目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第165話 Side『連邦、極東にて』

 

 カスミが担当したAIは『ZG(ギレン)』であった。

 

 彼女はこれまでの人生で培った、人間の感情・思考を数値としてトレースするという才を遺憾なく発揮。

 

 後に連邦性MSの根幹を成す高性能コンピューターである、教育型コンピューター《INC》(ナビゲーション・コントロール)システムの開発に成功したのだ。

 

 これまでの電子回路ではなく、新式の光結合回路を用いており、高濃度のミノフスキー粒子の中でもその影響を最小限に抑えることが可能なシステムである。

 

 そしてこれを用いて、対話型AIである『ZG』を、まさにギレン・ザビその人と呼べるまで造り込んだ。

 

 満を持して、連邦政府はとある質問を投げる。

 

「国力30倍の連邦と戦争するにあたり、ジオンはどのような戦略を取るか」

 

 その答えは衝撃的なものであった。

 

 コロニー落とし。

 

 電撃的侵攻で奪取、もしくは自国民を疎開させて改造したコロニーを、連邦軍本拠地であるジャブローに落とす。

 

 超巨大質量弾と化したそれは、ジャブローの分厚い岩盤と対核隔壁をも容易に吹き飛ばすだけでは止まらず、大規模な地殻変動を起こし、巻き上げた粉塵で上空の大気を覆って、地球に核の冬を呼ぶ。

 

 これがなされれば、20億人という人間が死ぬと試算された。

 

 結果を受け、大多数の人間はAIの不出来を嘲笑った。

 

 人類史最大の愚行とも呼ぶべき行為を、いくらジオンでも行うことはないだろうという楽観論であった。

 

 地球を死の星と変えれば、人間にとって必要な空気と水を得る手段を失ってしまう。自らの首を絞めるような真似をするばずがない。

 

 試算された被害規模の余りの大きさに、逆に思考が麻痺してしまったのだ。

 

 開発者であるカスミは、この楽観主義に真っ向から反論した。

 

 入力されたデータは完璧であると。

 

 彼女が組んだシステムは確かに最高のものであったが、惜しむらくは、大元となるべき人物(ギレン)の情報が偏っていたことだろう。

 

 別チームが造った『FR(レビル)』の方は本人が陣営に存在しているため、順調な更新が成されていたこともあり、『ZG』は失敗作の烙印を押される。

 

 結果、カスミの研究チームは解散。『ZG』の廃棄が決定した。

 

 カスミはジャブローを追い出され、極東地区――つまりは自身の故郷でもある土地の北方、地球連邦軍技術開発局極東支部――略称E.F.F.T.D.Jに左遷される形で異動となる。

 

 当基地はもともと、ルナ2要塞建設にあたって敷設された資材搬送用の倉庫のようなもので、地下に埋設した――当時の連邦に対する分離主義者たちのテロを警戒したため、地下に設えた――マスドライバーを使って建設資材を送り出すために造られたものである。

 

 来たるジオンとの戦争に備え、製造設備の大更新が行われることになった。

 

 大規模兵器工廠の敷設が成される。

 

 すべては地球近海宙域、特にルナツーの補給体制を整える目的であったが、同時に極東支部には、新型機動兵器の極秘開発が命じられた。

 

 アナハイム経由で、ジオマッドから秘密裏に入手したMS-05(ザクⅠ)を研究し、これを凌ぐ兵器を開発する。

 

 同時にこれは、『GM計画』の本来の内容に戻ったものでもあった。

 

 現着したカスミは、工廠建造時に、さらなる地下空洞に謎の設備が存在することを発見する。

 

 それが件の『もうひとつの箱』であり、旧世紀の政府が発見しつつも、連邦への報告をせずひた隠しにしたものであった。

 

 たとえ連邦がこの『箱』の存在を知ったとしても、特定の生体因子を持たない者では開くことも、情報を引き出すこともできない、無用のガラクタとして放置しただろう。

 

 しかしそのガラクタこそが、彼女への天啓であった。

 

『箱』の起動に成功し、黒歴史として保管されていた技術――彼女が引き出せたのはごく一部であり、この世界がガンダム世界のシミュレーターであるという事実は得られなかった――を手に入れたカスミは、自身の思い描くパーフェクトAI『ファンタズマ』を完成させるべく、研究と開発に邁進することを決意した。

 

 程なく、連邦とジオンの間にて戦争が勃発することになる。

 

 

 

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