目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第172話 Side『連邦、極東にて』

 

ペイルライダー(死神)』の登場で、戦局は混乱に陥った。

 

 完全自律型MSという触れ込みであったが、それは暴走していた。

 

 まずジム1/8に飛びかかったと思うと、次はジオンのMSへ。そして、擱座したジオン兵にとどめを刺そうとした友軍を、あろうことか後ろから突き刺したのだ。

 

 背後からコックピットごと貫かれたのは、GM4。

 

 ボルクだ。

 

「テメェぇぇ!!」

 

 シロウの脳裏が真っ赤に染まる。

 

 ボルクは短い間ではあったが、シロウの面倒をよく見ており、モーガンのイビリとも取られかねない訓練にも付き合うなど、まるで兄貴分のような付き合いをしていた。

 

『危険! 敵機に背を向けては――』

 

 AMの声は聞こえなかった。先程までのノイズも頭の中から吹き飛んだ。

 

 対峙していたザクを無視して、《死神》に向かって跳躍する。

 

「くたばれ! 人形ヤロウ!」

 

 斬り込んだビームサーベルは、相手のビームサーベルで受け止められる。

 

「あああああああ!! 来ないで! イヤアアアア!!」

 

 拡声器を通して、ジオン兵の――少女の声だ――叫びが響き渡る。

 

 ――戦場に子供だと!?

 

 自身の年齢を棚に上げてシロウは違和感を覚えた。一瞬、青い髪の少女が見えた気がする。

 

「そこのジオン! どっか行ってろ! 騒がれるとクソうるせぇ!」

 

 叫んで押し返す。

 

 《死神》は怯まず、左腕のアンカーを射出してきた。それが撃ち落とされる。

 

「私の部下を助けてくれたことを、感謝しよう」

 

 ザクのパイロットだった。

 

 シロウは、「気障なやつだ」と不快に感じた。

 

 ザクのパイロットが部隊のリーダーなのだろう。部下に後退を命じ、自らは『死神』へと向かう。

 

 アクロバティックな動きでザクの猛撃を躱す《死神》。

 

「おいAM(エミ)! あの試験機は完全自律型だったな? 不良品か?」

 

『不明。当該機体のデータは共有されていません』

 

「使えねぇやつだな! クソッ! さっきから頭の中でノイズ(・・・)が響きやがる」

 

 《死神》が現れてから、シロウの頭の中では言葉で表現しがたい音が響いていた。ボルクの件で一瞬吹き飛んだが、またそれは鳴り始めている。

 

 それは騒音と呼べるほどの強さで、目眩までしていた。

 

「おい役立たず! お前、機体制御実はできんだろ」

 

『……』

 

「わかってんだよ。さっきから微妙に俺の動きを補正してんだろうが」

 

『肯定。先日のバージョンアップにより、一部機体制御の機能が追加されました』

 

「はっ! よく言うぜ。どうせ最初からだろうが」

 

 いくらあのカスミでも、僅かな期間でコンピューターと連動して機体の制御システムを追加するなどできるはずがない。

 

 事実、1/8は当初から自立可動型MSとして開発されていたのだ。

 

 当初はシロウの動きを覚えるだけに努め、その機能を使っていなかっただけだ。

 

 だがここで相対したジオンの白いザクは相当の手練れであり、まだ粗さの残るシロウの腕では荷が重いと判断したAMが独自の判断で機体の制御を補助していた。

 

「どの程度までできる?」

 

『回答。完全な自律制御はまだ不可能です。指定された戦術に沿った補助程度ならば可能』

 

「なら、なんとかしてヤツの背後を取る。あの白いやつとも合わせろ」

 

『了解』

 

 頭に響く音が、シロウの体力を削ぎ取っていく。

 

 モーガンとボルクが懸念し、指摘していた若輩故の体力の無さが浮き出てしまった形だ。

 

 そう、ボルクだ。

 

 短い付き合いだったが、彼は自分のような跳ねっ返りを嫌厭するでなく付き合ってくれた人物だ。

 

 仇討ちなどらしくもない。だが、この怒りと衝動だけが、頭の響く雑音(ノイズ)を遠ざけてくれる。

 

「狙いは()だ」

 

 そう、この雑音(ノイズ)はあのクソッタレなMSの頭から響いてくる。

 

 ――そこを潰してやる。どんな手を使っても。

 

 そして彼は、それを成し遂げるのだった。

 






 とりあえず極東は終わりで、ニューヤークに視点を戻したい。


 そろそろ終幕に向けて詰めていかないと。
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