目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第17話 Side『オルド・フィンゴ』

 

「はい。いいえ大佐。それだけでは根本的解決には至りません」

 

 水中型ザクは軍の要求性能を満たさなかったため、生産中止された機体だ。確か試験用として5、6体程度の生産に留まったはず。生産ラインも存在しない。

 

 ただ、かの機体に使われたシーリング材は優秀で、ザクにほぼ完璧な防水、気密性能を与えることができた。これを地上用に転化すれば高い防塵機能をMSに施せる。

 

「シーリング材は安価ですから、MSを1から造るより早く増産が可能でしょう。ただこれを施してもドムの性能を要求スペック通りに戻すには足りません」

 

 空冷性能を低下させちゃうからね。ドムの発熱量はザクより高い。ある程度は装甲に逃がすことで賄えているが、それでも作戦稼働時間に影響が出てしまう。

 

「それにこれでもドムのホバー機能は復活できません」

 

 フィルターが問題だからね。

 

「それでは意味がないではないか」

 

 ガルマ坊やは苛立たしげに髪を指でくるくるしている。その仕草、子供くさくてバカっぽいから止めたほうがいいと思うけどな。

 

「シーリングが上手く行けば、関節部のメンテにかかる時間を短縮し、ホバー機能の整備に使う時間がとれます。その間に、大佐は本国に抜本的解決策を、具体的には設計の見直し要求をしていただきたいのです」

 

 M型のシーリング材は消耗品だ。出撃のたびに交換していては整備の能率は上がらない。急場をしのぐのには使えるが、今後連邦が繰り出してくる局地型MSに対応するにはあまりにも手が足りない。

 

 そう説明すると、ガルマ大佐はますます唸った。

 

「だが設計変更となると大分コストがかかるのではないか?」

 

「そうでもありません。先日、オデッサを奪取したと聞きましたが?」

 

「ああ、マ・クベ大佐がな」

 

 ORIGINみたいに中将ではないのか。

 

「オデッサには鉱山があります。これにより開戦前と違って採掘資源を我らは得られるようになったわけです。ですが、人的資源は未だに絶望的だ。整備もMSパイロットも、それらを束ねる指揮官すら払底している現状、現場に負担を強い続ければ、早晩戦線は崩壊することになりましょう」

 

 ガルマ大佐の眉間のシワがますます深くなり、顔に朱が指したので、怒鳴られるのかな、と身構えたが、それより早くゼクス少佐が口火を切った。

 

「中尉、君は作戦本部がたてた計画に異を唱えると?」

 

「不敬は承知ですよ。ですが、このまま突き進めばジオンは一年も保たない」

 

 一年戦争って呼ばれるぐらいだからね。原作でジオンが負けたのは、トップがそれぞれの派閥で足の引っ張り合いをしていたのもあるが、現場レベルで地上という環境を甘く見ていたせいでもある。

 

 刺すように照りつける太陽、うだる暑さや、凍える寒さ。咽るほどのホコリや湿気が立ち込めると思えば、カラカラに乾いてしまう空気。へばりつく泥に熱砂。完全に空調を制御されたコロニーで育った人間が、想像はできても実感することのできなかった環境がここにある。

 

 これまで経験することのなかった過酷な環境で、人が万全の状態を維持できるとは思わない。事実、早くも体調を崩して医務室に駆け込む兵士は増えているのだ。

 

 未だに苛立たたしそうに髪をいじっている坊主を、威圧するように睨んでやる。

 

「私たち一兵卒は、上が死ねというのならば死にますよ。その覚悟を持って軍人になりましたから。でも、それが価値のある死ならば、ですがね。我らを死なせるならば、効率よく、納得の行く死を与えてもらいたい」

 

 僕の言葉に、ガルマ大佐は鼻白んだようで指を止めた。

 

「中尉……君はそこまで考えているのか?」

 

「ここまで来たのですから、格好のひとつはつけねば駄目でしょう。我々士官はそのために、国が高い費用を払って育てたのですから」

 

「ハッハッハ! 確かにそうだな」

 

 僕の物言いが気に入ったのか、ゼクス少佐は声を上げて笑う。割と感情豊かなんだよな、この人。

 

 笑うのをやめると、彼は大佐に向き直った。

 

「ガルマ、まだ時間は許されているか? この際だ、見識の広い中尉に積もっている問題を相談してみてはどうだろう?」

 

 え? 何て?

 

「時間は、あるのだが。うん、しかし」

 

 MSなどの技術的なことはわかるけど、他のことなんてわからんよ! と叫びたかったけど、先に格好つけちゃったから言えなくて困った。

 

 あーやっぱり格好なんてつけるもんじゃないな!

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