目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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最終話 After 『EndlessWaltz』

 

 ズムシティに帰ってきたら、拉致られました。

 

 ども。オルド・フィンゴです。

 

 ただいまドスを持ったおっさんに馬乗りになられています。

 

 どうしてこうなったか説明すると――

 

 ギレン・ザビ総帥との謁見も終わり、ズムシティに戻ってきたので久々に家に帰ってみるかなーと思ったら、宇宙港でやたらと強面の男たち数人に囲まれ、コロニー間連絡船に詰められてどんぶらこ。

 

 あれ? 僕ザビ家というかジオンにとって最重要人物のカテゴリにランクインしたんじゃなかったっけ? SPついてないんですか?

 

 なんて考えつつ、小指の先無くしてるおっさんに軽く小突かれながら到着したのは、首都から離れたコロニーで、やたら和風建築な門構えをした屋敷。ご丁寧に表札があって、そこには木彫りで『キリシマ組』と書かれていた。

 

 はて、キリシマ? どこかで聞いたような。なんて考えつつ 和風庭園の見える座敷に引きずられるように向かわされ、そこで待ち構えていたのは、なんか長ドス手に上座に座る厳しいおっさんでした。

 

「てめぇがオルドか」

 

「そうですが、おたくさん誰です?」

 

 と聞いたら、「組長に失礼な口聞いてんじゃねぇ!」と僕の周りを取り囲んでるコワモテさんたちが怒鳴り散らしてうるさかった。

 

「テメェ、責任も取らねぇでよくもまあヌケヌケと!」

 

「何の話ですか?」

 

「ウチのハナコのことだ! テメェがヤッたんだろうが!!」

 

 ハナコ……花子? ハナ――あっ。

 

 フローレンス・キリシマ嬢か。

 

 えっ、ここ実家? やっぱヤクザの娘でしたか。てか、本名ハナコというのか……そりゃあ偽名使いたくなるぐらいダサい名前だなぁ。

 

 そんな事考えてたら、おじさんがドス抜いて飛びかかって来たので、斬られる前に相手の胸ぐらをつかむ。

 

 向こうの方が体格も勢いもあるので、倒れて畳に背中をぶつけるが、密着したせいで相手も刀を振るえない。

 

「人様の娘孕ませておいて、楽に死ねると思うんじゃね――ガボゴッ゙!?」

 

 うるさい口に、抜き出した銃身を突っ込んであげる。

 

「責任もなにも、向こうが勝手にしたことですしね。こちとら同意なんてしとらんのですよ」

 

「なひほ、ひってひゃがる!」

 

 銃口がじがじしてるおっさん。手製のテイザー銃だけど、口内に撃てば致命傷だし、最大出力なら内蔵も焼け爛れちゃうんじゃないかな。

 

「あ、周りの人達も動かないでね。この状態なら僕が首斬られるより早く引き金ひけるから」

 

 加勢しようとする手下を掣肘しておく。

 

「なにしてんだ! テメェルァァァァ!!」

 

 とんでもない声量で女性の罵声が響く。すると、慌てた様子でおっさんが僕の上から飛び退いた。口切れたかもね。

 

 僕も起き上がると、赤ん坊を抱いた女性――キリシマ嬢がそこにいた。

 

 なんか髪の毛を一本に編み込んでいて、以前よりもはるかに落ち着いた雰囲気をまとっている。

 

「やあキリシマ嬢」

 

「ごきげんようですわオルド。アンタ、変わりやがらないのですわね」

 

 呆れたような顔で彼女は言う。

 

 そして、そこからまた修羅場だった。

 

 彼女の父親が、僕に責任を取らせるべきだと喚き、まあ僕自身籍を入れるのは問題ないが、一旦キリシマ嬢には嫁という形でフィンゴ家に入って貰い、貴族籍を確保したほうがよいと提案したら、「うちのハナコは誰にもやらん!」とか訳わかんない理屈でヤッパ振り回したところを、ハナコ……キリシマ嬢に殴り飛ばされて大人しくなり、僕が「貴族籍に入ると、貴族年金貰えますよ」とその額見せたら、目を剥いて押し黙った。トドメに「今の子に家督継がせて、そうした後に家名を変更すればキリシマ姓も残る」と告げたら、首を縦に振った。やれやれ。

 

 で、その頃にはすでに夜の時刻になっており、用意された客間にキリシマ嬢……ややこしいな。フローレンス嬢と一緒にいる。

 

 ――というわけで。

 

「で、その子は僕の子?」

 

「アンタ、この期に及んで……まあ、そんなやつだとは知ってるけどよ」

 

 そう言いながら、これまでの騒動でもまったく動じず、スヤスヤ眠る赤ん坊を僕の腕に預けてくる。

 

 なんかやたら熱のある体だね。小柄だからだろう。

 

 髪はブルネット。目は閉じているのでわからないが、目元はお嬢に似てるかな? 顔の輪郭は僕に似てるといえば似てる。

 

「オスメスどっち?」

 

「犬猫みたいに扱うんじゃねぇよ!」

 

 子供を抱いてるのでさすがに殴られなかったが、手は振りかぶられたな。

 

 僕からみたら子供は動物と変わらん何かでしかないのだがね。言ったらさすがに殴られそうだ。

 

「女の子ですわ。名前はデージー」

 

 ヒナギクの英名か。花繋がりで名前まとめたんだな。ハナコだけに。

 

「なんか不穏なこと考えてやがんな」

 

「まさか。それより、君にずっと聞きたかったんだけど、なんで僕に構うんだい」

 

 僕は見た目はいいかもしれないけど、恋愛対象にするには問題のある性格だと思うんだ。

 

「そりゃあもちろん、ワタクシが勝つためですわ」

 

 いや、だから何の勝負なんだ?

 

「特に難しい話ではないわね。この先の未来、ワタクシが勝者であるために、貴方が必要だったということでしてよ。貴方こそいい加減認めたらどうですの。自分がニュータイプだと」

 

「僕はそんなもんじゃないよ。なにより僕には未来を作れない。せいぜいが過去にあったものを利用し、自分が見たいと思った景色を作り出すだけの俗物さ」

 

「何か勘違いしてますわね。自分がしたいと思ったことを貫き通すのが、ニュータイプですわよ」

 

 ふむ。確かに、原作歴代のニュータイプ達は自身の欲望に素直だった。

 

 でもその欲望さえ、悠久の(トキ)の中では些末なもので、暇つぶしでしかない。

 

 何の拷問だろうと思う。

 

 死ぬことも許されず、ただただ流れていく歴史を観測し続けるというのは。

 

 前世の記憶、原作の知識などなければよかったのだ。

 

 ただ愚かな一般人としてこの世界(シミュレーター)に生まれれば、先へと進む時間に期待を持てたかもしれない。

 

 黒歴史なんてものを知らなければ、繰り返される人間の業に飽きるなんてこともないだろう。

 

「未来なんて言葉で希望を持てるほど、この世の中に期待しちゃいないよ。なにより人ってやつは――」

 

「『争うために生きている』だろ」

 

 鼻で笑うお嬢。

 

「だからそれがなんでやがりますの? そんなの当たり前ですわ。存在するということは、抗うということですもの。人は残すものですわ。希望でも、禍根でも」

 

 椅子がある。仮に椅子が生きているとすれば、それは椅子であるために、腰かけられたとしてもその形を保とうと、力に抗うことだろう。できなければ、脚、背もたれはへし折れ、残骸となる。それが死だ。そして、残った残骸が、そこに椅子があったことだけを知らせる。

 

「だから何だというんだ。『それでも』、『いつか』、『必ず』ーー何度耳にしたか。何度それを目にしたか」

 

「だから世の中を斜めに見て、世捨て人を気取るおつもり? 人の生き方に絶望したのなら、最初から命をお諦めになればよろしいんじゃね、ですわ」

 

 それはできないんだよ。

 

 僕は死ねない。

 

 そう作られたプログラム。それが僕なんだ。おそらく僕という自我そのものが黒歴史コードの一部。

 

「結局アンタは、自分が中心でしかものを見れない俗物なんですのよ。だから万能者を気取ってるアンタのその思い込みをアタシが叩き直してやるっていってんだよ」

 

 彼女の鋭い目はいつでも真っ直ぐに僕を見てる。

 

「答えになってないよ。だから君は、なぜそんなに僕に構う?」

 

「勝つためですわ」

 

 同じことを繰り返す。

 

「女は勝つために男を手に入れる。それこそ、アンタが好きな歴史ってやつが証明してるもんだ。勝った女がずっと未来(れきし)を作ってきた。男は現状を作り、維持することしか出来ないから、戦争で女を手に入れる。ちがくて?」

 

 乱暴だけど、全て否定はできない。というか、否定させてくれない圧力を感じる。

 

「人は争う。未来に希望はない。歴史は永遠にくりかえされ、そこに意義など見出さない。それがなんだと言いますの? 勝つために生まれた。敗者を踏み躙り、嘲弄し、優越感に浸るために個人は存在する。それのどこが問題なんだって話ですわよ。|他者を踏み越え、自分が正しいと主張できる。それが真のニュータイプってやつですわ! 《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》」

 

 いつでも挑戦的な瞳。そこから視線を外せなくなる。

 

「世界の有り様なんて、ワタクシが決める。世界も歴史も、時間さえも知ったことじゃねぇですわ。歯向かうものは、ぶっ殺して泣くまで奥歯ガタつかせてやるってもんよ」

 

 いや、殺した後は泣くことも震えることもできないでしょう。

 

「まるで、魔王だね」

 

 理論理屈でもなんでもない。

 

 ただ感情に徹した暴論。でもきっと、そうした暴力がいつでも時代を動かしていくのだろう。

 

 頭に詰め込んだ歴史の教科書では知っていた。だけど、彼女の言葉、姿勢、身にまとったオーラが、感覚としてそれをわからせてくる(・・・・・・・)

 

 なるほど。だから僕は必要らしい。

 

 彼女が頂点に君臨するために。

 

 彼女が彼女らしく納得できる世界を見続けるために。究極の自己満足を得るために。

 

 僕は観測者。

 

 この世界を作った創造主の目となり、生まれるデータをたひだ出力するだけの端子。いわば神の目として作られた機械。

 

 だが、存外、自分は人間として生きていたかったのだ、と今さら納得する。

 

 誰かを必要とし、誰かから必要とされる。

 

『平和とは、魂がそれぞれの家に戻ること』とは、誰が言った言葉か。

 

 僕は、人間として生きたいと抗っていると、そうわからせたかったのか。それを証明する形が、今腕の中にあると。僕が装置でしかないのなら、子供なんて作れない。

 

「おーっほほほほ! 女王様とお呼び!」

 

 そう言って、彼女は笑うんだ。

 

「そうだね。僕の負けだよ」

 

 ここは宇宙世紀。

 

 優しささえも深い悪意へと変わるこの世界。

 

 それでも僕は抗い、存在し続ける。

 

 いつかたどり着くかもしれない、『それでも』の先へと想い馳せながら。

 

 

 ――fin.

 

 

 

 





 あとは著作についての『あとがきと感想』になります。本作を読んでくださった方々、ありがとうございました。
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