目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
息が詰まる。
対空砲火を掻い潜り、密林に降り立ったゼクスが感じた感想である。
戦場の興奮や緊張というものではない。
ドダイSFSに騎乗したゲルググJのモノアイから映し出された眼下の光景によるものだ。
どこまでも続くような青い空と海。そして鬱蒼としたジャングルの緑。遠くで霞む地平線。目に映るその光景が、モニター越しだというのに、むせ返るほどの濃密な空気を感じさせる。
それら全てがなぜか自分が故郷に帰ってきたのではないか、という錯覚を与えてくるのだ。
広大さというのなら、コロニーの外である宇宙の方が圧倒的
であるし、自然の豊かさなら、農業プラントコロニーや動植物保全コロニーの方が圧倒的に上のはず。
だがここには、管理されたわけではない、誰のためでもない自然が恐ろしいほどの密度で広がっている。
その事実が、ゼクスの五感を揺さぶったのだ。
――「地球の重力に魂を惹かれた者」
学生時代、友であったシャアが口走った言葉を思い出す。あの言葉の意味は、こういうことであったのかもしれないと感じた。
「ノイン、行けるか?」
「はい。機体、装備共に問題はありません」
ゾーリとソールが完成し、宇宙軍に配備された今、試験機であったドダイは廃棄が決まったため、今回の作戦で使い潰すことになった。
ドダイに搭乗して降下。連邦の砲台に向けて吶喊させ、それを囮にMSは自由落下で上陸を果たす。
使用されている対空砲火が旧式のもので助かった。
連邦の大艦巨砲主義によって造られた大口径の砲台は、自由落下する物体を空中で正確に捉えることはできない。これが高速なメガ粒子砲であったなら、地面に降り立つ前に撃墜されたことだろう。
「よし。ビーコンを」
「了解」
ノインの搭乗するドムは、キャリフォルニアの工廠で組み立てられた、最新型ドムの試験タイプであり、ドワッジと
今回の作戦のために新造された、ディスクタイプのビーコンを収納したコンテナが腰背部に据え付けられており、その分立体的機動に影響が出てしまっている。
ドワッジはビーコンを手に取ると、それを地面に置く。マニュピレーターから離れた円盤状のそれは、わずかに振動してパイルを突き立て、赤いランプを灯らせた。
ゼクスたちの作戦は、この特殊なビーコンをできうる限りの数設置することだ。
しかもこれらすべてはダミーである。
必要なビーコンは一つのみで、それはすでに先発潜入部隊によって設置が完了しているはずであり、彼らと合流し、連邦の秘密工廠の場所を発見することが目的であった。
ビーコンは、本作戦で使用される特殊弾の誘導補佐装置であり、管制機であるシームルグと連携して、砲撃座標をオーガスタで待機する友軍へ送るためのものである。
発見した秘密工廠を、その弾頭にて一気に殲滅するというものだ。
そして同時に、その作戦がジャブロー攻略戦の本命であると匂わせるために、あえて目立つ必要があった。
故にゼクスとノインの機体は、部隊カラーである白により統一され、密林迷彩など施してはいない。
ジャブロー攻略は北米軍が主導であり、エース部隊としてジオンと連邦双方にて名の知れた『閃光の伯爵』が前線に出るからこそ、強い陽動として働くというガルマの裁断である。
二人は敢えて敵に姿を晒しながら、ビーコンを設置していく。
ジャブロー防衛のほとんどが対空迎撃用の自動化砲台であり、それ以外は旧式の61式と就役したばかりの80式戦車の混成であり、その性能差から足並みも揃っていなかった。
「MSは……出ませんね」
ノインが思わずといった調子でこぼした声を、近距離通信が拾う。
「連邦陸軍はMSを毛嫌いしてると聞く。そうした状況もあるのだろう」
新型戦車の80式は機動力、攻撃力、装甲と侮れない性能であったが、数は多くない。濃度の高いミノフスキー粒子と密林の中では、高速で立体機動をとるMS相手に遠距離砲撃もそう有効とはいえないのだ。
とはいえど油断はできない。各所に設置された近接防御火器には大口径砲もあり、直撃すれば重MSとて致命傷は免れないのだから。
「ノイン、
「もちろんです」
会話しながらも、ゼクスは砲台にビーム光弾を浴びせ黙らせる。
「ビーム・マシンガンとは言うが、こう長砲身では密林にて使いづらいものだ」
新型の武装に苦言を呈しつつ、前方に見えた80式の部隊に乱射。
ペレット状の光弾は一発とて外れることもなく全て敵装甲を貫き沈黙させた。
「射程はあるな」
出力を高めればビームスナイパーライフルとして使えるという新型武装だが、その分全体が大型化してしまっており取り回しが悪い。
「私のMMPを使いますか?」
「いや、こちらにも予備はある。それよりクリアリングは済んだ。次のビーコンを――」
その時、機体の動体センサーに、新たな敵を知らせるランプが灯った。