目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第169話 Side『連邦、極東にて』

 

 その日、技術開発局極東支部には不穏な空気が張り詰めていた。

 

 中国地方にて、当支部と同じくMSの開発研究と人材育成を手掛けていたムラサメ研究所がジオンの特殊部隊による急襲を受けて壊滅。

 

 一部の研究資料と開発されていた兵装を持った敗残兵が逃げてきたのだった

 

「で、ルナツーへの資源受け渡し先であるここへ逃げてきたと……」

 

 カスミは冷淡な目で目の前の男を睨んだ。

 

 ジャド・アーティフ。

 

 白人種(アルメノイド)らしい鉤鼻をした初老の男だ。

 

 戦前から人工知能研究において有名な人物であり、軍での階級は技術佐官で、中佐相当となる。カスミもその論文には目を通しており、自身の作である『AM』にもその理論は使われている。

 

 彼は戦地から逃亡してきたというのに、高級なスーツに身を包み、二メートル近いその体躯はおよそ研究者というよりも、マフィアの用心棒のように見えた。

 

「さらにうちの『AI』のデータも寄越せ、と」

 

「そうです。カスミ博士、貴女が造ったシステムも、この私が有効に活用してあげますから、どうぞ感謝してください」

 

 ねっとりとした癪に障る声音でジャドは笑う。

 

「聞き及んでますよ。ジャブローで開発した貴女の教育型コンピューターは優秀だった。新兵器たるMSに搭載するのも頷ける。だが、現状において貴女のシステムはもう旧い」

 

「私の()が旧い?」

 

 これまで能面のように表情を消していたカスミの顔に、はじめて感情らしい動きが生まれる。それを見てとったジャドは、さらに嘲りの笑みを深くした。

 

「ええ。貴女が開発した教育型コンピューター《INC》(ナビゲーション・コントロール)はその容積に対して処理できるデータ量があまりに拙い。機動兵器(モビルスーツ)に組み込むにはあまりに場所を食いすぎるのが欠点だ」

 

 指摘の通り、カスミが開発したコンピューターは、ミノフスキーの影響を抑えるために、電子回路ではなく光結合回路を選択している。

 

 このシステムで兵器の完全自律を行わせようとすると、機材が大きすぎて現在のMSの主流サイズである18mにはとても収まらないものだ。

 

 そもそも汎用機動兵器の完全自律は、非常に難しい。

 

 敵の行動全てに随時対応し、さらには味方とも連携をとりつつ適確な作戦目標を達せねばならない。

 

 刻一刻と変わる戦況に順応し、複雑な判断と行動をAIに処理させるのは、現行の技術では不可能である。

 

 AIはあらかじめプログラムされた行動パターンから逸脱しないよう組まれているが、それでは状況への対処能力が著しく落ちる。

 

 故に、パイロットとしての人間が必要であった。

 

「ですが私が開発した『A.N.U.B.I.S(アヌビス)』は違う。最小限のスペースで、最高のスペックを発揮できるのです。今後はこの『A.N.U.B.I.S』が連邦機の主流となっていくことでしょう。人が人と直接争う野蛮な時代は終わりを迎えます」

 

「完全自律に成功したと?」

 

「そうです」

 

 ジャドはニンマリと笑った。

 

 彼は元々GM計画において、派生した『FR(レビル)』チームの総責任者であった。

 

 当時、カスミがもたらした光結合回路に彼は否定的な立場だった。

 

 一方的な意趣返しといったところなのだろう、とカスミは判断する。

 

「貴女の研究成果はこの私が有効に扱いましょう。パイロットが集めたイグザンプルデータはまだ貴重ですからね。しつけの悪い駄犬どもとはいえ、微量ながら私の研究に役立つのです。感謝なさい」

 

 勝ち誇った笑みをたたえる男に、カスミは特段の興味も示さなかった。

 

 完全自律の機動兵器。これはカスミが『箱』から得た黒歴史を紐解いてさえも得られなかった知識であり、だからこそカスミは生涯の研究目標として全てを注ぐに値する課題であった。

 

 それをこの才覚のない男が、この短期間で成したとは考え難い。

 

 なにかしらの裏があるはずだ。

 

 





 30MMのフォーマットで、ACのプラモ出るそうで。楽しみ。
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