目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第212話 Side『ZERO』

 

 南米の夏空は青く、高い。

 

 UC.0080、3月。ジオンによるジャブロー攻略戦は、払暁と同時に始まった。

 

 連邦がこれまで定期便(・・・)などと揶揄して嘲笑った類のものではない。

 

 突撃機動軍北米方面軍の半数と、ルナツーを抑えた宇宙軍の混成からなる大部隊による本格的な軍事作戦である。

 

 この作戦に投入されたMSは128機。それだけで、ジオンの本気が伺えた。

 

 ジオン上層部はこの一戦でこの大戦の決着をつけようというのだ。

 

「目標ポイントに間もなく到着。降下準備せよ」

 

 南米の上空。オペレーターである女性士官の指示が、航空輸送機兼指揮管制機である『シームルグ』のMSコンテナに響く。

 

 実直ではあるがいささか固いオペレーターの声とは対象的に、柔らかな女性の声が続いた。

 

「つくづく地球はおかしなところね。ニューヤークは寒かったのに、南米(ここ)は夏だそうよ」

 

「そんな石ころの上で我々は戦争をしているのだよ」

 

 MSのモニターに送られてきた地上の映像を見ながら、ゼクスは返した。

 

「悪いわね。かなり対空の密度が高いわ。これ以上高度を下げるわけにはいかない」

 

「構わんさ。むしろここまでの牽引に感謝する」

 

『シームルグ』はキリー少佐がまとめるノイジー・フェアリー隊専用の空中移動拠点として製造されたものだ。それを今回の『閃光の伯爵(ライトニング・カウント)隊』の作戦に合わせて徴用する形となったのだ。

 

「下で、うちの子達(・・・・・)に会ったら、フォローしてやってちょうだい」

 

「来ているのか?」

 

「オーガスタまで、例の兵器(・・・・)を護送して、そのまま海路で上陸してるはずよ」

 

「今更だが、指揮官不在でよかったのか?」

 

「平気よ。うちはリーダー含めてみんな成長著しいもの。何も心配なんてしてないわ。貴方の部隊(ところ)もそうでしょう?」

 

 ゼクスの率いる『閃光の伯爵隊』は、このジャブロー攻略戦において隊員がそれぞれ別の作戦に従事している。

 

 ニムバス・シュターゼン大尉とマリオン・ウェルチ少尉は、地下水路からのジャブロー侵入部隊の援護。

 

 オルド・フィンゴ中尉とフローレンス・キリシマ曹長は、新型弾頭によるジャブロー地下工場の破壊だ。

 

「私は指揮官としては未熟でな」

 

 その言葉には自嘲めいたトゲがあった。

 

「あら、貴方も政治を覚えなさいな」

 

 対象的にキリーには余裕が感じられる。

 

 この『シームルグ』も、彼女の手腕によって手に入れたワンオフ機であり、それができるだけの実力と自信が彼女には備わっているのだ。

 

「残念だが、私は一戦士としての才しかない。つくづく運のなない男だ」

 

「これは友人としての忠告。少しは周りに頼りなさい」

 

「フッ……そうだな。仲間には恵まれている」

 

「作戦時間です。私語は謹んでください。降下10秒前。コンテナ開きます」

 

 オペレーターの冷静な声とともに、コンテナが開く。

 

「彼女、副官として優秀ですね」

 

 今まで黙っていた、ルクレツィア・ノイン大尉が呟いた。

 

 その言には明らかに特定の人物(・・・・・)と対比した感想が滲み出ている。

 

「ノイン、私は初めから君を隊の副官として信頼している」

 

「私の立場は階級的なものでしかないでしょう。実質はあの男が副官では?」

 

 彼女の珍しい不満の暴露をゼクスは好ましく感じて笑った。

 

 確かにあの男は様々なことに目端が効き、行為全てが上手くできている。

 

 だが、規格外すぎるのだ。

 

「アイツは友人としてはよいが、隊を任せるにはいささかな。私も部隊運用は苦手だ。だからこそ君が背中にいてくれることが頼もしい」

 

「そう言ってくれると、報われますね」

 

「……大佐と大尉。イチャつくのは止めにしてもらえますか? 降下のカウントダウン過ぎてます」

 

 呆れ返ったオペレーターの通信に、ゼクスは苦笑するしかない。

 

「失礼した。ゼクス・マーキス、『ライトニング1』これより降下する」

 

 白いゲルググと白いドム。

 

 ドダイSFSに乗った2機は、戦火で煙る南米の空へ出陣した。

 

 

 

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