目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第180話 Side『降り注ぐ嵐』

 

 トラヴィス・カークランド。

 

 この御仁は、ゲーム「機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク」に登場した人物だ。

 

 地球連邦軍第20機械化混成部隊「スレイブ・レイス」の部隊長。表向きは連邦に数多ある『試験運用部隊(モルモット)』と同じだが、裏の顔は、司令官グレイヴの私兵としてレビル派にとって邪魔な存在を抹殺する、私兵だったりする。

 

 その性質上、実働部隊員の構成は犯罪歴のある者たちばかりで、罪状を取り消す代わりに、非合法な任務を遂行することとなる。

 

 僕がこのボイスがやたらとイケオジな人物と出会ったのは、軍学校に入る前だ。

 

 前世の記憶を思い出し、混乱しながらもいかにしてこの時代を生き抜くか考えていた頃、いつもパンを買っている店主の旦那が彼であることに気がついた。

 

 彼は元々地球出身で、連邦宇宙軍のサイド派遣兵として勤めており、原作ではジオンと連邦との間で戦争が起きた際に、奥さんと息子の安否を確認しようと奔走していたところを、スパイ容疑で捕まり『スレイブ・レイス』へ入れられた。

 

 それを思い出したので、息子さんのヴィンセント君と仲良くしつつ、おじさんとも接触。

 

 こういうとき、ジオン貴族の肩書はすごく便利だったりする。貴族名簿に席を置いてるだけの小さい家格でも、一般庶民からすればお近づきになっておけば、なにかしらの優遇処置を得られるかも、といった打算が働いて、こちらが多少ずけずけと踏み込んで行っても邪険には扱われない。

 

 自分が士官学校に入る頃に、トラヴィスのおじさんは地球近海での勤務が決まったので、「連邦とジオンの間でなにかあったら、真っ先に連絡してくれ」と伝えておいた。

 

 そうして、僕は彼の家族の安否を教え、トラヴィスおじさんは僕に連邦の動きを教えてくれていたわけだ。

 

 開戦後、彼はジオンに家族がいるという弱みをつかれてスパイ容疑で『スレイブ・レイス』の指揮官にされてしまったが、僕との関係は切れていなかった。隙を見ては連絡をしてくれてたわけだ。

 

「で、今回アプサラスの秘密基地に連邦の部隊が奇襲をかけるという情報を貰ったんですよ」

 

 大佐に説明しながら、僕はおじさんの対面に座る。彼の情報によって連邦が事前に戦力を整える前に先手をうてた。

 

 僥倖だね。

 

 アプサラスはジャブロー攻略の要になる超兵器だ。ここで失うわけにはいかない。

 

 おじさんが僕に鋭い視線を投げてきた。

 

「聞きたいんだが、息子は無事かい?」

 

 家族愛の強い人だ。優秀だが、そこは明確な弱点と言える。

 

「もちろんだよ。彼は宇宙軍に所属することになったようでね、前ほど頻繁に連絡は取れてないけど」

 

 宇宙軍は先のルウムでベテラン士官を軒並み失ったため、実は戦力と練度がガタ落ちしてる。

 

 そこで、士官学校で成績の良かった息子さん――ヴィンセント君は教習課程をすっとばして指揮官候補生の尉官として宇宙軍へと配属となった。

 

「ってついこの前の通信で言ってた。宇宙軍でも名高いエースのガトー少佐の部隊に配属されたそうだよ。毎日しごかれてるそうだ」

 

「そうか。無事ならいいんだ」

 

 連邦のスパイをしてもらう代わりに、ヴィンセント君と、奥さんであるエルマさんの面倒も見ている。

 

 ヴィンセント君は親父さんが軍人で、兄貴分である僕も軍人だった影響で、自分も軍に入りたいと言ったから、士官学校に口を利いてあげたし、入学資金も少し融通してもいる。

 

 僕の給料は今のところ使い道がないからね。

 

 で、エルマさんは元々身体が弱くて、今回の開戦で心身にかかったストレスのせいか倒れてしまった。

 

 そこで僕の――貴族としての――名前を使ってズムシティの大学病院に入院させている。経過は悪くない。

 

 トラヴィスおじさんはそれを聞くと、表情筋の強張りを緩めた。

 

「というわけで、この坊主の走狗(いぬ)として働かされてたわけですよ。ほんとにとんでもないやつを部下にしてますな、イケメン大佐殿は。いつか背中刺されますよ」

 

 肩を竦めながら戯けて笑うおじさんに、ゼクス大佐も口の端で笑う。

 

 いや、冗談でも笑えないでしょそれ。

 

「彼がこちらを裏切る時は、それは、こちらに利がある時だけさ」

 

 そう言って大佐も席につく。

 

 え、何? 僕、いつか裏切るとでも思われてんの? 心外。

 

 

 

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