕様を見抜いたことを察してる。

 

 それに実務的だ。

 

「対象の優先順位は、殺意が高いもの、AIが脅威度が高いと判断したもの、動くもの、の順よ。それ(・・)は、頭部に収まってるわ」

 

「ふーん。頭を壊せと?」

 

 欠陥品の処分をこちらに押し付けるのはどうかと思うぞ。もちろん、作戦遂行のために破壊する気はまんまんだけど、やり合ってるところ後背を突かれたんじゃたまったもんじゃない。

 

「あれは人類史において、あってはならない物よ。だから、貴方達(ジオン)に破壊してもらいたいの。それと、この通信は記録してないわ」

 

 ジオンの襲撃で壊されたことにしたいのね。

 

「そちらを信用できないな。本来敵同士だ。うちらがあいつとやり合ってる間に、後ろから撃たれたくない」

 

「アレは一度起動したら、作戦区域の動くもの全てを殲滅するまで停まらない仕様らしいわ」

 

 停まらないらしい(・・・・・・・・)

 

 彼女も全容は把握していないのか。

 

「とにかく全員でぶっ倒せばいいってことだろうが。クソ面倒くせぇ」

 

 回線に威勢のいい少年の声が飛び込んでくる。ガンダムもどきに乗ってたパイロットのものだろうか。

 

 彼は《死神》と対峙するゼクス大佐を支援するように機体を動かしている。出会ったばかりの、しかも敵軍兵の動きに合わせるなんて、かなりの腕前だ。

 

「とのことですが、大佐?」

 

「標的を蒼い機体に切り替える。ノイン動けるか?」

 

「はい、なんとか」

 

 んー苦しそうな声だな。こうしている間にも、頭の中に叫喚は響いている。

 

「ノイン、君はニムバス大尉とともに戦線を下がれ。キリシマ曹長! 君もだ」

 

「ああ!? このアタシに下がれってのか!!」

 

「動きが粗すぎる。冷静になれないのなら邪魔だ」

 

「くっそ!」

 

 口は悪くてバカだが、彼女は愚かではない。勢い任せの自分の動きが、大佐たちの行動を阻害していることは理解していたのだろう。

 

 《死神》は殺意の高い相手を攻撃する。

 

 その点では、キリシマ嬢は囮として使えるが、普段よりも動きが悪すぎる彼女では、早々に撃破されてしまうだろうからね。

 

 おとなしく下がろうとするキリシマ嬢の機体に攻撃を仕掛けようとする《死神》を、連邦のジムもどきが抑える。ふむ、本気でこちらに協力してくれるようだ。

 

「中尉、君は正常だな?」

 

「そうですね。問題ないかと」

 

「僥倖だ。連邦軍含めて、オープンチャンネルを開いたままにしてくれ。私らがやつの動きを止めたら、遠慮なく撃て」

 

「了解。問題は、あと1発ぐらいしか撃てない点ですがね」

 

「君ならできるだろう」

 

「努力はしますよ」

 

 ビームスナイパーライフルのエネルギーCAPは、使うたびにかなりの消耗をしてるようだ。出力と射程の低下が著しい。

 

 いくら試製とはいえ、これじゃ現場では使いづらい。改善案を提出しておこう。生きてたら。

 

 

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