目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
ガンダム。
度重なる失態により、軍内での発言権を失いつつあった連邦宇宙軍が、起死回生の手段として開発した試作MS群の統括的名称である。
当機体は各連邦基地内にて幾つか製造されたものの、あまりにも高額なコストのために量産には至らず、結局平行して動かしていたGM計画によって生み出されたジムが量産機として採用される。
ハルト・ランガーが駆るこの『RX-78G4』もガンダムの名を冠する高性能機であった。
上官であり、第07独立機械化混成部隊の司令官であったホフマン・ボーウッドの手腕により、手に入れたもので、本来の『キンバライド襲撃作戦』で初陣を飾るはずであった。
本来はガンダム四号機として、北米オーガスタ基地内で製造されていたが、ジオンの襲撃作戦を察知したことで、ジャブロー経由でルナツーへと移送された。
そこで宇宙用実験機として改修を受け運用されるはずだったが、地上でのMS配備の遅延による宇宙軍の発言力の低下と、V作戦で開発されたRX-78-2が北米にて運用艦であったホワイトベースとともに鹵獲されたことによって、MS開発計画そのものが疑問視されたため、再び既存兵器の増強案が軍の内外で強く推されることになる。
そうした状況に対して、急遽開発していたG4を陸戦用に改造して地上へと降ろし、アフリカでの一大反攻作戦に投入する予定であった。
結果は、宇宙軍の自滅とジオンのMS単独大気圏降下による奇襲により、作戦自体が崩壊してしまったが。
ハルトが戦場に辿り着いた時、既にMS部隊は壊滅していた。
豪雨と炎の中に立つ、紅い機体。
その周囲には、仲間のMSが転がっている。
「たった一機だと?」
その
いや違う。ジオンのドムらしき残骸も見えた。しかし、わずかな機体で倍以上の数を屠ったのだ、眼の前の敵は。
ーージオン兵に武人はいても、軍人はいないと言うが。
この惨状に、ハルトは己が遅れたことをひどく悔いた。
G4本体のために開発された陸戦用ユニットの装備と調整に手間取ったのだ。
ただでさえ今時大戦の戦犯兵器――と陸軍は公言している――
であるMSを消耗品として使い潰すため、ろくな整備もなく前線に投入され続けた結果、先行するMS部隊のパイロットとメカニックはほとんどがいなくなってしまった。そのため、実装するのに時間がかかってしまったのだ。
またMS部隊において、生きた盾として使われることに反発した一部の兵が脱走を繰り返した。
占領したジオンの基地の酒保が非常に潤っていたことも原因のひとつだろう。
今次大戦において連邦は補給線をズタズタに断たれただけでなく、孤立した都市群の市民への救難物資供給も行わねばならなかった。
結果、前線では常に物資は枯渇気味であり、ハルト自身満足な糧食を口にしたのはだいぶ以前である。
特に嗜好品は絶望的であった連邦に対して、ジオンの倉庫にはそれらがたんまりと積まれていたほどだ。
防衛を放棄して逃げ出した陣地内では、士官らが酒盛りをしていた形跡まであり、ジオンは本当に戦争をする気があるのか、と首を傾げるとともに、仲間の中には自分たちが得られない嗜好品の数々を略奪することに固執する者すら現れた。
仲間のために、己の矜持のためだけに戦うことのできる人間は少ない。
結果、この寄合所帯ともいうべき部隊は敵陣地に深く入れば入るほどその人員を大きく削っていくことになる。
相次ぐ脱走、戦闘放棄による降伏――主に宇宙軍所属のMS隊が多かった――が相次ぐ状況に、部隊の指揮官は対策として、督戦隊を組んだ。
そのためハルトたちMS部隊は、理不尽と呼べるほどの損耗を強いられながら、後方からは仲間に監視され、逃げようものなら攻撃を受けることになった。
強引な作戦の決行により、すでに宇宙軍MS部隊は1個中隊ほどの数しか残らず、それが今眼の前で全滅した。
唯一の生き残りはハルトのみだ。
――どこで間違えたのか。
気の抜けない戦場、これから眼の前の敵と命のやり取りをするコックピットの中にいながらハルトは考えた。
戦いを望んだ。故にMSを欲し、大陸から退却する仲間のために囮となることをよしとした。
「……いや、考えるだけ無駄なことだな」
自嘲をこめてハルトは呟く。
戦争で失ったものを、戦争で取り返そうとした。
それがそもそもの間違いなのだ。失ったものは還らない。これはただ、戦場で死んだ自分の心への弔いなのだ。
モニターの向こうで、紅い敵機がゆっくりとこちらにモノアイを向ける。
漆黒の豪雨の中で、死神のようにその目は光った。
「行くぞ」
ガンダム・ストームブレイカー。
自分が欲し、ようやく手に入れた最強の力。死神が相手なら不足はないのだ。