目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第205話 Side『ストームブリンガー』

 

 雨とともに砲弾の降る戦場で、2体の死神の殺し合いは始まった。

 

 紅い機体(グフⅢ)と、灰色の機体(ガンダム)は互いの間合いを維持するために、相対しながら円を描いて走る。その様はまるで炎と灰が渦を巻いて舞っているかのようだ。

 

 仕掛けたのは、ハルトのガンダム(G4)だった。機体の腰部に装備したチェンジリングライフルより、赤い光線が迸る。

 

 偏差射撃によりグフの走行位置に向けて撃ったはずのビームは相手の胴体を捉える前に、急速にその勢いを失って拡散、消滅した。

 

 ハルトは舌打ちする。

 

「撹乱膜? いや、雨か!」

 

 メガ粒子の欠点として、大気中の水分により収束率が大きく低下、即座に拡散してしまうというものがある。収束率が低下すればビームが持つ熱エネルギーは極端なほどに失われる。

 

 余程の高出力――例えば戦艦クラスのメガ粒子砲――で撃ち出されたものならば別だが、この時代のビームライフルでは雨や水中ではその射程と威力を著しく減じてしまうのだ。

 

「これだから新装備というものは!」

 

 チェンジリングライフルは、G4の左右腰部に増設された専用のサブジェネレーターとコンデンサーユニットに、銃身を接続して使用する武装だ。

 

 ビームライフルはMSが携行する武装の中でもっとも強力であったが、携行弾数の少なさが課題であった。

 

 その問題を解決しようと作られた装備である。

 

 片方のコンデンサーユニットを使用している間に、もう片方でメガ粒子のリチャージを行い、片方を撃ち切ったら交感するという仕様だ。

 

 これにより左右合わせて30発以上のビームを撃つことができるが、腰部に装備している分取り回しは最悪であった。

 

「でっかい玩具じゃないのさ!」

 

 ノーランはお返しとばかりに、ガトリングシールドを向ける。

 

 撃ち出された弾丸はしかし相手を捉えることはなかった。

 

「機動力はドム並みかい」

 

 見るからに重武装の機体だが、ドムと同等以上の速度で動く。

 

 ジオンの技術は連邦の10年先を行く――これはジオン公国が世間に謳っているプロパガンダのひとつだが、実際はそこまでの差はない。

 

 事実、連邦のMSは後発ながら、その性能はどれも優秀である。前線の兵士たちの肌感として、ジオンとの技術格差などみじんも感じないほどだ。

 

 実際は、たしかに科学技術に差はあるのだが、ジオンにはそれを現場へと普及させるだけの財力と人材が不足しているせいであった。

 

 G4の右肩部に装備されたガトリングキャノンがグフに向けられる。

 

 G4は多対一(・・・)を想定して開発された機体である。

 

 背面武装パックは上下左右に振れるフレキシブルジョイントにて武装を懸架しており、左右それぞれの武装で前方広範囲の射角をカバーしていた。

 

 ノーランは相手の射線を反対方向に飛び退いて避ける。

 

 だがそこに、G4の120mm狙撃砲が撃ち込まれた。

 

 射角が悪かったせいで弾丸はグフの右肩を滑り、スパイク・アーマーを破壊したのみに終わった。

 

 追撃としてビームライフルが撃ち出されるが、軌道がずれ、ガトリング砲の尖端を凪いだ。

 

 グフはプラズマ熱による弾倉誘爆を防ぐためにシールドごと武装を破棄し、加速して距離を詰めた。

 

 G4は射撃武装は豊富だが、格闘武器はない――正確にはビームサーベルがあるが重武装の影響で扱いづらい――ため、後退して距離を取る。

 

「迂闊だよ!」

 

 グフの3連装35mmガトリング砲がG4の胴に突き刺さった。至近距離であればジムの装甲をズタズタに削り取るはずのその弾丸は、相手に傷一つつけずに終わる。

 

「嘘だろ!? 直撃だってのに!」

 

 ガンダリウム合金。

 

 連邦が戦前より研究していたもので、元はルナチタニウムをより安価に精製利用する研究であったが、その副産物としてより強度の高いチタン系合金が生まれた。

 

 ルナツーで産出されたガンマン・マグネットを用いて生み出されるこの合金は、宇宙軍が極秘で開発研究し製造したものである。

 

 G4の装甲は今時大戦において圧倒的な対弾性能を誇るが、着弾時の衝撃全てを緩和するわけではない。

 

 コックピットに伝わってきた衝撃に全身が揺さぶられ、ハルトは反撃もできずに後退するしかなかった。

 

「くそ! 相性が悪い!」

 

 G4は速度にて相手のMSを上回っているが、重装備のため加速力は低い。そして武装は中距離用兵装が主軸だ。このまま徹底的に距離を詰められると不利だった。

 

 そしてなにより、武装が多い分操縦難易度が高い。機体の反応値も過敏であり、まともに扱えるのはそれこそバケモノ(・・・・)ぐらいだろう、とハルトは感じていた。

 

 だが相性の悪さを感じているのはノーランも一緒であった。

 

 距離を離せば一撃でこちらを仕留めることが可能なビームライフルと狙撃砲。弾幕を張れるガトリングキャノン。そしてホバーの走行速度は向こうが上だ。

 

 射程と速度で負けている。

 

 唯一勝っているのは加速力だろう。距離を離せば蜂の巣なのだ。よってこの加速を生かして相手の進行方向を塞ぎ、最高速度に乗らないように制限する。

 

 近距離での射撃もあの装甲では駄目だ。むろん、武装を狙うなどすれば有効打となり得るはずだが、敵の頑強さは未知数でもある。

 

 そしてなにより敵の本隊が迫っているのだ。

 

 あと数分もしないうちにここは囲まれてしまうだろう。

 

 互いが互いに不利だと感じる戦場であった。

 

 

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