目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第164話 Side『連邦、極東にて』

 

 カスミ・キサラギ。

 

 キサラギ重工という、旧世紀――日本においては大正時代以前から続くといわれる――企業の会長の孫娘として生まれる。

 

 彼女が生まれた時、すでに会社はかつての繁栄を失い、ヤシマ重工傘下の下請け零細企業と化していた。

 

 太古の昔に海軍の兵器を施工製造していた関係から、この時代でも連邦海軍の軍需品の一部を製造していた。

 

 彼女は感覚鈍麻の先天性疾患を持っていた。

 

 同時に、自身でも異常と思えるほどの好奇心と探究心を持ち得ていた。

 

 自身が感覚、とりわけ痛覚というものを感じることのない人間だと幼くして理解した彼女は、それを他者に悟られないよう細心の注意を払って隠し通した。

 

 大人になるまでの間、野生の小動物を捕まえ、生きたまま解剖を行うなど、時に他者から見れば、猟奇的な手段でもってその知的探究心を満たしてきた彼女は、自身と他人の感情を数値で表し、コントロールするという思考に行き着く。

 

 キサラギの血を受け継ぐ人間は、得てして、そうした特異性を持っていた。

 

 彼女は自身の発想にのめり込み、大学時代は『次世代型コンピューターのAI』研究に力を入れる。

 

 頭角を表した彼女は、その優秀さから連邦宇宙軍によってジャブローに招聘され、そこで『GM計画』――開戦前より亡命したミノフスキー博士によるMSの情報を手に入れた連邦技術開発部は、MBT(後のガンタンク)、RXM-1(後のガンキャノン)に替わる汎用的な兵器の開発として、『General Mobile計画』を草案していた。(これが後のV作戦の原型となる)――に必要な高性能コンピューターの開発に携わる。

 

 この『GM計画』は当初の予定からは、かなり紆余曲折することになる。

 

 コンピューターの開発は難航した。

 

 高性能なAIは創れる。しかし高度な判断を行うAIは、ミノフスキー粒子の影響をより強く受ける。これまで培った学習能力なども、ミノフスキーの海に浸かれば、一瞬で白紙に戻ってしまうのだ。

 

 カスミを含む技術者たちは、これを克服するためさまざまなアプローチをかけていく。

 

『GM計画』の最終目標は、人の操縦を必要としない完全自律型の兵器を開発することであったが、ミノフスキー粒子という邪魔者によって遅々として進まない。

 

 ミノフスキーの影響を完全に遮断するには、コンピューターを大掛かりな防護設備の中にしまわなければならず、それでは司令部が望む機動兵器に搭載することは叶わない。

 

 とはいえ、研究のための研究をさせている余裕はないと判断した上層部は、計画を変更し、開発途中であったコンピューターに、人物の思考をトレースさせる実験をはじめる。

 

 その対象として選ばれたのがレビル将軍であり、対比者としてジオンのギレン・ザビが選ばれた。

 

 この2つのAIをもって情勢をシミュレーションし、なんとか戦争を回避できないか、と連邦政府は考えていた。

 

 連邦政府としては、率先して宇宙にて戦争をしたいと考えてはいなかったのだ。

 

 もしやるとなれば他サイドへの見せしめとして、徹底的にジオンを潰すつもりではあったが、地球で扱う食料や重要な工業製品まで、生産製造の大多数は宇宙で行っている。

 

 下手に騒ぎを大きくし、それらの米蔵(・・)に火がつけば

 自分たちの宮殿(・・)が傾きかねない。

 

 財界も含めた知見のある人間はそう考えていた。

 

 連邦政府の権威のため、サイド側におもねるような姿勢は見せられない。あくまでも、飼い主として紐を握っているのはこちらだ、ということを駄犬共(スペーシアン)に理解させるため、最小限の火で、彼らの独立という反抗的な思想を焼き尽くさねばならなかった。

 

 そうして新たにスタートした、戦争シミュレーターとしての『GM計画』は、予期せぬ方向へと転がることになる。

 

 

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