目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

184 / 260
第171話 Side『連邦、極東にて』

 

 戦いは未明より始まった。

 

 先行で警戒に出たジャドの護衛部隊MSは、先制攻撃であるメガ粒子砲によって爆散。よりによって、もっとも多く地雷を敷き詰めた森林部からの狙撃であった。

 

 さらに本隊が、輸送用の戦闘機に乗って現着する。これによって、基地周辺に撒いていた地雷原は完全に無効化された。前日に巻かれた高濃度のミノフスキー粒子によって、こちらの監視網もズタズタにされている。

 

 戦闘機から飛び降りたジオンのMS隊は、白いザクを先頭に、青い新型(ゲルググ)や、新型ドムで構成されていた。

 

「こいつはエースじゃねぇか!」

 

 ジム1/8のコックピットでシロウは悪態をついた。

 

 対峙した白いザクは、AM(エミ)が記憶しているザクのデータとはまったく異なり、驚異的な反応と運動性でこちらに肉薄してくる。

 

「クソったれが!」

 

 機体が良いというだけではない。搭乗するパイロットの腕もかなりのものだ。

 

 こちらのビームライフルの牽制に怯む様子すら見せずに格闘戦を仕掛けてくる。

 

「ジオンのパイロットはこんだけやりやがるのかよ!」

 

 巨大なソードを携えた、近接特化型の強襲機。

 

 重量のある獲物で機動力が物を言う格闘戦を仕掛けるというだけで、気が狂ってるとしか言いようがないが、それでも相手はまるでに苦にした様子もない。

 

 ボルクやミシガン曹長以上の腕だ。認めたくないが、自身よりはるかに格上。

 

『警戒。音紋、運動性能、全て既存のデータと一致しません』

 

「ザクじゃねぇってんだろ? んなことわかってんだよポンコツ!」

 

 ショットガンの一撃で、ルナチタニウムでできていたはずのシールドが粉砕される。AMが咄嗟にシールドをパージしたことで、被る衝撃は半減したが、それでもシロウの口の中に血の味が広がった。唇を噛んでしまったのだ。

 

『警告。オートバランサー(ACS)に過負荷が残留しています』

 

 激しい挙動を繰り返すため、機体が姿勢制御するための処理が追いつかない。

 

AM(エミ)! 手動に切り替えろ! リミッターも切れ!」

 

『警告。現段階において適切な判断と思えません。パイロットの消耗が激しすぎます』

 

 シロウたち部隊の作戦は、全滅しない程度に損耗を抑えた防戦を繰り返す、というものだった。

 

 適当なところでジャド・アーティフと試験機を差し出して降伏する。

 

 この防戦は、戦闘命令放棄と連邦本部に見なされないようにするためのカモフラージュでしかなかった。

 

 カスミが密かに立てた作戦。

 

 よって、決死の覚悟で勝ちにいく必要はないのだ。

 

「やられたらそれまでだろうが!」

 

『消極的賛成。ACSを解除。マニュアルに移行』

 

 ザクの伸ばしてきたヒートロッドを直感で避ける。だが、その攻撃を囮に使った相手は、一気に彼我の距離を詰め、巨大なヒートソードを振りかぶった。

 

 そこにビームライフルをぶち込む。

 

 相討ち覚悟の戦闘。それがシロウの考えであった。

 

 だが、それは突如2機の間に撃ち込まれた光条(ビーム)によって遮られる。

 

「なんだ? この、耳鳴り!?」

 

 シロウの脳裏、ヤスリで削られるような不快な頭痛と、電子機器のノイズのような音が響く。

 

 モニターに映ったのは、青白い、幽鬼のようなMSだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告