目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
ジオン増援の部隊が到着した時には、すでに基地は落とされていた。
キンバライド前衛基地の防衛――という名の時間稼ぎ――に現地徴用兵と、その戦果から疎んじられはじめた『第4MS機動分小隊』が捨て石のごとく置かれたことを知ったアフリカ機甲戦師団の指揮官であるデメジエール・ソンネン中佐は、怒りに任せ、部下を死地へと追いやったキンバライド防衛部隊の士官を殴り飛ばし、即座に救護の部隊編成を指示した。
とは言え、その行動は上層部が立案した深く陣地に招き入れて、航空爆撃による面制圧――マダガスカルが動かず、マプトも落ちた今、連邦南アフリカ方面にはまともな航空機を投入する余力がないことを見越した作戦だ――を否定する行為でもあった。
それでもデメジエール・ソンネンは軍命違反での降格を公然と受け入れる宣言をし、部下の救援を優先させた。
しかしながら即座に動かせる部隊は少なく、嵐によって航空部隊を展開させるのも難しかった。
よって、現場に比較的近く、脚の早いMT-07Bゲレを中心とした機甲部隊を先鋒として編成投入する。
臨時部隊の指揮官はデメジエール中佐の副官でもあるエイブラム・M・ラムザット大尉だ。
MT-06D ヒルドルブⅡが1輌、ゲレが27輌。彼の部隊が現地に到着したとき、すでに連邦は布陣を終えていた。
戦場の中心で擱座したグフは、敵MSと相討つ形であり、その状況から、砲火の中で孤軍奮闘したのは明白であった。
「故郷のために命を懸けたジオン兵の魂に報いよ!」とエイブラムが号令を発する。
仲間の壮絶な最期に感化された陸の群狼たちは士気高く、獲物に襲いかかる。
連邦の戦車部隊は68輌。そのうち28輌が、陸軍肝いりで設計開発され、昨年末になってロールアウトした新型MBT『M80A5MBT』、通称80式戦車である。
80式はジオンのMTとドムに対抗するために設計された車輌であり、前面装甲にルナチタニウムを使用した複合材を用いることでゲレの扱う170mm砲やドムのジャイアントバズーカの一撃にも耐えうる、強固な防弾性能を持つに至った。
主砲である220mm砲は61式戦車よりも減って1門だけになったが、火器管制システムの改良により速射能力が増大。
本格的なミノフスキー粒子下での戦闘を想定した戦車である。
熱核エンジンを搭載し、コストや技術面で開発こそされなかったが、メガ粒子砲すら搭載することも可能な車体なのだ。
数で勝り、しかも新型兵器の投入。これで勝てないわけがない、その自信が連邦の積極性を支えていた。
しかし彼らは知らなかった。
ここまでの快進撃は、全て動きを事前に読んだキンバライド防衛部隊司令部によって計算されたもので、肥大気味となった地球出身の非正規兵を都合よく間引きするためにあえて情報を与えず戦闘させた結果であったのだ、と。
だがいま彼らの前に立つのは、精鋭となるべく入念に訓練を施された本国からのジオン兵であり、軍人ではなく、
単騎であれども陣地を守ろうと奮闘した仲間の行動に触発され、その積極性に劣る点はなかったのだ。
夜明けを待たずして激しい砲撃戦が始まった。
ジオンは擱座したグフⅢの場所を絶対死守ラインとして、強引に前に詰めた。一方連邦側も戦術というものはなく、ひたすらに敵の防衛線を割ることだけに集中しており、両者ともに前進し、ぶつかりあい、戦力をすりつぶす戦いとなっていた。
ジオン側の主力であるゲレは、主砲では敵の盾となっている80式の前装甲を抜けないと見るや、その機動性で側面に回って撃ち抜いた。
だが連邦もキャタピラを破壊されて動けなくなった80式を壁として扱い、ゲレが得意とする乱戦を阻止する。時には擱座した味方ごと砲撃するほどだ。
だがそうした混沌とした戦闘も、夜明けを前にして終わりを迎える。
払暁とともにジオンのゾッド爆撃部隊が到着した。
嵐が去ったために、航空機を飛ばすことが可能になったのだ。
加えてゾッドは万能型戦闘機でありながら
特に空間戦闘機能を取り払い、代わりに地上・大気圏内戦闘適性を向上させた3型は整備された滑走路を必要としないだけでなく、サムソントレーラーの荷台といった、足場の悪い場所ですら離着陸が可能であった。
まさにジオン脅威の技術力の賜物である。
後続の先触れとしてやってきた8機の編隊は、敵後方部に爆撃を敢行、さらには、敵の陣地に空いた穴にSFSソールに搭乗してきた黒塗りのゲルググが3機降り立った。
そこからはジオンの蹂躙戦となる。
3機編隊のMSは、敵戦車の群れの中を泳ぐように走り回り、対応しきれない相手をビームライフルとビームナギナタで屠っていく。
陣形が瓦解したころ、ゾッドからの位置情報を受信した後続の
こうして連邦陸軍を主核とした2個師団による浸透作戦は失敗に終わった。
当初の目的であるキンバライドどころか、その前縁である防衛基地すら抜けずに全滅したのだ。
元々が玉砕覚悟のバンザイアタック――宇宙世紀に入ってからも、この言葉はある種のミームとして知られていた――でしかなく、上手くいくはずもなかった。
作戦を立案したはずの陸軍将校――ジャミトフ・ハイマン――
は戦闘時にはすでに消えており、正式な指揮官もいないままで兵士は作戦に従事していたことが、捕虜となった下級将校の言により発覚する。
とはいえ、当初の目的であったマダガスカルへの友軍の撤退は成功した。
撤退部隊はジオンの港湾基地を襲撃し、ユーコン級潜水艦を4隻奪取している。
ジオンのユーコン級は元々連邦の攻撃型潜水艦を改装したものであり、MSの輸送も可能なほど大型であった。
これにより撤退組はマダガスカルまで悠々と退却する。
これを知ったジオンは歯噛みしたが、もはやどうにもならなかった。