目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
その日は荒天であった。
激しい雷雨とともに、連邦の集団がジオン領内へと深く侵攻した。
機甲部隊に先行した27機からなる元宇宙軍MS部隊は、キンバライドまでに敷き詰められた地雷原をろくに啓開もせずに突貫。その身を持って、後続の主力部隊の盾となった。
2個師団以上の機械化地上部隊。ジオンとてその動きを把握してないわけではなかった。だが、まさか自滅覚悟で防衛陣地網を抜けようとするなど思いもしなかったのだ。
また、西の要塞群残存部隊の掃討で主力のMS部隊は不在であり、そうでなくともジオンの予備兵力は払底していた。
ルナツーとダカール攻略といった立て続けの作戦行動により生じた軍事力の混乱を突かれたと言ってもよかった。
アフリカ機甲戦師団第4MS機動分小隊隊長であるノーランに前線の救援要請が伝わったのは、連邦の別部隊による陣地襲撃を退けた直後であった。
いつもの小部隊による
ノーランは念の為にキンバライドへ増援の要請を出すと、最低限度の補給を済ませ、MS3機小隊のみで救援へと向かった。
連邦の奇襲が成功したのは、ジオン側の士気のたるみによるものが大きかったが、広範囲にわたったこの悪天候も有利に働いた。
風雨が強ければ、ミノフスキー粒子は霧散してしまいその濃度を保てなくなる。
ジオンはミノフスキーによる通信障害を過信しており、故に通常の無線通信手段は軽視されていた。
そして有線による通信網はいくつかの基地局を襲撃するだけで容易く無力化できる。そうでなくとも、ジオンが用いていた機器は雷雲のノイズに対して脆弱であった。
基地局の襲撃と、コロニー民が遭遇したことのない嵐という気象。それらが重なり、ジオンは大部隊の接近感知が遅れ、中央へ報告できなかったのである。
連邦にとっても、ジオンの反応の鈍さは意外を通して不気味ですらあった。
対MS用地雷の数も少なく、警戒していた長距離用重砲を装備したMTすら影も見えなかった。
相対するのはMSではなく、旧式となったマゼラ・アタックや、練度の低い現地徴用兵が扱う
これは先述したジオンの懐事情によるものであり、キンバライドを防衛する各陣地の大半が、原住民により結成された反連邦組織であるためであった。
この抵抗の緩さが、襲撃部隊を指揮する連邦士官の目を曇らせた。
彼我の兵力差は圧倒的であり、この勢いを利用すれば当初の目的であるキンバライドも容易く落とせると考え、さらなる侵攻を指示した。
先行強襲部隊にいるハルト・ランガー少尉はこの戦闘の結果は、ジオンが初戦で行ったアフリカ・中東攻略作戦――トライデント&ジャベリン作戦――の不出来な焼き直しでしかないと分析していた。
相対した敵に正規兵は少なく、MSを相手にするには圧倒的に機動力の足りない旧来の兵装で迎えていた。
MTゲレでさえ、機動戦ではなくほぼ固定砲台として扱っている始末だ。さらに歩兵によるロケット・ランチャーなどは、MSの装甲を抜くことすら叶わない。
MSでの敵地への高速浸透、そして千々に乱れた戦線を後続の重戦車によって蹂躙。
ここまではいい。
だが、以前と違うのはジオンにはMSがあり、連邦に先じて運用してきた実績があるということだ。
キンバライドに近づけば近づいただけ敵の防衛は厚くなり、たとえMSの強襲力を持ってしてもその足は止まることとなる。
そうして進行が遅滞したところを、間延びした部隊を囲むように挟撃されれぱ各個撃破されてしまうだろう。
そしてそれは当初、トライデント&ジャベリン作戦へのカウンターとして連邦が描いていたシナリオでもあった。
しかし撤退するという選択肢はあり得ない。
本来の目的は沿岸部マダガスカルへ脱出する友軍からジオンの目を外すためのものだからだ。
戦うのなら、派手であればよい。
その日の嵐は、夜明けまで続くのだった。