目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第191話 Epilogue『砂漠の嵐』

 

 UC.0080、1月。

 

 ジオン宇宙軍は、ルナツーに集結しつつある地球連邦軍に対して攻勢をかけ、ついに要塞攻略に成功する。

 

 ジオンの兵力は決して多くはなかったが、アステロイド帯から引っ張ってきた隕石群に小型のエンジンを取り付け、それを質量弾として用いることで数の差を一気に覆した。

 

 ルナツー駐留軍の志気も高くなかったことが、ジオンにとって有利に働いた。

 

 補給線の一つであった地上のマスドライバーが占領されたことで物資が枯渇気味であったためだ。さらに悪いことに、本来であればマスドライバーで打ち上げた物資の回収ポイントに、地上から機雷を打ち上げられ、周辺宙域にジオンの陣地を築かれた。

 

 ジャブローからの補給も途絶え気味であり、アフリカ大陸における大規模反抗作戦の陽動とはいえ、そんな状況での宇宙軍戦力再建は無謀であるとも言えた。とどめに、後述する『連邦内部のスキャンダル』により、志気は完全に折れたと言えよう。

 

 基地司令であるワッケイン少佐はこれに「寒い時代だ」と答えたことを、後の世の書記官が私的な記録として手記に記載している。

 

 また、隕石弾の影に隠れジオンのMS部隊が要塞を強襲。開戦と同時に、ジオンが得意とする乱戦となってしまった戦場で、連邦軍はまともな統率もとれずに壊乱し、6時間後には要塞内部に突入したジオン制圧部隊によりルナツーは無力化、占拠された。

 

 この電撃的な要塞攻略は、先の作戦で潜入していた海兵隊諜報員により内部の詳細な情報を得ていたことも大きい。

 

 連邦は、質量兵器の使用を制限した南極条約に違反するとの声明を発したが、ジオン曰く、条約は地球への質量兵器投下にのみ言及しているため、条約違反にはあたらないとの見解を示し、各サイド世論も概ねそれを支持した。

 

 ルナツー攻略の裏で、ジオン突撃機動軍は少数ながら精鋭を揃えた特殊部隊によるアフリカ大陸攻略作戦『ストーム&コメットフォール』を発動。

 

 開発されたばかりの大気圏突入艇ソールによるMS単独降下。

 

 これにより連邦政府首都ダカールを直接叩くものである。

 

 本作戦には黒い三連星とキマイラ隊が参加。

 

 連邦アフリカ方面軍の誇る防衛線『西サハラ広域要塞群』を一足で飛び越して、直接頭を叩くという作戦であった。

 

 この連邦要塞群は、大戦初期に経済界を叩いてありたっけの資金と資材を注ぎ込んで完成させた、連邦政府首都ダカールを防衛するための施設群体であり、メガ粒子砲といった最新の兵器だけでなく、旧式火薬の野砲なども多数引っ張り出されている。

 

 東からのジオンと、そのひもつきである反連邦組織サハラ解放戦団の侵攻を食い止めるためのものであり、山岳部を利用して敷設された。

 

 また、内部からジオン領へと抜けようとする難民を食い止める関所でもあり、捕えた難民を強引に徴兵していた。

 

 実情は張子の虎が多数といったところで、使えぬ砲台の代わりに61式の155mm2連装滑腔砲が頼みであったが、遠距離ではザクはともかく、ドムの分厚い装甲を撃ち抜くには至らなかった。

 

 それでもいくつか配備されたメガ粒子砲は強力で、数多のジオン陸上部隊と、ゾッド航空部隊を苦しめたものである。

 

 この要塞群を抜いてしまえば、ダカールに配備されているのは連邦陸軍の旧型兵器のみであったため、東のジオンアフリカ方面軍が要塞群の部隊を釘付けにしている間に、降下部隊は難なく都市の蹂躙に成功する。

 

 この力技といえる作戦が成功したのは、連邦軍内部でのいざこざ(・・・・)に拠るものが大きかった。

 

 連邦は本来であれば東アフリカ奪還に向けて大規模な戦力をかき集めている最中であったが、その中核となるべき部隊のひとつを指揮していたエルラン中将が、軍内のスキャンダルを世に公表し、主力を伴って欧州領域へと撤退する。

 

 スキャンダルの内容は多岐に渡り、上層部と政治家と企業の癒着、軍の私兵化による政敵への暗殺行為。戦争孤児の誘拐による少年兵の投入や人体実験といったものまであった。

 

 そして何より、今次の大戦はジオン、さらには宇宙コロニー圏との外交に失敗した連邦政府の失点をカバーするためにでっち上げられたものであり、総司令官とされているレビル将軍はすでにルウム戦で死亡していることの告発。

 

 この件は先にジオンが世界に向けて公表していたものであったが、それを連邦軍の高官が認めた形となる。

 

 様々な証拠とともに世界に向けて公表、告発された情報により、ただでさえ統制の取れていなかった連邦軍は混乱、組織だった動きを封じられた。

 

 主力の一部とはいえ、少なくない兵数が欧州――隕石落としですでに工業施設類の大半が壊滅しているため、ジオンの海上封鎖も甘く、抜けがあったー――へ引きこもったために、予定していた大規模な反抗作戦に必要な物資、兵力が足りなくなった。

 

 そこにきての、ジオンの奇襲である。

 

 本来であれば都市上空宙域の警戒は宇宙軍が担っていたが、此度の騒動による指揮系統の混乱と、ルナツー同時襲撃の間隙を抜かれた形となり、圧倒的に防衛部隊の数が少なく、大気圏降下するMS部隊を撃墜せしめること叶わずにダカールは墜ちた。

 

 さらにアフリカ南東、連邦軍マプト港湾基地には、ゼクス・マーキス大佐率いる『閃光の伯爵(ライトニング・カウント)』部隊がエフェメラ・ハント大佐の海兵隊の支援のもと大気圏降下を敢行。

 

 MSわずか六機という数で、基地の航空機27機、港湾施設の空母と潜水艦ドックを破壊するという快挙を成し遂げる。

 

 作戦中において、オルド中尉機が搭乗したSFSソールがエンジントラブルにて墜落、搭載していた核融合炉が爆発を起こして港湾施設の大半を吹き飛ばすというアクシデントに見舞われたが、パイロット本人は爆発前にMSごと海へと脱出しており、およそ4時間後に元々合流予定であったジオン海軍に発見され、無事に帰還している。

 

 中尉の乗っていたザク2R型は元々宇宙用に開発された機体であるため、各部、特にコックピット周りのシーリングがしっかりとなされていた為に海中でも長時間稼働できたと思われる。また、R型は開戦当初、核兵器の運用も視野に入れられて開発されていたことから、コックピットは耐核性能にも秀でた設計でもあった。

 

 核爆発については、連邦はジオンに対して「明らかな条約違反」と糾弾の声を上げたものの、両陣営ともにMSを含む機動兵器には核ジェネレーターが多く用いられており、これまでの戦闘でも数と規模こそ少ないが核爆発を起こしている。そのため不慮の事故(・・・・・)としてジオンは白を切った。

 

 公には事故とされたが、これら一連の物事はジオン上層部によって画策されていたことであり、先に連邦の過激派がサイド3コロニーを核ミサイルで一掃しようとした事件に対しての報復と警告であるのは明白だった。

 

 ルナツーすら征し、今や完全に地球を包囲することが可能となったジオン軍は、「いつでも大気圏から核を落とせる(・・・・・・・・・・・・・・・)」と明言したのである。

 

 

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