目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第230話 Side『マインド・エデュケーション』

 

「この一年、貴様がジオンにどのような影響を与える人物か見定める。そのためだけに泳がせていた」

 

 そう語りながら、ギレン・ザビは黒い(プレート)をひっくり返してみたり、かるく振ったりしてみせる。おちゃめか。

 

「大戦時もそうだ。貴様はあのピースクラフトの忘れ形見と懇意にしているな? 正体を知った上で」

 

 ゼクス大佐のことね。やっぱ知っていたのか。

 

「他にも、ガルマにアルテイシア嬢を引き合わせたのも貴様のようだな」

 

「何かお疑いで?」

 

 ギレンの目は一層鋭くなる。射抜く、というより切り捨てるって感じの無機質な刃みたいだ。

 

「力を得た者は、その力に対しての責務を負う。いや、欲が生まれると言ったほうが正しい。意味はわかるか」

 

「つまり、手に入れた黒歴史を使って、自分の欲求を満たすために暗躍するのでは、と考えられてたと?」

 

 間違ってはいない。実際利用してるし。暗躍というより大手振ってますが。

 

「大戦を終えても貴様は変わらんようだったな。そしてこの素材(・・)を私に送ってきた。貴様の目的は、好奇心の探求と推察したが?」

 

 黒い板を机に置くギレン。

 

 さすがに頭いいな。

 

「はい。そうですね」

 

 僕は素直に頷く。

 

 黒歴史から得られる情報の数々。それは膨大だが、掬い上げれば確実に現代の文明を躍進させる技術が眠っている。

 

 それを使って、僕は自分の思想的(・・・)欲求を満たすつもりだ。

 

 極東の元地球連邦軍技術開発局に極秘……というほどではないが、作らせた黒い板。それはその布石の一つである。

 

 それをギレンは指でこつこつと叩く。硬質ではあるが、金属とは違う音がする。

 

「この薄さでありながら、連邦が使うチタン系合金と同程度の強靭度。それでいてより軽量。これは貴様が情報をサルベージした成果か」

 

 黒歴史からの技術発掘。

 

 ギレン・ザビに渡したのは、そのひとつ。

 

 Eカーボン。

 

 ガンダム00の世界で一般的に用いられている、炭素系素材。

 

 それを宇宙世紀――いや、この世界で再現する。

 

 それを目標として作った一品。

 

 最初はPS装甲を再現しようかとも考えたんだけど、あれMSの装甲一欠片作るだけでも、やたら大きな製造装置が必要で、その製造装置建築の基礎技術も研究しなければならないので止めた。

 

 一方、Eカーボンは、素材は既存廉価なものでよく、分子配列ががわかれば、製造機械は連邦から接収したハイ・チタニウム――連邦が使用するチタン系合金の一般的な総称――用の遠心分離機が流用できたので比較的楽だった。

 

 このEカーボンの強靭度はすごい。厚さ3mm程度の板でも、MSが扱う90mm砲弾の直撃に耐えるぐらい。

 

「あ、でもそれまだ試作で脆い方なんですよ」

 

「ほう? これでか」

 

 またピクリ、と眉間が動く。

 

 なんかこの人、意外にも気さくな雰囲気だったりするな。大柄なのと、目つきと眉がないせいでインテリヤクザみたいに見えるが、実は思いの外、人間ぽいというか感情的なのかも。あのキシリアとの仲も悪くないというしな。

 

「地上だと重力のせいで分子配列に偏りが出ちゃいましてね。素材も質が悪いものを使ってますし。無重力下かつ、専用の製造機が作れれば、連邦のルナチタニウムに負けない強靭さの品が作れるんですけどねぇ」

 

「だから資金を出せというか。だがこれだけでは――」

 

「有能さを示せ、というなら他にも持ってきてますよ」

 

 その言葉に、ギレンは挑むように言う。

 

「手荷物の検査は終えているはずだがな」

 

 そうだね。着替えすら用意されたもので、手ぶらで船に乗せられた上に、発着場でも身体チェックされた。

 

 でもね――

 

「駄目ですよ。人間にたよっちゃあ」

 

 僕は笑って口に指を突っ込んだ。

 

 以前ガルマくんに殴られ折れた奥歯。

 

 宇宙世紀驚異の技術でくっついたけど、接合不良だったのかまた取れちゃったんだよね。

 

 なのでそこだけ義歯にした。

 

 で、ついでなのでそこにマイクロチップ埋め込めるポケット用意したのよ。

 

 よいしょっと奥歯を外して取り出し二つに割ると、中からデータチップが現れる。

 

 ほい、とそいつを差し出す。

 

 ギレン総帥の顔が明らかに引き攣った。

 

 大丈夫だよ。唾液ついたりはしてないって。中は完全に隔離されてるから。

 

 

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