目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第199話 Side『ストームブリンガー』

 

 アフリカ機甲戦師団第4MS機動分小隊と、連邦独立強襲部隊1個中隊の開戦は真夜中に起きた。

 

 最低限度の補給で駆けつけたノーランは、集団で進行する連邦MSの姿にコックピット内で舌打ちした。

 

 夜陰と未だに収まらない風雨のせいで一見だけでは詳細な数はわからないが、10機以上の人型が自軍の基地施設を破壊しているのが見える。

 

「切り込むよ!」

 

 僚機であるトニーとドクに短く告げ、岩山の斜面を滑り降りる。

 

 着地と同時に機体を加速させる。

 

 グフの加速力は殺人級だ。シートに全身が押し付けられ、食いしばった歯の間から呼気が漏れる。

 

 飛び込んでくる紅い機体に気づいたゴーグル付き(ジム)が、100mmマシンガンの銃口を向ける。

 

 ノーランは機体を右に滑らせ、射線を切ると同時に、ほぼ反射的に銃撃のトリガーを引いた。

 

 シールドに懸架された75mmガトリング砲から、恐るべき密度の弾丸が放たれ、連邦のジムを襲った。

 

 鋼鉄の銃雨に晒されたジムは、初弾こそ構えていたスモールシールドで防いだが、盾を砕かれ、そのまま全身を削られるように撃ち抜かれて沈黙した。

 

 僚機をやられたことに気づいたジムに、砲弾が直撃する。吹き飛ばされた先で爆炎を上げた。

 

 トニーが搭乗するドムによるラケーテン・バズの一撃であった。

 

 キリマンジャロで製造された新式のドムは、D5の型式からドム・5番目(フュンフ)と呼ばれることもある。

 

 背部バックパックに武装懸架用アタッチメントを増設したタイプで、トニーの機体は110mm機関砲と六連装ミサイルランチャーを装備した中距離支援仕様だ。

 

 一方、僚機の片割れであるドクの機体は両腕にグフと同じシールドガトリングを装備した仕様で、中距離からの制圧を主目的としていた。ラケーテン・バズを装備しないのは、ドクの狙砲撃技量が足りていないためだ。

 

 命中率の低さを連射数と火力で補う思考である。

 

 ドクの機体は左右に不規則に滑りながら、集結しようとするジムたちを弾幕で牽制し、連携をとらせない。

 

 孤立した機体を、隊長であるノーランのグフが切り込んで、格闘戦にて速攻を仕掛ける。

 

 兵員の数が少なく、一戦闘に時間をかけていられないジオンパイロットたちが自然と身につけた戦法であった。

 

 だが今回は相手の数が多い。

 

 ノーランとしても迂闊に距離を詰めることはできなかった。

 

 考えなしに突っ込めば、背面を撃たれることになる。

 

 味方の基地防衛部隊はほぼ壊滅状態であり、近接防御火器すら機能していない。

 

 基地の救援はもはや無意味であったが、この場を抜かれれば、物資集積所のある領内まで深く刺されることになる。安易に退くことはできなかった。

 

 他の防衛部隊にも連絡は行っており、キンバライドを預かるデメジエール・ソンネン中佐が率いる機甲部隊が後を追ってくるはずだ。

 

 深く入り込んだ連邦を囲んで確実に落とす。ジオンはそうした腹積もりで兵を配置していた。

 

「とはいえ、遅滞させなきゃ作戦の意味がない」

 

 ノーランは自分の死期がやってきたことを肌で感じとっていた。

 

 数多の敵兵を死地に追いやったが、ついに自分の番というわけだ。

 

 いくらなんでも、こちらの5倍近くの数のMSに1個小隊で太刀打ちできるとは思えないからだ。

 

 それでも命令は絶対だ。

 

 当初基地の救援を受けていたノーランたちアフリカ機甲戦師団第4MS機動分小隊(スカーレット・ショルダー)だったが、上層部より与えられた命令は、敵先鋒の足止め。後退は認められていない。

 

 つまり、できる限り数を減らして全滅しろということだ。

 

 軍においてしょせん外様(・・)である自分たちは、釣り餌として利用されたのだ。

 

「やってやろうじゃないのさ」

 

 100mmの弾丸を躱しながら、ヒートソードでその胴を薙ぎ払う。

 

 爆炎の照り返しを受けながら、ノーランは操縦桿を握り締め、乾いた唇を舐める。ピリッとした痛みとともに、舌先に血の味が広がった。

 

 

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