目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
1週間前――。
「オルド中尉からの届け物だとか?」
整備士を取りまとめているケイ・ニムロッド技術少尉とチバ・シゲ曹長は、ゼクスの言葉にどこか含むような表情を見せた。
「MSの性能を向上させるものとメールで聞いたのだがな。届いているのだろう」
「いやまあ、届いちゃいるんですがね。大佐のゲルググに組み込むのに躊躇いがあるというか」
いつものチバ・シゲにしては、あまりにすっきりとしない物言いである。
ケイ・ニムロッドも悩むような表情のまま口を開いた。
「届いたのは、MSの挙動制御装置……って言えばいいのかね。ざっくり言うと、機体のリミッターを解除した上でさらにパイロットに適切な戦術プランを常に提供する、とは仕様書に書いてあった」
「何が問題か?」
「たくさんありますわな」
チバがため息をつく。
「組み込むことはできるんですよ。ゲルググの頭部バルカン部を外して、その空いたスペースにぶち込んで、後は制御コンピューターに繋げてやればいい。2日もありゃ終わります。次の作戦までにゃ間に合う」
「ただ、これ作ったの連邦なんだよね。大佐も会ったことあるだろ。極東のあの――」
カスミ・キサラギ。
連邦の技官であり、地球連邦軍技術開発局極東支部にて、局長を務めていた女。
優秀なAI技師であり、現行の連邦製MSの制御AIの基幹を作ったのも彼女であると、ゼクスはオルドから説明を受けていた。
ゼクス自身、彼女を見て感じたのは連邦への忠誠心や愛国心よりも、自分自身の知に対する信頼が勝っている人間であり、オルドと同じ部類の人種だと判断していた。
「
「敵であったことにゃかわらないよ。まあ、確かに優秀な技術屋なのは確かなんだろうがね。光集積回路によるAIの構築なんて、ジオンじゃ10年研究してもできなかったろうさ。AI技術に関しては、連邦の方が圧倒的に先を行くね」
だがまだ問題があるのだとケイは続ける。
「こいつを起動するには、戦闘中でないとならないんだとさ」
どういうことだ? と訝しむ視線を向けても、ケイもチバも肩を竦めるだけであった。
「なんでも、このシステムは『搭乗者のスウェッセム因子』? ってのを擬似的に増幅させるんだそうだ。それに合わせて機体のリミッターを解除して、高い戦闘力を生む。そのなんとか因子ってのは、戦闘中がもっとも活性化するので、戦闘中じゃなきゃこのシステムは動かないってことらしいね。オルドが言うにはね」
『スウェッセム因子』聞いたことのない言葉だ。だが、ゼクスは極東でオルドが見つけた通称『黒い箱』を思い出す。
彼の言では、あの中には過去現在未来の技術知識が詰め込まれているのだという。
あまりに荒唐無稽な代物。そしてそれにアクセスできるのはオルドだけであった。
今回の届いたそのシステムも、それを用いて作られたのかもしれない。
「さらにこのシステム、起動したら一旦は大元の制御システムを落とさなきゃならない。根幹の仕様が違うからね。」
「起動にかかる時間は?」
「仕様じゃ8秒。戦闘中じゃないと起動しないってんで、事前テストもできないんだよ。アタシも技術屋だけどね、オルドみたいな博徒じゃない。完成された機体に欠陥品ぶち込むなんて暴挙は避けたいね。戦闘中にMSのOSを落とすなんて、自殺志願者としか思えないよ」
「なぜそんなものをオルドは送ってきたのだろうな」
「んー、なんでも副次作用として、当システムを導入した機体間で、遅延や妨害のないイメージによる通信が可能なんだとさ。それも『スウェッセム因子』ってやつのおかげらしいが、眉唾もんだね」