目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第183話 Side『降り注ぐ嵐』

 

 さて、話を現在に戻すと、いま僕らは月のグラナダにいる。

 

 無事にギニアス少将をアプサラス開発工廠へ送り届けた。彼には開発スタッフとして一緒に来ないか、と誘われたが丁重にお断りした。

 

 新兵器の開発などすごく魅力的な話であるが、さすがにここでゼクス大佐たちを放り捨てるのは気がとがめたからね。

 

 こんな僕でも情はあるのだ。

 

 年越しはHLV、元日はここで迎えた。

 

 さようならU.C79年。いらっしゃい、80年。

 

 原作だと80年の1月1日に公国の後に発足したジオン共和国政府が、終戦協定に調印することで戦争は終わっている。

 

 が、この世界ではまだまだドンパチは継続中だ。

 

『スレイブ・レイス』から得た情報についてだけど、ある意味『ラプラスの箱』並に問題な内容だった。

 

 連邦軍の総大将レビルはすでに亡くなっており、その思考パターンを模したAIに置き換わっている。

 

 とんでもない話だが、極東で半ばこちらに寝返ったカスミ女史は戦前はこの超AI開発に携わっており、別チームがレビル将軍の人格をコピーしたAIを開発していたという。

 

 レビル将軍は開戦時ルウムで戦死しており、奇跡の生還と呼ばれた徹底抗戦の演説は、事前にサンプリングしていた音声をAIが合成したものであり、容姿はCG。

 

 これらは連邦政府現首相と周囲の高官によって決定されたもので、外交失敗による戦争責任を取りたくなかった彼らと、軍の中で美味い汁を吸っていた一部のレビル派が、その権限を維持するために強引に進めたようだ。

 

 まさか本当に戦争の帰趨を全てAI任せにしてるとは思えないが、それでも前線で命がけで戦っている兵がこれを知ったら、一気に造反するかもしれない。

 

 さらに連邦内では宇宙軍の発言力が低下し続けており、代わりに陸軍が台頭してきているようだ。

 

 原作と異なり、連邦陸軍は壊滅しておらず、元々宇宙軍との関係は悪化していたが、今回の戦争でさらに軋轢が加速した。

 

 今度予定されているアフリカ大陸奪還作戦も、陸軍が主導しているのだという。

 

 連邦のMS投入は原作よりも早かったが、主力を担えるほどの数と練度は未だに用意できておらず、予算と人員の大半を陸軍に持っていかれているそうだ。

 

 宇宙軍再建のため立案されたビンソン計画も、陸軍の機甲部隊新設による横槍で少なくない予算と人員を取られ、一向に進んでいない。

 

 トラヴィスが言うには、宇宙軍、特にレビル派にとって厄介な陸軍の将校を暗殺するために、『スレイブ・レイス』が動いていた。

 

 ここでレビルAI疑惑を公表すれば、軍だけでなく現政権に少なくない打撃だろう。

 

 データカードの中にはレビルAIの製造だけでなく、人格パターンを催眠処置した人間にコピーし、思考的思想的クローンを生み出す実験を行った証拠まで保存されていた。

 

 思考クローンは失敗したみたいだが――過程で数十名の死者が出ている――副産物として、増大した感情を感応波(サイコウェーブ)として外部に出力する方法や、それにより兵器を操る技術、つまりはサイコミュの初歩のようなものが産まれている。

 

 月に上がった大佐は、これをキシリア少将に手渡した。

 

 そしてわずか2日後には、ジオン本国だけでなく各サイド向けのプロパガンダ放送でこれら連邦の悪魔的所業(・・・・・)が流布された。

 

 これにより、厭戦気分の漂っていたコロニー間の世論は再び沸騰。継戦一色に染まる。

 

 さらにとんでもないことに、連邦宇宙軍のエルラン中将が、ジオンが発表したこれらの証拠を認め、軍内部の腐敗を糾弾。即時停戦と和平条約の締結を求める声明を上げるという事態が起こった。

 

 これにより連邦は大混乱に陥った。

 

 各地で連邦政府を糾弾するデモが発生。戦時下ということで配給を絞っていた不満が爆発し、非合法地球滞在民なども巻き込んで、かなり大掛かりな暴動……というより同時多発テロが起きた。

 

 政府はこの鎮圧に当然ながら軍を投入したが、いかんせん数が多すぎた。

 

 それだけでなく、市民と一緒になって造反する軍人もいたぐらいだ。しかも部隊規模、ひとつの基地規模で。

 

 これは初戦のジオン侵攻により、連邦支配地域が細切れのように散在孤立していたせいで起こったことで、本部からの支援を満足に受けれなかった部隊が、そのまま都市部に支配層として居座り、勝手に自治を行っていた。

 

 ここで連邦の悪事が晒されたため、民衆の暴動でせっかくの荘園(・・)を失ってはたまらぬ、ってわけで民衆と一緒に政府を糾弾する立場に回ったわけだ。

 

 それだけでなく、連邦の屋台骨が揺らいだせいで一部の反連邦の武装集団が決起。鹵獲、または軍から横流しされた兵器を使って連邦の物資集積所や駐屯地を襲撃、占拠する事件が多発。

 

 自分たちで売った武器で攻撃されるなんて、間抜けもいいところだ。

 

 で、ジオンでは頃合い良しとみて、首脳部より大規模な攻勢作戦が立案される。

 

 その作戦に、僕ら『閃光の伯爵(ライトニング・カウント)』部隊にも参加命令が下ったのだ。

 

 

 

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