目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
名前間違えてました。
修正しました。
戦車兵教導団――国防軍発足以来、優秀な戦車乗りを集め、戦術の開発、訓練、演習の支援を行うことを主目的とした部隊。
そこが俺のはじまりだった。
軍学校での教練を終え、配属されたその部隊で、天才と出会う。
デメジエール・ソンネン。
当時は自分と同じ少尉だった。
戦場では厳しくもあるが、それでも後輩への面倒見は良く、その技術と知見の高さから人望があり、彼の教えを受けた隊員はみな尊敬の念を抱いていた。
入隊が同期ということもあり、俺と彼はすぐに打ち解け、連邦の反ゲリラ掃討戦に従事し、供に戦った。
親友と呼べる存在であったと思う。
「お前になら背中を預けられる」
半ば茶化すように互いにそう言い合ったこともある。
すべてが狂ってしまったのは、0072年に始動したモビルタンク計画のせいだろう。
その技術と経験を高く評価されたソンネンは昇進を重ね、この計画で開発される超弩級戦車ヒルドルブのテストパイロットとして選出された。
ヒルドルブの開発目的は来たる連邦との地上戦を見据え、要塞や陸上戦艦などの戦術目標を攻撃するというものだ。
このヒルドルブが完成すれば、戦車兵が戦場の中核となる。俺も奴も、そう信じていた。
だが2年後、ザクⅠがロールアウトすると、すべてが狂いだした。
上層部は新しい兵器であるMSをジオン独立における闘争の要とし、汎用性に欠けるMTを不採用とすることを決定したのだ。
すべてを賭けていたMTを不要とされ、MS転換試験にも落ちた彼は自暴自棄になり酒浸りの日々を過ごす。
心身を壊すほどの生活環境に、俺も苦言を呈したが、返ってきたのは「裏切り者め!」という罵倒だった。
俺自身は転換試験に受かり、MS教導団への入隊が決まっていたからだ。
「時代に取り残されたロートル」
これまでの賛辞は嘲笑へと代わり、彼は頑なになった。そして俺も、彼のもとを離れる。
そんな中、ジオンは連邦に独立戦争を仕掛ける。
戦場の主役は予想通りMSへと移り、MTの出る幕はないものだと俺は感じていた。
だというのに、ある任務を命じられる。
「試作MTの受領……ですか?」
「そうだ」
上官であるゼクス少佐から告げられた内容に、思わず硬直してしまう。
「YMT-05ヒルドルブ。先日これが再評価試験の名目で地球に降りていてな。実態は試験と銘打った使い潰しだろうが、こちらを我が大隊でパイロットごと引き抜くことになった」
「パイロットごと……デメジエール・ソンネン少佐ですか?」
「ああ、よく知っている。そうか、君は大戦前は戦車兵教導団の出身だったな。見知った者なら気も楽だろう。何か気になることがあるか?」
俺と彼の確執を知らないのだ、ゼクス少佐は。
「はい。少佐。ヒルドルブ……中止となったモビルタンク計画の産物です。それを何故また?」
「地球降下後、上層部の空論では想定されなかった戦況が相次いでな。それに伴い、大掛かりな既存兵器の見直しが計画されている。ヒルドルブは、一旦こちらで預かってから、アフリカ方面にて再々評価試験を受けるということだ」
少佐は言わなかったが、おそらくこれには我が隊のオルド・フィンゴ中尉が関わっているに違いなかった。
一見すればまだ少年にも見えるあの男は、この数日でいつの間にか司令官であるガルマ大佐に取り入り、何かと意見を述べているようだ。
前回も整備にMSを強請り、補給時にそれが届いたことで整備班と歓喜していた。
「不満か?」
思考が顔に出てしまっていたようだ。
「はい、いいえ少佐。そのようなことはありません」
「大尉からすれば、私のような若輩から指図を受けるというのは面白くないかもしれんが」
「そのようなことはありません。私も軍人です。命令には従います。すべては祖国のため」
「そうか。すまんな。それと大尉には極秘でこなしてもらいたい任務がある」
「私個人に、でありますか?」
少佐はやや苦いものを含んたような顔でうなずいた。
「オルド・フィンゴ中尉の監視だ」
「中尉の?」
「彼は数少ない地球環境経験者として、この北米作戦部にも臨時で呼ばれ、積極的に献策を提案している」
「なるほど、そういうことですか」
彼の表情と、内容だけで理解した。
スパイを疑っているのだ。
地球で生活したことがあるというのなら、その時に連邦と接触があってもおかしくない、そう考えたのだろう。
「つまらん派閥争いだ」
少佐は嫌悪感を隠そうともしない。やはり若者らしく、己の意志に潔癖なのだろう。
「私個人は、彼をそのようなものだとは思っていない。あくまでもカンでしかないがな」
「ですが、スパイは信用させてから……とも言います」
「そうだな。万が一ということもある。ヒルドルブの受領は現地まで赴いてもらう。先日届いたギャロップの慣熟航行も兼ねたものだ。その間だけだ、よろしく頼む」
「はっ! エイブラム・ラムザット、了解しました」
敬礼し、その場を立ち去った。
だが、気持ちは決して晴れなかった。