目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第182話 Side『降り注ぐ嵐』

 

「それで、君たちはジオンに亡命したいということだが?」

 

 ゼクス大佐が本題を切り出す。

 

 トラヴィスおじさんは、深く頷くも、まだ警戒しているのか腕組みしている。

 

「ええ。なんせ俺等は『味方殺し』。今回の件だけじゃなく、口にできないほどの裏稼業をこなして来ましたからね」

 

 彼ら『スレイブ・レイス』は黒幕であるグレイヴの指示の元、連邦内で不正を行う官僚や、政敵を始末してきた。実質、グレイブの私兵だったわけだ。

 

「そちらが極東で『ペイルライダー』を始末してくれたおかげで、飼い主(・・・)の足取りを追うのが楽になりましてね」

 

 ペイルライダー計画は原作通りには進まなかったらしく、僕らが戦った、本来なら予備機のはずの一機以外は、未完成のままで基地を襲撃したニムバス大尉たちの手によって奪取されてしまっている。

 

 極東で『A.N.U.B.I.S』を開発したジャド博士は死んでしまったものの、捕虜となった研究員から計画の責任者の名を吐かせることには成功した。

 

 その情報をトラヴィス氏に流したところ、上手く動いたようだ。

 

 虎の子を失い、さらに自身がしてきた黒い活動が発覚しそうになったグレイヴがジャブローから出たところを、『スレイブ・レイス』が襲って始末したらしい。

 

 うーん恐ろしい。

 

「まあそこまではいいんだけどよ。元飼い主とやり合ったときに、ちょーっとばかし問題が発生してな」

 

 連邦内の高級将校を暗殺したこともさることながら、かなり不味いものを発掘してしまったらしい。

 

 ドリスが肩を竦める。

 

「その情報を()にして、そっちに寝返りたいわけ。こっちはお尋ね者だからさあ」

 

 指揮官暗殺にあたって、表の顔である試験部隊は解散しており、『スレイブ・レイス』としての実働部隊と、最初から事情を知っている人間を含めて30名が亡命希望者だ。

 

「亡命は理解した。君たちのこれまでの情報提供に感謝し、全員の身柄の保証は私がしよう。その情報というのは何か?」

 

「これよん」

 

 そう言ってドリスが嬢が胸元からメモリーカードを取り出す。

 

 なんかいちいち動作がエロいけど、大佐に色仕掛けは効かないし、下手すると怖い大尉(おねえさん)に睨みつけられちゃうよ。

 

 大佐が受け取ったメモリーカードは、クリアのケースに厳重に封印されていた。おそらくミノフスキー粒子の影響を最低限にするためだろう。この手の小型記憶媒体は、大気中に少しでもミノフスキー粒子があると、あっという間に壊れる。

 

「そこには連邦がこの戦争で行ってきた、非人道的な行いの全てが記録されている。それだけじゃなく、連邦が今後行おうとしている反抗作戦の情報もあるぜ」

 

「反抗作戦か。どんなものだ?」

 

「いま、宇宙軍はルナ2に部隊を結集してるのは、そちらでもご存知で?」

 

 それは把握している。

 

 大規模攻勢の前触れとして、ジオン宇宙軍も警戒していた。何よりジオンの宇宙軍は再編がまだ終わっていない。ようやく他コロニーからの義勇兵の練兵が終わり、新型のゲルググが月で量産されはじめたばかりだ。ここでルナ2と正面を切って戦えば、その消耗分で本土防衛戦力まで削れかねない。

 

 それもあって、少しでもルナ2の戦力低下を狙って、我々は極東の物資輸送マスドライバーを奪取したわけだ。

 

「そいつはブラフで、実際は地上での反抗作戦を連邦は考えてる。狙いはアフリカだ」

 

 なるほど。

 

 アフリカ戦線は地上でも屈指の激戦区だ。大陸の北と東半分をジオンが、南と西を連邦が抑え、両者常に小競り合いながらその陣地を奪って奪われてを繰り返している。

 

 トラヴィスは続ける。

 

「キリマンジャロ奪還と、地中海への侵攻、同時に行うつもりのようでしてね」

 

「地中海を?」

 

「ジオンは太平洋の海域封鎖は完璧ですが、インド洋までは手が回りきっていないでしょう。そこでマプトから潜水艇を遡上させ、エジプトとエルサレムを落とすつもりで。あと、マプトには航空機を艦載可能な空母が多数ありますから、地上部隊の支援も行えますな」

 

 話を聞いて、僕は端末を操作して、アフリカ大陸周辺の地図を出す。

 

「マプトには大規模な港湾基地がありましたね。先の我が軍による侵攻作戦で敗退した部隊が、少なくない数逃げ込んでる場所です」

 

「そこ、オーストラリアと繋がってるのよ。物資はそこから来てる。結構な兵力が揃ってるわ」

 

「あー、そしてオーストラリアはジャブローから補給受けてると」

 

「そういうこった」

 

 つまりは僕らが北米で叩いたオーガスタ基地みたいな事になってるわけだ。

 

 大規模な生産施設を持つジャブローからオーストラリアを経由して、人員と武装を受け取っている。

 

「ダカール含めて結構な兵員が動いてますよ」

 

「連邦にはまだそれだけの余力があるのか」

 

 大佐は眉をしかめ、唸りを上げた。

 

 

 

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