目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第214話 Side『ZERO』

 

「囲まれてます!」

 

 ノインの鋭い声。

 

 ゼクスとしても舌打ちしたい気分であった。

 

 敵影は6体。こちらの三倍の数だ。

 

 ここまで近距離に近づかれるまでセンサーに反応がないとは。相手はステルス機であろうが、だとしてもまちがいなくこちらの警戒を抜けるだけの手練れだ。

 

 正面の泥色の川面が盛り上がり、そこから奇怪なシルエットが現れる。

 

 咄嗟に銃身を構えたが、同時にコンピューターが友軍の識別コードを拾う。

 

 CG解析が済み、モニターに表示されたのは、緑と茶の迷彩が施されたMSだった。

 

 MSM-07E アッガイ。

 

 ゼクスが事前の資料で見た水陸両用MSだ。

 

 装甲表面にミノフスキー粒子下にて高い性能を発揮するステルス機能を持たせ、駆動音なども極力抑えた隠密機体。特別ユニットを装備することで、パイロットは長期間の潜伏任務を行える。

 

「アッガイ――友軍か」

 

「いえ、ここは敵地です。油断はできません」

 

「いや、先方に敵意は感じない。それにこの機体はな――」

 

 眼の前に現れたアッガイは隊長機であり、頭部に鶏のトサカのごとくセンサーカメラが突出している。そして肩だけが青く塗られていた。

 

「こちら826部隊、『青い巨星(・・・・)』友軍と見受けるが、そちらの所属を問う」

 

「こちらはニューヤーク第1機動小隊特務遊撃部隊の『白光(ホワイトライトニング)』。久しぶりですなランバ・ラル大尉」

 

 モニターに映し出された、壮年の男にゼクスはヘルメットのバイザーを上げ、親しみの笑みを浮かべる。

 

「教導訓練以来かゼクス。いや、貴殿はすでに大佐でしたな」

 

「以前と変わらず結構ですよ、ラル大尉。月ではガイア大尉に同じ言葉を吐かれました」

 

 ランバ・ラルが意外そうな表情を浮かべた。

 

「貴様は笑うようになれたか。地球での生活がそうさせたか?」

 

「どうでしょうか。私は私でしかありません。それよりも、大尉はなぜここに? 合流地点はもっと先のはずでは」

 

「その説明はしよう。だが、その前に目的の情報を共有したい」

 

 送られてきたデータにゼクスは目を通す。

 

 連邦地下秘密工廠の進入路と概要、見取り図であった。

 

「詳細なデータだ。だが、待て……これは」

 

 添付された画像は、監視カメラの一場面を切り取ったものか、やや不鮮明ながらもそこにいくつものミサイルが並べられている様が映っている。そして、その一画には核物質を表す表記があった。

 

「核ミサイルか!? しかもこの数は――」

 

「小型も含めて147本が貯蔵されているそうだ。核ならばこちらの地下爆撃での誘爆はないだろうが……問題は次の資料でな」

 

 そこには山の中腹に大掛かりな砲台があった。射出口らしきものだけが山肌に見えている。

 

「これは……マスドライバーか?」

 

「レールキャノン。アフリカキリマンジャロにあったものと同じ型のもののようだ」

 

 ゼクスの中で情報(ピース)が合わさる。

 

「すでにいくつかの核が運び込まれているらしい」

 

「狙いは北米か」

 

 核ミサイルが超音速で射出可能だとすれば、ジオンに迎撃できるだけの力はない。

 

 射程がどの程度のものかはわからないが、北米圏全土を焦土にするのも辞さないのだろう。

 

「これらの資料を届けてくれた内通者によると、我らの地球降下作戦に合わせて陸軍が敷設を始めたらしい。最近になって完成したようだ」

 

 ラルの言外に、内通者が高い地位にいる者であり、陸軍とは相容れない立場の人間であることをゼクスは推測した。でなければこれほど詳細なデータを集めることはできないだろう。

 

「南極条約は無視するか。しょせん条約は条約でしかない」

 

「目的のビーコンは設置が終わっている。だが、少々問題があってな、こちらまで下がってきたというわけだ」

 

「問題とは?」

 

「こちらには100名ほどの民間人がいる」

 

 その言葉にゼクスは思わず眉をしかめた。

 

「現地民か」

 

 ラルが率いる特殊部隊は、現地でゲリラ活動をする人間と接触し、ジャブローへの入口、秘密工廠の場所を探す任務を帯びていた。

 

「我らのジャブロー侵攻が始まったと同時に、連邦がゲリラの秘密集落を襲撃してきてな。そこで女子供だけでも脱出させて欲しいと頼まれたのだ。彼らには目的地を探すのに大きく貢献してもらった。無下にはできん」

 

「そうだな。保護した民間人は?」

 

「河をいく舟と、我らの武装用コンテナを改造して乗せている。ビーコンは既に置き終わっているからな、人を乗せるスペースはある」

 

 事情を聞くとかなり追い詰められた上での決断だったようだ。

 

 連邦はこちらの作戦行動を察知したわけではなく、レールキャノンへの核弾頭移送に際し、ゲリラの秘密集落が邪魔であったために狙ったようであった。

 

「襲撃してきた連邦の数は少なくない。MSは20機ほど。車両も20は確認している」

 

「核はすでに運び込まれたと見るべきか」

 

 あれだけの数の核ミサイルを立て続けに撃ち込めば、ニューヤークどころか北米は人の住めぬ不毛の地となるだろう。

 

「ノイン――」

 

「私も行きます」

 

 間髪を入れず返答があった。

 

「私は、貴方の行く場所ならどこへでもついていくと決めて、この戦場に立っています。だから……」

 

「わかった。ラル大尉、レールキャノンまでのルートは?」

 

「ゲリラの集落を抜けて南東に向かうのが一番早い。ドムやゲルググの脚なら、2時間もかからんだろうな、だが――」

 

「連邦の抵抗があるか」

 

「それ以外では、河川をいくつも渡らねばならん。当然重要拠点の防護として大掛かりな機雷が敷かれているし、防衛要塞も数がある」

 

 選り好みしている余裕はないとゼクスは判断した。

 

「了解した。大尉、貴殿はそのまま脱出ポイントまで下がってくれ」

 

「……すまない。ゲリラには世話になった。義理を通したい」

 

 心底すまなそうにラル大尉は渋面を作る。

 

 だが、実際問題として彼らのMSが白兵戦に役に立つとはゼクスには思えなかった。あくまでも隠密機なのだから。なにより足回りが違いすぎ、ゲルググとドムの速度に追いつかない。

 

「大佐。せめてそちらの武運を祈ります」

 

 敢えて格式張った口調とともにモニターの向こうで敬礼する大尉に、ゼクスは敬礼を返した。

 

 

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