目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第220話 Epilogue『フリー・トゥ・ブルー』

 

 ジオンが総力を挙げて行ったジャブロー攻略作戦は、わずか4日という短期間の内に連邦側が降伏することで決着した。

 

 もともとジャブローに立て籠もったのは、陸軍と宇宙軍の中でも過激派――スペーシアンを徹底的に弾圧、殲滅すべしという思想が蔓延した――が中心であり、連邦政府はすでに首都ダカールを取られた時点で正式に降伏と戦闘の停止宣言をしていた。

 

 つまりジャブローに居座る軍は、テロリスト軍であるとの認識である。

 

 元陸軍の将官でもあった副首相が立て篭もり発足した臨時政権であったが、彼らの思惑とは異なりジャブローは無敵の要塞ではなかった。

 

 これほどまでにジャブローが脆かったのにはいくつか理由がある。

 

 一つは、ジオンが投入した攻略用兵器群。

 

 ルナツーを完全に制圧したジオン宇宙軍は大気圏から、SFSソールでもってジャブローへのMS直接降下を行った。

 

 さらにその中にはギニアス・サハリン少将が設計開発した、アプサラスⅢとアプサラスⅣが存在する。

 

 大気圏外から飛来した2機の天女(モビルアーマー)は、開発思想通りの火力を地上に向けて振るう。

 

 大出力のメガ粒子砲は地面を結晶化させても止まらず、耐核シェルターすら容易に貫いて、地下基地群を焼き払った。

 

 連邦にとって肝心の防空兵器は、空軍が開発したコアイージーであった。高速高高度飛行が可能な万能戦闘機であったが、主兵装であるメガ粒子砲はアプサラスのIフィールドに阻まれ、ソールに乗ったMSは、彼らが装備した対ビーム用シールドによって対策されており、決定打を与えるに至らなかった。

 

 コアイージーはこのジャブローにおいて140機を超える機体が可動できる状態であったが、その半数は真っ先にアプサラスのメガ粒子砲によって発着路ごと格納庫を破壊されてしまった。

 

 これは後述するジャブロー内設備のリークによるものであり、急所とも呼ぶべき場所はジオンにとっては既に明らかになっていたのだ。

 

 ミノフスキークラフトで空に浮かぶ彼女(アプサラス)たちと、護衛であるMSとゾッドの大群によってクーデター軍は制空権を完全に奪われた。

 

 もう一つは、連邦政府高官たちによってジャブロー内の情報がジオンにもたらされたことによる。

 

 ジオンは降伏した連邦の政治家――与し易い高官に限るが――たちに、彼らの既得権益の保護と連邦政府の在続を容認することをほのめかした。

 

 あくまで空手形(ほのめかし)であったが、戦中に彼らが行った非合法な手段によって集めた財貨の見逃し、非人道的手段による徴兵、徴収は軍の独断とする(・・・・・・・)という言葉に誰もが飛びついた。

 

 こうしてジャブロー内の構造はほとんどが丸裸となり、秘匿されていた入口のいくつかからジオンは内部潜入が可能となった。

 

 テロリスト軍にとって誤算――というより過信していた――だったものはまだある。

 

 ジャブローの地上防衛設備群だ。

 

 これらの重火器はコンピューターによる自動化制御が成されており、対空対地、近接防御を密に行えるはずであった。

 

 事実これまでのジオンの空襲――ガウやゾッドによる爆撃――は一定高度以下までちかづけさせず、現地上陸も阻止できていた。

 

 しかしそれはジオンの偽装行動であり、今作戦では近距離で高濃度で撒かれたミノフスキー粒子により自動迎撃システムがまともに作動しなかった。

 

 ジオンは本格的な攻略作戦を行なうまで、迎撃システムが不調となるほどのミノフスキー粒子の散布を行わなかったのである。|(正確にはできなかったといってよい。空中での散布は霧散しやすく、その効果が薄い。MSの降下の必要がない爆撃だけですませたため地上散布を敢えて行わなかったのである)

 

 むろん連邦とてミノフスキー粒子の特性を忘れていたわけではなく、可能な限りの対策を行っていたが、全ての防御火器を対応させることは不可能だったのが災いした。

 

 そして半減した兵装では、ジオンの物量に抗えしきれなかったのである。

 

 ジャブローは難攻不落の城であるという信仰が招いた、ある意味人災でもあった。

 

 特定の思想に染まった人間は、その思想が掲げる理想に対して盲目になる。

 

 これまでが平気であったのだから、次も――という楽観論がまん延していた結果であった。

 

 さらには連邦軍内部での足並みの悪さがあった。

 

 宇宙軍と陸軍でともに予算を取り合った結果、MSと新型戦車ともにパイロットの増員と養成は間に合っておらず、兵器はあれど人員は足りていなかった。

 

 宇宙軍と陸軍の不和は当然として、その中にも過激派と穏健派と大別して2つに分かれていた。

 

 とくに過激派は元レビル派が多く、未だに自分たちの復権を望んでいた。

 

 彼らは最大の攻略目標である北米を叩くため、核ミサイルを発射可能なレールキャノンを開発、設置する。

 

 かつてアフリカ・キリマンジャロベースにあったものを遥かに超える大型のレールキャノンで、10分に1発の大型弾道弾を発射可能な代物。

 

 地下に貯蔵していた60発の核ミサイルを運び込み、それをもって北米を死の土地に変える算段であった。

 

 後年、歴史家に指さされる虐殺行為となるであろうが、負けるよりはいい。なにより、この戦争は大量虐殺|(隕石落とし)から始まっており、いまさら一般市民が無差別に巻き込まれることなど彼らは気にもとめなかった。それどころか、「焦土にしてしまえば統治しなくてよい分、楽であり、増えすぎた人口も減らせる」と将官の中にはうそぶくものさえいた。

 

 こうして秘密裏に製造されたレールキャノン発射装置であったが、それは歴史の表舞台に立つことなく業火の中に消える。

 

 オーガスタ基地より発射されたバンカー型ハイパーナパームによって施設もろとも吹き飛ばされ灰燼に帰した。

 

 クーデター軍が核でもって北米を焦土に変えようとしていたということと、レールキャノンに対応した核兵器を連邦が開発していたという事実は、ジオン軍上層部の心理を甚だしく凍えさせた。

 

 この件を公表することは、戦後において連邦を『人類の意思決定統合体』として存続させることを見込んでいた上層部にとって都合が悪い物であった。

 

「悪虐な連邦は駆逐せよ!」といった過激な思想が若者を中心に各サイド間で台頭してきており、そうした声を継戦意志の動力源としていたジオン外交部は、ここに来て難しい舵取りを迫られる時期となっていた。

 

 これ以上のサイド世論の炎上を危惧し、この情報は最上級秘匿情報として徹底的に隠蔽されることになる。

 

 秘匿されていたはずの発射施設を失い、打開の一手も失った連邦残党軍はそれでも頑迷に戦ったが、宇宙と北米から補給を受けるジオンの物量と、圧倒的攻勢に抗えしきることはできなかった。

 

 新政権を掲げた副首相が複数の側近とともに自決を行ったこと。陸軍および抗戦派宇宙軍派閥によって半ば軟禁されていたゴップ大将がジオン潜入部隊によって救助され、即時停戦、無条件降伏を宣言することで、ジャブローでの激戦は幕を閉じた。

 

 開戦より1年少し。

 

 故に、今次大戦は後の世に『一年戦争』と呼ばれることになる。

 

 

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