目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
アフリカ大陸にてもっとも戦闘が激しいのは、北アフリカ方面である。
連邦は首都であるダカールを防衛するために『西サハラ広域要塞群』を建設。
過剰とも言える数のトーチカ類により、ジオンの航空機と機甲部隊を退ける鉄壁の要塞であった。
容易に西側の侵出が不可能となったジオンアフリカ方面軍は、要塞群を迂回するルートを開拓するために、南へと目を向ける。
だがそちらは連邦の強固な支配域であり、数多の都市部と軍事施設がいまだにその心臓を動かしていた。
南アフリカは隕石群の落下を免れ、無傷であったのだ。また、ジャブローの支援も厚く、ジオンにとってこれらの攻略は要塞群と同じく容易ではなかった。
両陣営ともにその自軍の陣地を押し広げるために、一つの防衛陣地を落とせば、翌日には別の陣地が奪われる。そんなマスゲームが繰り広げられるのが、この砂漠の日常であった。
その日は砂嵐が起きていた。
ジオンにとって数多ある物資集積所。集められた物資はここから各方面の防衛陣地へと配られる。
前線にあることには違いないが、周囲を防衛陣地に囲まれているぶん、この施設自体の防御設備自体はそこまで手厚いものではなかった。
兵士も気を抜いていた。
もう少しすれば年が変わる。
開戦から一年を迎えることになるが、誰もがこの膠着した戦線に飽きていた。
砂塵の中で視界も悪く、戦場に常に撒かれたミノフスキー粒子の影響もあってレーダー類は一切あてにならなかった。
倉庫の警備任務についていたザクⅡJb型のパイロットは、輪番により最近になって配属された若者だった。
最前線にはドムが配備されているが、緊急展開の必要のない後方陣地や倉庫警備には、旧式の機体が割り当てられる。
彼が普段からもっと自身の勤務態度に意識を配っていれば、まだ
コックピット内、ヘッドフォンで音楽を聞いていたパイロットは、耳に突き刺さったノイズに顔をしかめた。この大陸は常時ミノフスキーが撒かれる場所であり、その影響でポータブルプレイヤーが壊れるのも、もう10度目だ。
舌打ちしてヘッドフォンを外し、プレイヤーを放り出す。
同僚が、よりアナログな旧世紀のラジオの方が壊れにくいと言っていたが、そちらとてミノフスキー粒子が濃ければ電波を受信できず役に立たなくなる。
こんな砂漠の真ん中で、ただ一日狭いMSのコックピットの中にいるだけの日々だ。せめて勤務中は好きな曲を聴くぐらいのワガママは通せるだろう。
若者特有の自己中心的な思考でそのパイロットはコックピット内にいくつも私物を持ち込んでいた。
本当に退屈な仕事だ。自分も前線で活躍し、かの『
脳内で成功する自身の姿を夢想したとき、MSに搭載されている
音紋が不明であったが、パイロットはそれを友軍のものだと判断した。彼がここに赴任してから数ヶ月経つが、これまで襲撃を受けたことはなかったし、MSのUGSはそこまで性能が良いものではないからだ。センサーの誤認誤作動など頻繁に起こる。
改めてシートに深く背中を預けて、酒保からくすねたチョコレートバーでも食べようとジャケットのポケットをまさぐった時、前方に赤い閃光が走った。
続く爆音と炎。
同僚が乗ったザクのものだ。
混乱した頭で、爆炎が上がる方を望遠する。
砂塵の向こうから、見慣れない
連邦のジムに似ている。だがCG解析が遅い。
モザイクの解像度が整い、映し出されたのは頭部にV字のアンテナをつけたMSだった。
灰色の手足に、胴体だけアースカラーの機体。
MSの両眼――ツインアイ――が子供の頃に見たカートゥーンアニメの死神のように不気味に赤く光った気がした。
――敵!
叫ぶ暇はなかった。死神が手にしたライフルを撃ったからだ。
その若いパイロットは、プラズマ熱の直撃を受け、塵すら残さず蒸発した。
そこからは一方的であった。
この集積所には、ザクⅡJbが3機、隊長機であるドムD型が1機配備されていた。
奇襲とはいえ、V字のMSは数で勝るジオンをその性能差で圧倒していく。
ザクのマシンガンの斉射をホバークラフトの高速移動で躱し、その胴部にビームライフルの一撃を叩き込む。
的確な射撃。
あっという間にザクを全て撃破した。
相対したのが軍学校を繰り上げで修了した新兵であることを差し引いても、驚異的であった。
同じホバークラフト駆動で機動戦では分が悪いと判断したのか、隊長機であるドムは、MMP-80を乱射しながら、白兵戦を挑む。
90mmの弾丸は相手のシールドを貫徹し半ばから砕いたが、本体に致命傷は与えられない。
突撃したドムはヒートサーベルを抜き放ち、袈裟に斬りかかった。だが敵はさらに加速し正面に踏み込むと、ビームライフルの銃口を胴体に突きつける。
放たれたメガ粒子の熱はMSの推進剤を容易く誘爆させる。
ドムの盛大な爆発が敵を飲み込む。
わずか6分という短い間に、ザク3機とドムを葬ったその機体は、爆炎の照り返しを受けて、返り血に染まっているかのようであった。