目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

256 / 260
第231話 Side『マインド・エデュケーション』

 

 なんか机の引き出しから手袋だして装着し、渋々って感じで受け取られた。

 

 チップは汚くないんだがなぁ。

 

 端末に差し込んで、データに目を通す。

 

 時間にして5分ももなかったかもしれない。ただ呆然と突っ立ってるのは暇なので、お茶の一杯でも出して欲しかった。

 

「――小型改良化されたミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉と、ミノフスキードライブによる高速航行、そしてネオ・サイコミュによる超高速通信の実用化か。まるでSFだな」

 

「そちらが求めている素材(ピース)だと思いますが」

 

 ふん、と鼻を鳴らすギレン。IQ250は伊達じゃないのか、僕が用意した資料を高速で読み込んだみたいだ。

 

「人類の生存圏を外宇宙にまで広げる計画か。レポートを見る限りは、理にかなっているが」

 

 マクロス計画――という名称は冗談でつけたが、僕は可能であると判断している。

 

「先ほどのEカーボンと、二酸化炭素の資源化技術。新型高出力ジェネレーターによるエネルギー問題の解決。ミノフスキードライブとそれに付随するミノフスキーエフェクトによる、安全で高速な宇宙航行。コロニーそのものを船として、人類は銀河を渡ることができます」

 

 広大なコロニー船の中で世代交代を繰り返しながら、居住可能、資源となる惑星を見つけて開拓していく。

 

 そうして人類の版図を拡大する。

 

「そしてネオ・サイコミュによる超長距離高速通信。実現できるならば、だ」

 

 できますとも。

 

 ミノフスキードライブは基礎技術から研究しなくてはならないが、改良型のジェネレーターは、理論がわかれば既存技術を組み合わせて再現するだけのものだ。必要なマテリアルも従来のものでいい。失敗した場合核爆発するから、それなりの実験場が必要だけど。

 

「ネオ・サイコミュについては、元連邦の技術者によって雛型と呼べるものが完成してます」

 

「資料にあったZEROシステムか。貴様が独断で我が方の兵器に搭載したやつだな」

 

「北米と南米間での通信遅延はまったくありませんでしたね。現状、イメージや当事者の感情しか受け取れないのが問題ですが、それも黒歴史から技術や理論をサルベージすれば解決できます」

 

「どの程度でできる」

 

「カーボンなら数年内。現行のものでよいなら、後は量産体制を構築するだけです。他も理論は既に構築されてますから、10年もあれば形になるでしょう。ネオ・サイコミュ通信については、まだまだ未知の部分が多く検証が必要ですが、20年内にはまとまるかな、と」

 

 こちらの言葉に、ギレンはじっ、と探るような目を向けてくる。

 

 自分にとって都合がいいかどうか、ずっと考えているのだろう。

 

 ここに呼んだのもその為だ。

 

 彼が脳裏に描いた未来図を僕が理解していることをわかった上で、とりいれるか、それとも排除すべきかシュミレーションを繰り返している。

 

「……貴様は、人間をどう定義している」

 

 ふむ。主義主張で選ぶか。

 

「抽象的ですね。まあ、たぶん、そちらと同じかと」

 

「聞いているのは私だ。答えろ」

 

「……人は永遠に闘争を求めるもの。そう定義しています」

 

 大多数の人間は理性とは無縁だ。

 

「感情の思うままに動き、自分たちにとってそれこそが理性だと講釈をたれ、自分たちにとって都合の良い話に飛びついていく。僕ら(・・)を含め、人類はそういうものであるのでしょう」

 

 人類史が始まってからどれだけの世紀が過ぎたか。この世界は僕が知っている前世よりも遥かに未来を生きている(・・・・・)。でも何千年という時の流れ程度では、本質というものは微細も変わらなかった。

 

「穏やかな平和というものは、生き物が睡眠を取るのと変わりません。戦うのに疲れたから休む。その間にじっくりと英気を養いながら、次に犠牲にするものを見定める。その平和の中でさえ、自身の利益を追求し、互いに争うのが人です」

 

それを超えるのがニュータイプ(・・・・・・・・・・・・・・)だと、かのダイクンは定義していた」

 

 エスパーと呼べる人種は太古の昔から存在した。今更、雨後の筍のごとく生まれ出てきたわけじゃない。

 

「ニュータイプとは、人類が闘争を続けるために生み出した装置でしかありません」

 

 ニュータイプとしての感応波は、スウェッセム因子によって発せられるものだ。

 

 ギレンに提出したレポートにも記したけど、このスウェッセム因子は外的要因で増減させることができる。そしてスウェッセム因子は、人の闘争本能が刺激されることによって活性化する。

 

 闘争本能と書くと、他者と直接的に戦うことをイメージしがちだが、スウェッセム因子に関しては、自身の欲求を満たそうとする強い意志、と表した方がよいかもしれない。

 

 表層的な感情よりももっと深い場所で作られる、魂の思惟(・・)のようなもの。

 

「完全なる相互理解は不可能だと?」

 

「貴方も同じ意見でしょう。だからダイクンの思想を意図的に捻じ曲げ、『優性人類生存説』などという先鋭化した選民思想を国民に植え付けた」

 

 原作のニュータイプとされた人物たちを見てみよう。

 

 彼ら彼女らは、人類の革新、相互理解の象徴とされながら互いにいがみ合い、時に戦場で殺し合った。

 

 アムロ、シャアの立場と思想による対立。哀しみと絶望。

 

 カミーユの激情と、シロッコの野望。厭世感による精神の崩壊。

 

 ジュドーの時勢を読まない径行と、ハマーンの恐れと慰めの拒絶。

 

 合理性よりも感情を優先する生き物の見本市のようだ。

 

 むろん、合理性や社会性といったものが、本当にこの世界における正義であるなんて決まっていないけれども。

 

 ただ遠い未来――黒歴史では――ニュータイプを内包したはずの人類は、何度となく文明崩壊を迎えている。

 

 結局はギレンが描いた通り、幻想的な選民思想でしかないのだ。

 

 そもそもが政治家(アジテーター)の放言でしかない思想。そんなものに未来が振り回される。

 

「人同士が解り合えないのは当然なのです。互いに争うために、奪い合うために生まれてきたのですから。そのために思想をつくり、国をつくり、企業を建てる。それぞれを区分けする。理解するための精神力も体も、僕たちには用意されていない。だから、|ニュータイプ論争に語られるニュータイプなんてものは存在しない《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》」

 

 相容れない者同士が、その精神性――魂の全てを否定するためニュータイプに覚醒する。

 

 僕はそう思っている。

 

 優しさや穏やかさでは歴史を動かせないのと一緒だ。

 

「……いいだろう」

 

 僕の話を聞いたギレンが立ち上がる。

 

「概ね私と同じ意見だ。貴様にはアレ(・・)を見せる価値があるかもしれん」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告