目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
准将から言い渡された別件とは、キャリフォルニア・ベースにて極秘に開発された新型を受け取ることだった。
アプサラスと同じで開戦当時に地球に持ち込み開発していた
MA−ZG01 『シウテクトリ』
南米アステカの火の神の名を与えられたそれを見た時、僕は思わず呟いてしまった。
「メタルギアじゃん」
いや、見た目が某ゲームに出てくる兵器にそっくりなんだよね。
右側面に装備された大型レールキャノン。左側にはカウンターウェイトも兼ねた大型のレドーム。くの字に曲がった二本の脚。
どこか恐竜じみた
うん、『メタルギアREX』ですね。
さらにこの機体の運用コンセプトは、新型ミサイルの高速運搬、大陸間弾道射出である。
その標的は連邦軍統合本部ジャブロー。
ギニアス技術少将からアプサラス計画が提出される前に立案された、ジャブロー攻略兵器群の一柱だ。
肝心の地中貫通式新型ミサイルがかなり大型になったため、大出力のレールキャノン開発に難航し、一時は開発凍結の話も出たとか。
それが連邦海軍から鹵獲した艦艇に使われているレールガンの解析と、僕らが抑えた
あの人、自分の興味があることに対してはかなり協力的なんだよね。「予算たんまりあげるからAIの技術研究させたげるから、ジオンに協力して」と頼んだら即応してくれた。
あと、極東を抑えたことで、ヤシマ重工の技術者をこちらに引き込めたのも大きい。
ヤシマ重工は連邦海軍の兵器群を主に開発していたため、極東太平洋側沿岸部に本社があり、先の隕石落としで工場のほとんどが大打撃を受けていた。
一方、月のグラナダ支社はジオンとは比較的友好的な関係を結んでいて、最初期のMSの携行火器用弾薬やムサイの副砲などを開発設計している。
開戦時にMSとムサイの情報をアナハイムと連邦に売ったよね? と圧――憶測でしかないけども――をかけて、地球であぶれた技術者を強引に雇い入れたわけだ。
こうして完成したMAだが、グラナダにてアプサラスⅣが完成間近である。
ビグ・ザムやビグロといった原作のMA群を製造してないせいか、ジオンの機動兵器の開発はかなり手早い。
今回のMAも正直要らないんじゃね? アプサラス2機あるし。
と思ったのだが、どうも地中の秘密工場をぶっ叩くために使うそうだ。あと、アプサラス開発から目をそらさせるためのカモフラージュ。
新型弾道弾を使ってジャブローを攻略するつもりだと思わせておくみたい。
連邦としては気が気でないだろう。
先日、ダカールが大気圏からの降下作戦で中央を電撃的に抑えられたし、マプトでは小規模な核爆発――あくまでも、MSの融合炉の事故ってやつ――もあった。
今度は大陸のどこにいても空から核に匹敵する破壊力のミサイルが成層圏から降ってくるのだから。
で、件の『シウテクトリ』だが、ミサイル実射撃試験として、旧カナダ方面の連邦軍山岳基地に実戦投入することが決定。
これは2週間後のジャブロー攻略戦に備え、後背の憂いを断つのが主目的だが、ミサイルの地中貫通性能を確かめる試験でもある。
なんかジオンの連中って基本的に実地試験でデータ集めたがるよね!
ってことでキャルフォルニアに着いたとたん、北のジオン守備陣地へ移動し、そっからさらに山岳地に入るという強行軍。
さらに到着早々、機体の調整もそこそこに夜間出撃である。
確かに僕は特殊遊撃部隊の人間だけどさ。人使い荒いなぁもう。
砲撃ポイントは前線の少し後ろ。
機体を操縦するのは、お嬢こと、フローレンス・キリシマ曹長だ。
なぜかついてきたんだよねこの人。
機体は二人乗りなのでちょうどよいとも言えるけど。
最初は海兵隊から参加したニードルくんがついてきたがったんだけど、ガルマ准将とゼクス大佐がそれを阻止。「特別遊撃部隊はガルマ・ザビの直轄であり、たとえ突撃機動軍司令の命であったとしてもその行動の是非を問われる必要はない」なんて強硬に突っぱねた。
実際は僕への視線を外したかったみたいだ。
ガルマ准将とゼクス大佐は、僕が
いざ、キシリア少将と対面張ることになったとき、切り札のひとつとしたいんだろうな。
この『シウテクトリ』は、近接戦を行いながら前線を押し上げて、敵の懐に戦術弾を叩き込むという役割を持っている。なので、基本操縦を格闘戦に特化してるキリシマ嬢が担うのは賛成なのだが、なんで巨大なミサイル抱えてる機体で前線でて
やっぱりジオンのやつらは頭おかしい。
「重ね重ねすいません、フィンゴ中尉」
戦場にて声をかけてきたのは、オリヴァー・マイ技術中尉だ。公立ズム工業カレッジを卒業、ジオン公国軍技術本部技術試験課に配属された、
「いえいえ、オリヴァー中尉には色々便宜を図ってもらってるからね」
彼は今、陸戦用G型装備のゲルググに搭乗している。僕らの直掩機件サブジェネレーター役である。
『シウテクトリ』のレールキャノンを使うには自前のジェネレーターだけでは電力が足りないからだ。
「ヅダについては、本当にありがとうございました」
ヅダ――ドム・デアフライシュッツのことだ。
土星エンジン2つ積みのあの機体は、名目上は今をときめくガルマ准将の乗機であり、ホワイトベースをろ獲した際、本人が乗込んでニューヤークの防衛作戦を前線にて指揮したことになっている。
嘘八百並べたカバーストーリーで、本来は准将の勇み足のせいで優秀なガウの搭乗員を幾人も失っているし、彼は実戦にてMSに乗ったことなどない。
それでもプロパガンダとして有用ならば、とガルマ准将は甘んじて受けることにしたようだ。
成長したなぁ、坊っちゃん。
「デュバル少佐はいい顔しなかったでしょう」
ジャン・リュック・デュバルは僕がザク開発に携わった時点からヅダキチと呼んでる御仁だ。
「ヅダは政治に消された」と公言してるが、いくら性能よくても限界迎えたら爆発するような機体、正式採用されるわけないじゃんよ。
「ヅダはゴーストファイターではないと、納得はしてくれたようですよ」
そう言いながらも通信の向こう側で苦笑する雰囲気が感じ取れる。
本国ではドムのバリエーション機として知られてるからね。
正直、ジオンでのヅダ系列はあれで打ち止めだ。他サイドに輸出用として『ゲーツ』を回しているからコピーからの派生機が生まれるかもだけど、あの設計では大した性能にならないだろう。
ドムも地上制圧したらいらなくなるかもしれない。一応、この戦争がさらに長引いた時のために新機種の設計をしてるらしいけども。
そこからは技術屋特有の、専門的な用語を交えた各機体の考察なんかに花が咲いた。
作戦中に不謹慎なんて考えもあるが、僕の仕事は目的地で照準合わせてトリガーを引くだけ。弾道計算はカスミ・キサラギ女史の組んだAI任せなんだ。
新型ミサイルも、南極条約ギリギリセーフの――いや、やっぱりアウトかもしれない――爆発規模のものだが、変な失敗すれば僕らを巻き込んでしまうだろう。
宇宙世紀に入ってロケット発射技術は飛躍的に伸長し、発射事故なんてのはそう起きるものではなくなったが、それでも万が一ということはある。
新型地中貫通式弾道ミサイルは、電磁射出するために外殻にチタン系複合素材を使い発射時の強度を高め、負荷に耐えられるようにしている。
推進剤を用いることはないものの、このミサイルは要は超高火力に改造したサーモバリック弾だ。
特殊な液体燃料を加圧沸騰、大気中に拡散させ爆発するもので、元のサーモバリック弾とは大きく異なり、その破壊力は戦術核に匹敵、中心半径ではその爆圧と熱で金属すら融解させてしまう。
この宇宙世紀において、俗にハイパーナパームなんて呼ばれる兵器である。
起爆剤を詰めた部位が電磁射出の負荷に耐えられずに損壊したら、その超火力とともに僕らは塵も残さず吹っ飛ぶわけだ。
あれ、だとしたら僕が派遣されたのはやっぱり体の良い厄介払いで、キシリア少将の手の内ってことかな?