目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第188話 Side『降り注ぐ嵐』

 

「話が早いじゃないか。アンタ、アレ(・・)を見つけておきながら上に報告するでもなく、自分用にしたんだって?」

 

「ソールの話ですよね? だったらそうです」

 

「どういうつもりだい」

 

「どうって……誰が考えたことかわかりませんが、あれを仕込んだやつは地上で核爆発を起こしたいんだなと判断しまして」

 

 シーマ……じゃなかった。ハント大佐は僕と距離を置き、腕を組む。

 

「続けな」

 

「ええ。考えたのは、ゼクス大佐の暗殺。新規受領したMSに仕掛けを施さなかったのは、あの機体が本国で開発されたものだから手を入れづらかったのと、他のパイロットたちへのMSへの懸念を悪化させたくないためでしょう」

 

 ジオンにおいて、MSは絶対無双の兵器として喧伝されている。自分たちが作り上げた最強の兵器。それが事故で爆発なんて醜聞はさらしたくない。

 

 しかも搭乗したのは、本国でも大人気英雄として祭り上げられているゼクス大佐だ。彼がMSの不具合で喪失なんてのは、現場パイロットたちだけでなく、自国の世論に影を落とす。特に長引く戦争で嫌気が差しはじめた国民の感情を、不戦派が煽って勢いづけば面倒極まりない。

 

 だけど、それが開発したばかりの大気圏突入用兵器ならばまだ誤魔化しが効くと判断したのだろう。

 

 大気圏突入なんて無茶だったのだ、と。

 

「それに、そもそもなぜゼクス大佐を標的にしたかですが、気づいてるんですよね? 諜報部は」

 

 僕の言葉に、ハント大佐の瞳に剣呑な光が宿る。

 

 当たりだ。

 

 ゼクス大佐の正体。つまりミリアルド・ピースクラフトのことを知っている。

 

「だとしたら想像しやすい。シャアの一件で監視対象を泳がせるのがあまりにも冒険的(リスキー)だと判断したのでしょう。彼はガルマ准将からの信任も厚いし、本国でも有名だ。万が一にでも裏切られたら軍部のダメージはでかい。ただ、僕としては手を下すのは逆効果だと思いますがね」

 

「やはりお前はピースクラフト派閥かい。何を考えている」

 

 違うよ。今のジオンというか宇宙に、完全平和主義者なんていないだろう。

 

「ガルマ准将はゼクス大佐を本気で親友だと思っている。そして、同じくそう思っていたシャアの正体を、家族が黙っていた(・・・・・・・・)ことに腹を立てている。今ここで准将に黙ってゼクス大佐を排除すれば、この亀裂は決定的なものとなるでしょうね。せっかく有利に進めている連邦との戦争中に、ザビ家内で不和が生じれば、各地に散っている反ザビ家(・・・・)の連中が大喜びだ」

 

「それでお前がスケープゴートになると? とんだ忠誠心だね」

 

「合理的と言ってほしいのですが。僕もただ死ぬつもりはありませんし。つまりは核融合炉の崩壊で基地を巻き込めばよいのでしょう?」

 

「……どこまでお前は知っている」

 

「連邦が核ミサイルで本国を狙ったそうですね。事前にそれを阻止したとか。今回の件は、その報復も兼ねているのでしょう」

 

 実はこれ、マッシュ中尉に聞いた話だったりする。

 

 あの人、酒飲むとめっちゃ自慢話するんだよね。で、ここだけの話って感じで自分たちが連邦の極秘作戦を止めたことを語ってくれた。内容が内容のために公にされていないが、戦後に昇進とジオン十字勲章の授与が約束されているらしく、そりゃあ自慢げに話してくれたよ。

 

「MSは核融合炉で動いている。ジェネレーターを直撃しても、そうそう核爆発は起きないもんですが、戦場では絶対ということはない。連邦としては恐ろしいでしょうね。宇宙から核ミサイルがいくつも降ってくるようなものだ」

 

 MSの降下は南極条約に含まれていないからね。つまりジオンは『お前らが南極条約守らねぇなら、うちだってやるぞ』って脅すつもりなわけだ。

 

 大気圏からのMS単独降下が可能になれば、これまでのような陣地防衛は難しくなる。上空で撃墜したら、それが皆見事に核爆発なんてすれば、戦争の決着を見る前に地球は汚染されまくっておしまいだ。

 

 そこまで聞いて、ハント大佐は肩をすくめた。

 

「ああヤメだヤメ! 大体、コソコソと隠して話すのがアタシは好きじゃないのさ。単刀直入に聞くけどね、アンタ、何者なんだい?」

 

「ただのメカニックですけど」

 

「バカお言いでないよ! 大戦前からMSの開発に、地上侵攻用兵器の設計、戦場でピースクラフト家の御曹司を助け、自身もMSに乗って戦果を挙げる。さらに北米指揮官であるガルマ准将にまで取り入る。とどめに連邦にスパイを潜り込ませてたそうじゃないか」

 

「うーん。そう申されましても」

 

 転生した当初は、ジオン陣営で生き残ることを考えて行動してたが、今はなんというか……一度死んでしまった身だからか、自身のことを特別視できなくなってしまった感がある。

 

 特に極東地区で見つけた『黒歴史』に触れてからは、この世界が何者かの悪意によって育まれた歴史シュミレーターでしかないと思っているので、僕自身を含めた人の生き死に価値を見いだせなくなってしまった。

 

「軍部、特にザビ家に敵対するつもりはないですよ。ピースクラフト派閥というわけでもないですし、ダイクン派でもない」

 

「信じられんね。なんなら、吐かせてやってもいいんだよ?」

 

 まじで怖ええなこの人。独特の威圧感がある。

 

「まあ敵対しないって証拠でいいならありますが」

 

「あ?」

 

「もうしばらくしたら、ガルマ准将からキシリア少将、そしてギレン総帥のもとにある情報がいくはずです。大々的な調査が必要な情報でして。しかし、上手に使えば今後のジオンにとって有益であることは確実です」

 

 極東の黒歴史施設のことだ。准将には包み隠さず報告してある。どうせバレちゃうからね。

 

 ハント大佐は歩み寄ると、手にしていた扇子で僕の顔を殴った。

 

 痛い。

 

「誰がそんな戯言を信じるというんだい?」

 

「少なくとも、現時点で僕はジオンを裏切ってないんですがね」

 

 そう。だからこそ向こうは強硬な手段に出れないと踏んだ。

 

 僕はガルマ准将とも親しいし、国民的英雄と祭り上げられているゼクス大佐の正体も知り、なにより戦前からMSの開発に関わったメンバーの一人だ。

 

 そんな人間が基地内で行方不明となれば、大事。

 

 シーマ大佐……ハント大佐は、原作と同じ性格なら直情的だがバカというわけじゃない。でなきゃいくら人手不足のジオンでも実働部隊を指揮する佐官になんてなれない。

 

 脅すことはできても、それ以上のことはまだできないはずだ。だからこそ、わざわざ自分が出てきたのだろう。威嚇し、こちらが勝手にボロを出すのを期待したわけだ。

 

「安心してください。今回の件――核爆発は確実に起こしますから」

 

「それが信用できんと言っている。自分が死ぬとわかってることを進んでやる奴がどこにいるってんだい」

 

「ではどうしますか。そろそろ時間切れ(・・・・)になると思うのですが」

 

「はぁ? アンタ何言ってんだい」

 

「いや、僕、ストーカーに付きまとわれてまして」

 

 言うと同時に、この不穏な部屋に人が入ってくる。

 

 

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