目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第181話 Side『降り注ぐ嵐』

 

 全員が席についたが、まだ一人だけ到着していない。

 

 すこし待つ間に、トラヴィスのおじさんは大佐と歓談していた。連邦側の戦況を流してはもらっていたけど、ジオン(こちら)側の情報はほとんど与えていなかったからね。

 

 たぶん、自身が独自で仕入れた内容と齟齬がないか――つまり僕が裏切っていないか――確認しようという意図だろう。あとは、自分たちが体よく使い捨てにされないという確証もほしいんだろうな。

 

 こんな使い勝手がよくて優秀な人間、切り捨てるわけないのにね。

 

 そうこうして部屋に最後の人物が到着。

 

「あら、すっごいイケメンがいる! 貴方が噂の《白光(ホワイト・ライトニング)》大佐かしら?」

 

 入ってきた妖艶な雰囲気の美女は、大佐を見るなり物怖じもせずにそう告げた。

 

「やあ、はじめまして」

 

 僕は片手を上げて彼女に挨拶する。

 

「あら、隊長に聞いていたとおりの童顔なのね。貴方がクライアント(・・・・・・)?」

 

 赤い長髪の女性は、色っぽい笑みを浮かべつつも、その瞳には獲物を狙い定めるヤマネコのような鋭さがある。

 

 彼女の名前はドリス・ブラント。トラヴィスの部隊の通信士だ。

 

「ドリス、こいつが俺の飼い主だ」

 

 トラヴィスのおっさんは僕のことを『こいつ』呼びだ。別にいいけど、おっさんの家族の面倒みてるの僕だよ? もっと敬意を払ってほしいなぁ。

 

「あいにく私って、年下には興味ないのよねぇ」

 

「安心しろ。こいつはお前より年上だ」

 

「げ!? 嘘でしょ!? どういう若作りの仕方してんのよ」

 

 ドン引きされた。まあ慣れてはいるけど。

 

「君が、例の《()》を突き止めた?」

 

 大佐が眉をひそめる。

 

 彼には、僕がその正体を知っていることを明かすついでに、ガルマ様に告げた『ラプラスの箱』にまつわるピースクラフト家の関連を教えてる。

 

「そ。ドリス・ブラントよ。よろしく、イケメンさん」

 

 そうウィンクする彼女。

 

 トラヴィスのおっさんに接触したのは、実は彼女が目当てだったりする。

 

 アンダーグラウンドのトップハッカー。ゲーム登場キャラだが、作品中では彼女は命令書を誤魔化して新鋭機体を部隊に引き込んだり、戦後も情報偽装でトラヴィスたちを匿ったりしていた。

 

 ゲーム通りの性格、能力なら、原作通りに連邦の秘密に接触した結果捕まり、『スレイブ・レイス』に配属される。

 

 その秘密、ってのが例の()についてだったわけだ。

 

「で、貴方が亡きピースクラフト家の御曹司ってわけね」

 

 ドリスの言葉に、大佐は僕に非難めいた視線を投げてきた。

 

 いや、教えてないよ?

 

「聞いたわけじゃないわよ。でも、『箱』についての情報提供に、ピースクラフト家がどのように関わっていたか調べろなんて言われればね。子供でも推察はできるわ」

 

 まあそりゃそうよね。こちらも隠す気はなかったし。

 

 ピースクラフト家とビスト財団の関わりを疑った僕は、彼女と渡りをつけて調べて貰ったってわけだ。

 

 大戦前にトラヴィスのおっさんに頼んで地球で接触してもらったのだが、そのせいで彼女も『スレイブ・レイス』行きとなってしまったわけである。

 

 ごめんよ。

 

「まあ、楽しかったからいいけどね。でも、その分のお手当ては貰えるんでしょ?」

 

 あっけらかんと言い放つ。

 

 彼女の好奇心と強かさはとびきりだ。

 

 だから『箱』と『ピースクラフト』について知りたいとおじさんに伝で頼んだだけで、深く調べてくれた。

 

 彼女いわく、完璧な情報隠蔽なんてこの世のどこにも存在しないのだそうだ。

 

 ある意味トラヴィスのおじさんよりも強か(・・)な人物で、きっと今も内心では、こちらの弱点と自身にとって有利な点を探るために頭脳をフル回転させてるとこだろう。

 

 家族という明確な弱点のあるトラヴィスよりも、ドリスのほうが厄介だけど、今回の件でこちらについたということは、利があると踏んだんだろうし、利があるうちは裏切らないのがわかるから、ある意味で信頼感抜群の女性だ。

 

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