目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

205 / 260
第189話 Side『降り注ぐ嵐』

 

 猪突猛進お馬鹿。

 

 立てば芍薬喋ればヤクザ。

 

 部隊一の残念美人。

 

閃光の伯爵(ライトニング・カウント)』部隊でも数々のろくでもない異名を持つフローレンス・キリシマ曹長だ。

 

『凶暴粗暴巨乳』なんて名もあったな。これ考えたの誰だ?

 

「あん? 何してんだオルド」

 

 彼女、どういうわけか僕の居場所常に把握してんだよね。

 

 女性と長々話してると必ず割り込んでくるから、ストーカーだと思ってる。

 

 一度本気で発信機の類を疑って調べたけど見つからなかった。きっと彼女のニュータイプ能力だろう。

 

 現場を見たキリシマ曹長の顔が険しくなる。

 

 空気が一気に張り詰めていく。さすがにまずいな。

 

「ああ、こちらは海兵隊のハント大佐。横にいるのは昔からの友人の――」

 

 と言いつつ隣の男に視線をやる。

 

「ゲヒャ? なんだ?」

 

「自己紹介しなよ、親友(・・)

 

「えーあー、俺ァニードルだ。よろしく、嬢ちゃん」

 

 器用にも銃を背中に隠しつつ男は僕から離れた。笑顔が硬いよニードルくん。

 

 キリシマ嬢はまだ警戒を解いていない。

 

「海兵隊の大佐ですの? なんでそんなお方がこんな殺風景な場所に」

 

 いや、それを言うなら君もなんでここに来たのさ。

 

「次の作戦で僕らは海兵隊にお世話になるでしょ? その挨拶と、後は秘密のお話だよ」

 

 目的地宙域までは、海兵隊の艦で輸送されるので嘘じゃない。

 

 ねぇ大佐。と視線を向けると、ハント大佐はめんどくさそうに長い髪をかきあげた。

 

「そういうこったお嬢ちゃん。アンタにゃ用事はないんだ。帰って寝てな」

 

「あらあらそうですの? でもあいにくまだ就寝時間じゃありませんの。それとオルド、あの泥棒クソ猫女が呼んでやがりましたわよ」

 

 ケイのことかな? キリシマ嬢、まだ彼女と喧嘩してるんか。

 

「あーということで、行ってもいいですかね大佐?」

 

 彼女の、というかその背後にいるキシリア少将への思考シュミレートは終わっている(・・・・・・)。だからこれ以上ここで話し込む理由はもうこちらにはないんだ。

 

「アンタねぇ……上官への不敬罪で拘留してもいいんだが?」

 

「やめてくださいよ。作戦、大事でしょう? 今は身内で争ってる場合じゃないですし。手札は揃ってるんですから結果にだけ期待してください。依頼人(クライアント)にはそうお伝えねがえますかね」

 

 彼女の眉間のシワは深い。

 

 そんな表情ばっかしてるから、キツイお顔になっちゃうんだろう。対外的に見れば美人なのにもったいないね。

 

「……アンタ、どこまで知ってる?」

 

 ん? 何の話だ。

 

 未来の出来事か? 前世の記憶あるのバレた? なんて一瞬思ったが、これまでの会話でそこまで見抜くなんて不可能だろう。

 

 黒歴史についてなら、あの施設で閲覧したし、あそこにいけばいつでもアーカイブを呼び出すことができるけど。

 

 だから言ってやった

 

全部(・・)、ですよ」

 

 ハント大佐は大きく息を吐いて俯き、手のひらで虫を払うような仕草をした。

 

 もう行けってことだ。

 

「じゃニードル、また後で」

 

 キリシマ嬢とメンチを切り合ってるニードルにひらひらと手を振り部屋を出る。

 

 後から追いかけてきたキリシマ嬢は、納得いっていない表情。

 

「おい! いいのか? ですの?」

 

 いいんだよ。もう必要なことは全部済んだ。なんでソールに爆弾(・・)が積まれていたか、それを指示したのは誰か。そして、再編された海兵隊の役割だ。

 

 それは――裏切り者の粛清機関。

 

 今回の接触は、カマかけだな。

 

「お前は、もっと他人を慮れ」

 

「君からそんな言葉出てきたのが一番驚きだよ」

 

 頭の辞書に暴力しか積んでないのかと思ってた。

 

 銃を押し付けられてた脇腹に拳が飛んできて、息が止まる。

 

 そういうとこだよ、曹長。

 

「……あなた、いつか刺されますわよ。そうやって『自分だけが何でも知っている』って顔してらっしゃると」

 

「そっか……まあ、それはそれだね」

 

 その程度のことで今生が終わるなら、まあそれもアリなんだろう。

 

 僕は箱の管理人――いや、これを作った者からしたら、箱の中身がカビないための除湿用乾燥剤みたいなもんでしかないのだから。

 

 お菓子の詰め合わされた箱を開けてみた子供が、邪魔だと思ったら即座に捨てる。

 

 そんな物でしかないのだ、僕の存在は。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告