目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第195話 Side『ストームブリンガー』

 

 キンバライド。

 

 ジオンアフリカ方面軍の最大拠点と言えるキリマンジャロ山にほど近い場所にあり、もとはダイアモンドを採掘していた鉱山である。

 

 すでに有用な鉱物は全て採掘し終えた場所だが、ジオンはこの鉱山跡地をキリマンジャロの防衛拠点として改造し使用していた。

 

 この鉱山基地には30機を超すMSが配備され、しかもそれら全てが最新式のドムである。

 

 キンバライドを囲むように並んだ前線陣地にもドムが置かれていた。

 

 これはドムの脚の速さを評価してのものだ。

 

 ジオンの兵員と兵器数はこの広大なアフリカ大陸の自陣全てをカバーできるほど多くはない。

 

 それを補うため、航続距離が長く、移動速度の早いドムがアフリカ方面軍には最優先で配備されたのだ。

 

 ドムの最高速度はこの礫砂漠で時速300kmを超える。

 

 前線陣地が襲撃を受けた場合、このキンバライドや近隣の駐屯地よりこのドムが駆けつけることになる。広大な戦線に対して、投入できる戦力に限界があるための苦肉の策だ。何せ、足りない人員は現地の反連邦組織と協力するという手段を取っているほどである。

 

 このキンバライドを抜ければ、宇宙港のあるキリマンジャロ基地は目前であり、キリマンジャロを落とせばアフリカ大陸でのジオンの補給線に痛打を与えることが可能だった。

 

『ストーム・ブレイカー作戦』

 

 連邦のアフリカ大陸奪還に向けた大規模反抗作戦の通称である。

 

 ダカールを中心とした西アフリカ軍と連携して、包囲を縮めるようにその物量で叩く作戦だ。

 

 この作戦にはこれまでアフリカ方面軍が温存してきた戦力の過半数を投入する。

 

「……中止、ですか?」

 

 上官から告げられた事実に、指揮車の中でハルト・ランガーは表情を失った。

 

「認識は正しく行いたまえ。『降伏』だと言ったのだ」

 

 通信機の向こう、顔も見えないホフマン・ボーウッド大尉の冷酷な言葉が響く。

 

「我々はキンバライド攻略のために北上し、他の独立機械化部隊と連携するはずでは」

 

「ダカールとマプトが落ちたのだ。これ以上はどうすることもできん」

 

「連邦は終わりということですか!」

 

「……」

 

 口惜しさというよりも怒りがこみ上げてくる。

 

 長らく続いた戦争がこんなあっさりと終わっていいものか。

 

 まだ自分たちは侵略者から何も奪っていない――そんな理不尽と呼べる感覚があった。

 

 数多の命を収奪されたのだ。こちらもそれ以上を奪わねばこの感情は抑えられない。

 

 元は本作戦において連邦はアフリカ南部にてMSを含む4個師団をキンバライド、果てはキリマンジャロにぶつけるつもりであった。さらにこれは陸上部隊だけの話であり、マダガスカルからは航空機をめいっぱいに艦載した空母4隻が、23隻の護衛艦とともにインド洋を北上する。

 

 そしてマプトからは、対潜潜水艦が8隻、空母打撃群の護衛のために出される。

 

「しかしそれも白紙だ。マプトの港湾施設は完全に破壊された。対潜装備もないなかで、インド洋は遡上できん」

 

 空母が潜水艦に対して脆弱であることは、旧世紀の頃から変わりがない。ジオンは緒戦で連邦より接収した旧式の潜水艦を用いているが、そんなものよりも恐ろしいのは、海の忍者と呼ばれる水陸両用MS、ハイ・ゴッグだ。

 

 たった一名で運用できる、高速の潜水艦でもあり、陸に上がれば高機動の人型装甲兵器である。

 

 ジオンの水軍は数が少なく、ほとんどが太平洋を封鎖するために人員を割いているためインド洋は手薄といえども、その存在は驚異的であるのはハルトも承知していた。

 

「ですが数は我らが圧倒的なはずです」

 

 キンバライドを防衛するジオンと比べて、陸上部隊の数だけならば倍の差がある。十分な戦備のはずだった。それをことここにおいて放棄するなど、頭のある人間のすることではない。

 

「無駄だ。マダガスカルが動かんのだ。航空支援もなしに、キンバライド防衛陣地を抜けれるわけがないだろう」

 

「マダガスカルが? バカな! なぜです」

 

「海軍が日和見を決めた。一番の理由は――例の噂だ」

 

「あんなもの、ジオンの離間工作でしょう。それを鵜呑みにしたというのですか」

 

 突如として発表された、『レビル将軍AI説』これを指揮官の一人であるエルラン中将が全面的に認めたことで、軍の足並みが崩れた。

 

「事実だよ。とにかくマプトは落ちたのだ。この意味はわかるだろう」

 

 ハルトは怒りで視界が歪むような錯覚を見た。

 

 マプトが落ち、マダガスカルが動かないとなればアフリカ方面軍の補給線は寸断されたも当然であった。マプトはジャブローからの補給をアフリカに行き渡らせるための心臓部でもあったのだ。ジオンはそれを一夜にして破壊した。

 

 航空支援だけでなく補給すらされない。そんな状況でジオンの防衛陣地網を攻略するなど、自殺的行為である。

 

 ハルトは頭では解っていたが、それでも感情が納得することを拒んでいた。

 

「降伏などと……まだ一戦すら交えていないのですよ。ダカールの要塞群まで撤退し、そこに立て籠もれば」

 

「一部が落ちているよ。連中はダカール攻略後に次々と降下してな。補給線は完全に断たれた」

 

「降下……軌道上の守備は、まさか」

 

「ルナツーが落ちたのだ。加えてジオンはMSを単機で大気圏に突入させる新兵器を用いている。地球は完全に頭上を抑えられたのだ。これ以上どうしようもあるまい」

 

 

 

 

 

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