目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第228話 Side『マインド・エデュケーション』

 

 フィフス・ルナの発着場に降りると、隣りにギレン・ザビ専用ムサイ級戦闘艦『グランツガルテン』の姿があった。

 

 旧世紀のドイツ語で、『輝く庭』という意味だ。

 

 なんだ? ギレン・ザビは庭師にでも成りたかったのかな?

 

 なんて考えていたら、先導する親衛隊の人に睨まれた。

 

 はいはい、貴人の時間は数秒でも貴重。急げってことね。

 

 入念に身体チェックを受けたあとに中に進むと、そこには緑が広がっていた。

 

 テラリウムドームというやつだ。

 

 この岩の中に再現された、旧世紀にして19世紀頃の英国式庭園。草木、噴水、全てに手が行き届いており、通路に舗装された石畳すら美しい。

 

 どういう技術を用いたのか、無重力空間に浮かぶ岩塊の中なのに、ここには重力がある。

 

 床石で舗装された道の先に、白壁の古風な屋敷が見えた。

 

 入口にたどり着くと、そこには金髪寄りのブラウン髪を持つ美女が待ち構えていた。

 

 確かギレン・ザビの秘書兼愛人で、セシリア・アイリーン。

 

 原作ではセリフもなかった端役だが、ゲームやコミックで性格付けされたキャラクターだった。

 

「遠路はるばるご苦労さまでした中尉。閣下がお待ちです」

 

 うむ。見事な喜久子ボイスだ。このザビ家専用の保養地にいるということは、やっぱりこの世界でも彼女はギレンの愛人なんだろうな。

 

 前を歩く彼女の後をついていく。

 

 歩き方がやたらと色っぽい。

 

 スタイルいいからだろうね。彼女を愛人にしているギレンはIQ240の天才だというけれど、意外と俗っぽいな。

 

 さて、このザビ家の別屋敷、赤い絨毯にシャンデリア。そして壁や天井を彩る装飾の数々とやたらとケバケバしい。

 

 ところどころにザビ家の紋章やら、ジオン公国建国の歴史やらが、立体映像で投影されている。

 

 ――成金趣味だよなぁ。

 

 まあ、ザビ家はジオン共和国を実質的に支配する独裁者だ。対外的にこのくらいの見栄は必要なのかもしれないけど。あんまり品がないよね。

 

 なんて考えてたら、前を行く彼女が立ち止まり、鋭い目でこちらを睨みつけてきた。

 

 作品によって、彼女はニュータイプの素養があったとされてたなぁ。こちらの悪感情に気づいたのかもしれない。

 

 面倒だから気づかないフリしよう。

 

 眉をしかめたまま彼女は歩き出す。

 

 さっきより歩くの早いな。僕は小柄だからその歩調で歩かれると小走りにならなきゃならんのよねー。

 

 さて、とある一室の前に着いた。

 

 セシリア嬢が来訪を告げると、「入れ」とローバリトンの銀河万丈ボイスが届く。

 

 セシリア嬢によってドアが開けられ、中へと入る。

 

 彼女は同席しないようだ。

 

「……ふむ。たしかに子供のようだな」

 

 なんか高そうな金縁彫刻を施したテーブルを前に、これまた豪華な装飾のされた椅子に座ったギレン・ザビが居た。

 

「地球防衛機動軍麾下、北米方面軍ガルマ准将麾下、特務部隊『閃光の伯爵』所属オルド・フィンゴです」

 

 僕の雑な挨拶に、一瞬ギレン総帥が眉……はないんだけど、眉間を微妙に動かした。

 

「貴様は修飾じみた言葉のやり取りは好まんようだ。私がここに呼んだ理由はわかるか」

 

 そりゃあまあ。ガルマ准将経由で、極東で見つけた『黒箱』からサルベージした技術のいくつかを報告してるからね。

 

「貴様があげた『二酸化炭素の資源化、炭素からの酸素分離供給技術』は再現が進んでいる。これを見つけた貴様は人類に多大な功績を上げたと言えるだろうな」

 

 そう言って立ち上がったギレン総帥は、僕の正面まで歩み寄ってきた。

 

 この人身長が190cmぐらいあるから、正面に立たれると人影で視界が暗くなる。

 

「だが、貴様は数々の問題も起こしているようだ。上司への不敬、命令違反、独断による作戦実行、さらには予算の横領」

 

 あ、そっち?

 

「あ、はい。全部やってます」

 

「貴様は私を恐れぬか」

 

 戦争始まってから……いや、黒歴史に触れてから、死への恐怖といったものは感じなくなってしまった。

 

 ヤケになったとかではなく、ただ、自分はそういう存在なのだ、と納得したというか。うまく説明できないが、人間味というものが欠けているのは当然だと自覚した。

 

「殺す気ならわざわざここまで呼ばないでしょう。しかも外に護衛が待機してるようですが、部屋には二人きりだ」

 

 そこまでして僕に確認したいことがある。そういうことだろう。そして僕も、ある種の確信を持っている。

 

「あるのですよね? ここに。『黒箱』――『黒歴史』が」

 

 僕の言葉に、ギレン総帥の目は鋭さを増した。

 

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