目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
UC.0079.12。
ジオンと連邦の間で勃発した戦争は、この一年で地球の環境を激変させた。
ジオンが落とした隕石群により、いくつもの主要都市は壊滅、大気には汚染された塵が立ち込め、天候不順による食糧難と汚染物質による感染症が蔓延った。
多数生まれた難民に対して連邦政府は打開策を見出だせず、結果生まれた不満と不信が政府への弾劾運動となり、それらが以前からくすぶっていた反連邦思想と結び、武力による衝突と変わるのはあっという間であった。
その中でも、もっとも戦闘が激化しているのはアフリカ大陸である。
夜陰の中で熱砂逆巻く砂漠を、赤い機影が走り抜ける。
ザクに似たシルエット。だが、ザクよりも厳めしく大柄な機体だ。
グフ
ジオンが開発した最新鋭のMSである。
エースパイロット用に月で製造され、各々のパイロットに向けてカスタムされた専用機。故に仲間内からは、グフ・カスタムとも呼ばれていた。
ホバークラフトによって、足場の悪い戦場を滑らかに疾駆する。
敵陣営から放たれた砲弾が着弾、巻き上げた砂塵の中でグフのモノアイが不敵に曳光し、赤い流線を作る。
左腕に装備されたシールドに取り付けられたガトリング砲が高速回転し、弾丸を吐き出す。
前方連邦陣地に建てられたコンクリートの厚い壁を、75mmの弾丸が削り取った。
遮蔽が保たないと判断したのか、連邦の
砲弾が放たれる寸前、グフは重量物であるガトリングをシールドごと廃棄し、ホバーの加速そのままに跳躍した。
弾丸と障壁を飛び越え、MSの背面に着地したグフは高速旋回し、右手に持ったヒートソードを薙ぐ。
ジムは赤熱した刀身によって胴を水平に切断され、崩れ落ちた。
その場より離れた位置に居たジムが、仲間の仇を取ろうと、マシンガンの銃口をグフに向ける。
装備名としては携行小型小銃といえど、撃たれた弾丸は100mmの重砲だ。
高速で飛来するそれはグフの肩アーマーのスパイク――対象を視覚的に威嚇するためだけの飾り――を砕いたが、濃いミノフスキー粒子の影響か、単に技量によるものか、致命的なポイントに命中させることは叶わなかった。
ホバークラフト独特の、ジグザグに高速蛇行しながら的を絞らせない走行でグフは相手の懐に飛び込み、相手の腹部に左腕に装備した3連装35mmガトリング砲を押し当てた。
35mmは対MS用弾丸としてはかなりの小口径だが、高初速とその速射性で近距離においては無類の破壊力を発揮する。
接射された弾丸は、本来ならばもっとも装甲の厚い胴部の装甲をたやすく貫き、その運動エネルギーでフレームを砕くと、ジムの内部機構をズタズタに引き裂いた。
数秒という間の射撃でジムは体の前面を文字通り蜂の巣にされ、仰向けに倒れ沈黙した。
グフの背後に生き残りのジムがバズーカの照準を合わせる。
だがさらに背後に滑り込んできたドムが、バックパックに向けて砲弾を叩き込んだ。
背面はMS共通の泣き所だ。
構造上装甲が薄く、スラスターを吹かすための推進剤が詰まったタンクを吹き飛ばされ、そのジムは盛大な爆発を起こして粉々になった。
友軍の援護を見届けたグフはさらに機体を走らせ、連邦陣地の深くへと切り込む。
対戦車、対ドム用に作られたコンクリート障壁の向こう。トーチカとともに砲撃を続けるガンタンクの姿が見えた。
グフは敵が用意したコンクリート障壁を利用しながら、果敢に接近する。
恐怖に駆られたのか、それとも航空機などのソフトターゲットを対象とした40mmボッブ・ランチャーでは、MS相手に火力不足と判断したか、いずれにせよガンタンクのパイロットは致命的な判断ミスを犯す。
ジグザグに迫る敵に向かって、主砲である120mm低反動砲を向けたのだ。
照準をつけるために、弾幕が途切れる。
その隙をついてグフの右腕から撃ち出されたヒートロッドがガンタンクの主砲左に巻き付き、あらぬ方向へ折り曲げた。
同時に放たれた電熱によって撃ち出されようとしていた弾丸は砲身の中で爆発、そのまま背部から給弾されようとしていた次弾が誘爆する。
爆炎を上げる敵に、迫るグフは容赦を与えなかった。
高く跳躍して飛びかかる。
ガンタンクの頭部には砲手用コックピットがある。先程の爆発で防弾用キャノピーが吹き飛び、血まみれの連邦パイロットが絶望の顔を浮かべた。
頭頂部から突き刺されたヒートソードは、人体を一瞬で蒸発させ、尚更に深く、その柄元まで刺さる。
胴体内の胸背部給弾機構が熱により誘爆し、幾度も爆発しながらガンタンクは関節の壊れた人形のごとくその場で跳ね、やがて息絶えるように動かなくなった。
ヒートソードを引き抜いたグフの傍らを、三輪車を前後反対にしたような戦車が駆け抜けていく。
簡易MTゲレだ。
マゼラ・アタックに代わり導入されたそれは、装輪式脚部のスチームシリンダーを駆使し、巨大な塹壕やコンクリートバリケードを飛び越え、連邦陣地内を蹂躙していく。
その様はまさに
轟音とともに幾条も吹き上がる爆炎を、グフのモノアイは冷徹に見つめていた。