目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第162話 Side『もうひとつの箱』

 

 戦闘後、連邦は即座に降伏した。

 

 こちらの後続部隊――主に施設占領のための歩兵だ――が合流したときも、基地内の人間は一切抵抗せずに大人しく指示に従った。

 

 基地内の人員の南極条約に法った生命の保証を条件に、各種設備、特にマスドライバーの譲渡を連邦は受け入れた。

 

 基地内の人員はほとんどが非戦闘員で、まともな軍事訓練を受けていたのはMSパイロットのみというとんでもない有り様。

 

 カスミ・キサラギ女史も、軍属ながら正式な階級は持たず、中尉相当の待遇扱いだった。

 

 いくら何でも扱いが雑すぎ。

 

 ここルナ2の補給線のひとつじゃないの? けっこう大事な施設だと思うんだが、そうでもないの?

 

 率直に疑問をぶつけたら、女史いわく――「昔から連邦の日本(・・)の扱いはこんなものよ」とのことだった。

 

 ジオンが行った隕石落としで起きた津波で、太平洋側の平野部は壊滅的被害を受けたらしいが、政府は難民の支援すら行わなかったらしい。

 

 連邦としては、ルナ2に送る食料品や日用品を生産、輸送できる場所が無事なら、他はどうでも良いと考えているようだ。

 

 ともかく、捕虜となった人々は、北米ジオンの人道的収容施設へと送られることになる。

 

 あと、この基地の地下に、兵器の自動組み上げを行う設備が、2ライン設けられていた。

 

 ここで先の戦闘で見たジムもどきたちを製造していたらしい。

 

 尋問でわかったことだが、あれらは連邦のMS開発のテストモデルだそうだ。

 

 連邦は生産組み上げ設備のある施設をいくつか見繕って、試作機を作らせ、それらのデータを集約し量産に耐えうるMSを開発しようとしていたようだ。

 

 驚いたのは、これらの運用を200人足らずの人員で賄っていたという事実。

 

 ジオンでも、MS1機の整備には20から30の人手が取られる。それも専門の知識を有した人間、と注意書きを添えてだ。製造と組み立てとなればさらに倍加する。

 

 が、連邦のこの施設は、製造だけでなく同じ人数で5機まで整備ができる。

 

 ジオンのCAD/CAMより優れた機械だ。

 

 とはいえ、設備自体は大きくて、ジオンのものとは異なり安易に移設することは不可能。敷設する場所もそれ専用に空間を確保しないとならない。

 

 それを差し引いてもこの製造力は驚異的だな。今は資源不足で想定されるほどの稼働率を出していないようだが、その点が解消されれば数でこちらを圧倒するのは容易だろう。

 

 マスドライバーもそうだが、高性能な製造施設がまるまる手に入ったのは僥倖だ。

 

 さて、撃破した『死神(ペイルライダー)』だが、この施設の責任者たるキサラギ局長によると、ムラサメ研究所から持ち込まれた機体であり、やはり無人機だったようだ。

 

 問題は、その戦闘システムの根幹を成す『A.N.U.B.I.S(アヌビス)』。

 

 Anti(排斥).Newtype(ニュータイプ).Umpire(裁定).Buster(破壊する).Ideal(理想の).Systemの頭字語(アクロニム)で、意味合いとしては、対ニュータイプ戦用システムといった感じかな。

 

 原作の『H.A.D.E.S』や『E.X.A.M』と同じアンチ・ニュータイプ兵器だが、問題なのはハードウェアに人間の頭脳を使っていることだ。

 

 実物と研究資料は、開発責任者が自殺するとともに破棄してしまったので確証となるものはないが、キサラギ女史が開発者へ事前に詰問した際の解答によると、自我の曖昧な子供の脳(・・・・)を使っているそうだ。

 

 培養槽に入れられ固定された頭脳をコンピューターと直結させ、子供特有の悪意への感応力を増幅して利用する。

 

 機体の動きはすべてコンピューターで管理し、攻撃への反応は生体部品を使うというわけだ。

 

 敵機への反応、駆動系の補助。

 

 仕組みとしては、原作のバイオセンサーやバイコンピューターに近い。

 

 欠点は、一度起動してしまったら、停止信号すら無視して、壊れるかオーバーヒートするまで見境なく攻撃すること。

 

「無人機としてはとんでもない欠陥品よ」

 

 と吐き捨てたのはキサラギ女史。

 

 この人色々聞いていったら、連邦MSの教育型コンピューターAIを作った人だった。

 

 何でそんな重要人物がこんな僻地に居るの? と聞いたら、一言「左遷」と返ってきた。

 

 基礎プログラムを確立したことで用済みとなり、研究メンバー共々ジャブローからこの場所へ移動させられたようだ。

 

 自分の研究成果にこだわりがあるタイプで、妥協することがなく、そのせいで上部との軋轢があったらしい。

 

 ただここではある程度自由に開発研究が行えていたらしく、大きな不満はなかったようだ。

 

 ムラサメ研究所から来た、あの蒼い欠陥品の暴走がなければ、私の子たち(・・・・・)はもっとできた、なんてのたまう始末。

 

 なんでも、ガンダムもどきとジムもどきに搭載されていたAIは次世代機搭載予定の試作品で、完成すればミノフスキー粒子下でも相互データリンクを可能にし、戦場戦局の情報を集積して、パイロットに的確な戦術を提言することが可能らしい。

 

 Z.E.R.Oシステムですか?

 

 さらにガンダムもどきの方には自己判断し、機体の自律操縦を可能とする対話型疑似人格AIが組み込まれていた――ペイルライダーと一緒に頭吹き飛ばしちゃったけど――らしい。

 

 A.L.I.C.Eシステムか!?

 

 戦闘中の各機の規律の取れたMSの動きは、このシステムによって確立されていたようだ。

 

 とんでもねえ天才だな、と思い、システムの仕様書を接収して覗いたら、そこに驚愕する一文字を発見した。

 

『∀』

 

 あ。こりゃやばいや。

 

 

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