目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

201 / 260
第185話 Side『降り注ぐ嵐』

 

 濃い顔の三人は、こちらを挑発するような嘲笑いの表情を浮かべている。

 

「あ、『ジオンの三ヤクザ』さん」

 

「誰が『三ヤクザ』だ! 俺たちゃ『三連星』だといっとろうがぁ!」

 

 ハンガーに目一杯響くほどの大声を上げたのは、やたら縦に長い頭をした一人、オルテガだ。

 

「久しぶりだなぁゼクス。いや、もう大佐殿(・・・)とお呼びした方がよろしいかな?」

 

 三人組の中央、リーダーであるガイアが大佐に歩み寄る。身長差があるので、下から大佐を睨みつけるような調子だ。

 

「大戦前の教導連隊以来ですね。ガイア大尉。昇進されたようですな」

 

「ふん。貴様もな。今や本国じゃガルマ様と並んで英雄扱いだ」

 

「けっ! 上手く取り入りやがったじゃねぇかクソガキよう!」

 

 言いながら隻眼のマッシュが僕の頭をヘッドロックしてくる。

 

「実力ですよ。マッシュさんも相変わらずですね」

 

「なにが相変わらずだ! 少しは痛がりやがれ!」

 

 彼らはジオンのヤクザ三人衆もとい、黒い三連星。原作でも有名なドムカラーの人たちだ。

 

「たしか、大尉たちも本作戦に参加するのでしたな」

 

 原作と違い宇宙軍所属の彼らだが、今回の作戦ではダカールへ降下することになっている。

 

「そうだ。連邦首都、本命(・・)への襲撃だ」

 

 ガイア大尉は大佐を挑発するように言う。階級は圧倒的にゼクス大佐が上なんだけどな。

 

 過去の付き合い柄ってやつか、ガイア大尉は口調を崩さないし、大佐も気にしていないようだ。

 

「聞いたぜ。MSがないんだって?」

 

 ヘッドロックをし続けるマッシュ中尉がさすがに鬱陶しかったのですり抜ける。

 

 彼ら三連星と僕は、大戦前MS05のイグザンプルデータ作成の頃からの付き合いだ。

 

 僕自身がこんな容姿なので当初はかなり舐められたが、気にせず普段通りに接してたら変に気に入られた。

 

 特にマッシュ中尉(当時は少尉)は弟分のように思っているみたいで、やたらと飲みや歓楽街に誘ってきたりとうざ絡みが激しかった。それどころか部隊メンバーとして勧誘までされたぐらいだ。『四連星になっちゃうから嫌です』と断ったけども。そもそも僕はメカニックだと何度も言っている。

 

「ゲルググ貰うはずだったんですがね。さすがにMSもなしじゃ何もできません」

 

「ドワッハハハハハ! 『白光(ホワイト・ライトニング)』でも手も足もでんか! 傑作だな!」

 

 大声で笑うのはオルテガ中尉。

 

 この人巨漢だけでなく、声も無駄に大きくてうるせぇんだよな。

 

「俺達はちゃんと専用機を受領したぜ! 黒いゲルググ! これから人気がでるカラーは白じゃなくて黒だ! ジオン十字勲章は俺達が貰う!」

 

 やったらと大佐のことライバル視してるなぁこの人。ガイア大尉も少し困った顔してる。

 

 ん、まてよ。

 

 本来宇宙軍だった大尉たちがここに来ているということは――

 

「ガイア大尉、MSください」

 

「いつも藪から棒だなお前は」

 

 僕の言葉に、ガイア大尉は眉を引くつかせる。

 

「新型受領したんでしょう? ならそれまで乗っていた機体が余るはずです。それ、こっちに回してください」

 

 マッシュ中尉がため息をつく。

 

「お前なぁ……ほんと、遠慮って言葉知らねぇよな」

 

 すんません。

 

「……まあ、吝かじゃない。というか、そのつもりで来たんだ」

 

 ガイア大尉が呆れ顔ながら頷いた。

 

 大佐が驚く。

 

「よろしいので?」

 

「構わん。貴様も教練で乗り慣れたザクR型だ」

 

 ガイア大尉は、宇宙軍のMSは全機ゲルググに乗り換えるから、ザクは予備行きと余りはバラしてパーツ取りと決定している。どうせならその前にもう一戦使ってやれと言葉を繋いだ。

 

「ま、宇宙用のR型で地上戦をできるだけの技量がお前らにあればだけどな」

 

 マッシュ中尉の煽りだが、全く問題ないのよねこれ。

 

 ザクⅡRは、パイロットからは高機動型ザクなんて呼ばれることもある宇宙用の高性能型で、ザクと名付けられているが設計はザクとは全く違う。側を寄せただけの別物機体だ。そして、実は地上でも使える。

 

 じゃあなんで地上に配備しなかったかというと、地上ではR型の売りである高機動が十全には発揮されないからだ。

 

 R型の機動力はスラスターの推力に依ったもの。これにAMBACを合わせて3次元の複雑な機動が可能となっているが、地上では地面と重力がある以上、どうしても2次元的な動きに限定される。

 

 加えて機体の各所に推進剤のタンクを分散配置しているせいで、被弾には弱い。特に脚部は顕著だ。地上はAMS武装した歩兵が隠れられる場所が事欠かない。そんなもんで脚をやられたら、プロペラントごと大爆発もあり得るのど。

 

 とどめには、R型は地上用のJ型にはある脚部ショックアブソーバーがない。

 

 どういうことかというと、地上をちょっと走っただけでパイロットはコックピットの中で激しい揺れでもみくちゃにされるってわけだ。

 

 そのため地上配備はされなかった。

 

「だけど、R型から推進剤抜いてソールとの通信システムさえ構築すれば旧型のJ型よりは反応が良いですからね。懸念される機動力の低下はソールに任せればいいし、ゲルググより機体重量軽いですから、案外よく動けるかと」

 

「お前、本当に可愛げねぇやつだな」

 

 マッシュ中尉は呆れ顔。

 

 ともかくこれで最低限のMSの数は整えられそうだ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告