目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
この際だと思ってガルマ大佐に言いたいこと言って煽ったら、あの坊っちゃんは疲れた顔をしながらも提案を上に出すことを受け入れてくれた。
素直ないい子だな。
シャアに殺させるには勿体ない器を感じる。
前線に送られた人身御供とはいえ、ザビ家としても体裁をつくろうつもりはあるのか、提出した要望はその殆どが採用されるそうだ。
特にドムの稼働状況の悪化は各地でかなりの陳情が上がっていて、設計変更が決定。それまでは防塵性能を強化したザクで凌ぐことに決定された。
MSの仕様変更については、ジオンはだいぶフットワークが軽い。これは独自に開発した高性能CAD/CAMシステムのお陰だ。
こいつにとりあえず必要なデータを打ち込めば、自動で計算して設計をこなしてくれる。
北米にはまだないが、意外にもそれほど場所を取らない奇跡の機械なので、統治が安定すれば宇宙から降ろしてここで使うことも可能なはずだ。
整備の人員強化と、整備用のMSも次の補給で送ってくれるとのことである。
いやあ、無茶でも言ってみるもんだね。
「オイ! なんでアタイのザクとオメェのザク交換しなきゃなんねぇんだよ!?」
ほくほくと先日の戦闘で破損したザクの脚をザニーのパーツとニコイチする作業をしていたら、キリシマ曹長が柳眉を逆立ててハンガーにやってきた。
なんかこの人、僕には口調や態度を隠す気がないようでいつもキレている。
一緒にいたシゲさんなんか面食らった顔してるぞ。このまえは「美人さんと同じ部隊で羨ましいぜ」なんて冷やかしてきたというのに。
「あーキリシマ曹長、ごきげんよう」
「あらごきげんよう。……じゃなくてなんでMS交換ってなってんだよ! とっと説明……していただけます?」
ようやく傍にいる人間が僕だけじゃないと気づいたようで急に裏モードからお嬢様モードに変化した。でも遅いよ。シゲさんはじめ、うちの整備隊員は皆残念なものを見る目になってる。
「曹長の機体は、鹵獲した連邦のパーツを使って直すって言ったでしょ。直せはするんだけど、やっぱりトルクとか違いが大きく出ちゃって機動力がガタ落ちするんだ。強度的にも白兵戦には向かないしね」
「あん? それで?」
「曹長、格闘するの好きなんでしょ? だからまだ損耗の少ない僕の機体に曹長が乗って、こいつは射撃戦用として僕が使うってわけ」
MS特有の戦術である、対艦ライフルなんかで後方からの機動狙撃ってやつだ。そのぐらいだったら間に合せの部品でも十分実用に耐える。
「まあ僕のザクは僕用にプログラミングしちゃってるから、後で自分用に調整しといてね」
銃器保持を安定させるためにあえて右腕肘の可動感度を下げてたりするからね。そのままだと格闘戦を挑むにはややしんどいだろう。
「今やれ」
「は?」
「だから、今やれ。すぐに」
え? 君の機体の調整僕がすんの?
「いや、僕はこれからこいつの修理を――」
と顔を向けたところにシゲさんがいて目があった。シゲさんは、いけいけ、とめんどくさそうに手のひらを振りやがる。
「いや、あの。調整と言ってもAIのパラメーターをコンソールから弄るだけだから、そのぐらいパイロットなら誰でも――」
「この私がやれと言ってんだ。早くしないと、しばきますわよ」
「
勢いに屈して、小隊の2番機へ。1番機は、ラムザット大尉のドムだ。3番機が、破損したキリシマ曹長の機体。
「で、なんで君も来るわけ?」
コックピットのコンソール前。シートに座ったところで何故かキリシマ曹長まで乗り込んできた。
ザクのコックピットはサイドイン方式を採用していて、左胸部から入り込んで、右胸部へと移動する。これは宇宙で使用していたF型の名残りだ。
宇宙では左側にあるエアロックを通って気密されたコックピットに乗り込む寸法。利点としては胸部正面装甲を厚くすることが可能だった。といってもたかが知れているが。
「狭いんですけど?」
「これがアタイのになるんだろ? 試乗がてらだ」
意味がわからん。調整を他人にやらせるなら自分は乗らなくていいだろうに。
ザクのコックピットは先の理由から意外に広いのだが、さすがに二人乗り込む用にはできていない。
邪魔なんだよなぁ。
なにが邪魔って、その、お胸がね。
彼女、僕の作業が気になるのかエアロック側から身を乗り出し、耐Gシートに上体を預けるようにしてコンソールを覗いてるんだよね。
そうすると、彼女のたわわが、僕の肩あたりにきてるわけです。
たゆんたゆんするのが横目に映ってしまって気が散る。とゆうかもしかしてノーブラなのかな? すごい揺れてないか?
案外僕も男の子なんだなぁ。
「おい、こんなんで機体の動作決められんのか? ……こほん。決められますの?」
「こんなんって……これ、パイロットなら必修ものなんだけどなぁ」
コンソールから各部のパラメーターを弄るのは誰もがやっている。MSは文字通り、宇宙服の延長として開発されたものだから、四肢の反応が登場者の感覚により近しい方がよい、という考え方のためだ。
ゲームでもオプションで、カメラの移動速度を自分好みに変えたりする。それと一緒だ。
「どうする? 基準値に戻すつもりだったけど、どうせなら機体の反応値を上げとく?」
格闘戦を好むパイロットはブースターや各部のトルクを過敏に調整することを好む。あまりやりすぎると動きがチグハグになって立っていられなくなってしまったりもするので注意が必要だが。
「あら、じゃあそうしていただけます?」
「はいはい」
とにかく居心地が悪いのでさっさと済ますことにする。
「設定できる最高値の2段階程前にしてある。あまり過敏すぎても歩けなくなるだけだからね。後は自分で馴染ませてくれ」
そう言って立ち去ろうとすると、彼女がさらに身を乗り出してきた。
「ほんとにこんなんで動き良くなりますの?」
と操縦桿に手をやる。仮起動だった機体が完全に起動状態へと移行する。
「ちょっと! せめて僕が降りてからにしてよ!」
「あん? いいだろ別に。手足の作動確認するだけですわよ」
身を乗り出したままのキリシマ曹長の双乳が顔や肩に当たる。わざとか? わざとなのか? 下手に動くと怒られそうで動けない。
「おおー前よりしっくりくるわ」
ハンガーに機体を固定されたままで、ザクは腕をぶんぶんと
振り回す。モニターには、驚いて資材を投げ捨て逃げ惑う整備員の姿が映った。
「もういいだろう! 曹長、危険だからストップ!」
「よし、ちっと駆け足してくっか! ペダルをお踏み遊ばせ」
「ねえ! 僕の話聞いてる!?」
「いいから早くなさいな!」
「だめに決まってんでしょう!」
「ちょっ! テメェどこ触ってんだ!!」
「不可抗力だっ! そんなもん押しつけるそっちが悪い!」
「いい度胸じゃねぇか! ぶっ飛ばして差し上げますわよ!」
こうして4、5分程やいのやいの言い合いしていたのだが、揉み合っているうちに、あろうことか外部拡声マイクをオンにしてしまったらしい。このやり取りはすべて外に筒抜けで、しばらくの間僕は、MSの中で女と乳繰り合った男、と不名誉な称号で基地に知られるのであった。
恥ずかしくて、こんなのしか書けなかった。