目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

26 / 260
第24話 Side『オルド・フィンゴ』

 

 目的の受領場所は第67物資集積所。

 

 イグルーだとヒルドルブの再評価試験のバックアップ担当の場所だ。

 

 無事到着できたのでまず一安心。まだ3月だし、セモベンテ隊はやってこなかったらしい。

 

 あれ? でもここでヒルドルブ引き抜いちゃったらあいつら大暴れしちゃうのでは?

 

 んー後で考えよう。

 

「北米方面軍第1機動大隊麾下、第1機動小隊。辞令によりYMT-05の護送を担当させて頂きます」

 

「ああ」

 

 集積所についたら、そこには陸の王者、デメジエール・ソンネン少佐が待っていた。

 

 ……んだけど、なんかすっげー不機嫌なご様子。

 

「まさかお前が来るとはな、マイク、いやラムザット」

 

「軍の命令だからな」

 

 なんかうちの隊長と知り合いみたいだな。しかも、悪い方の。

 

 マイクってのは、隊長のミドルネームだ。嫌悪感丸出しなのに名の呼び方に昔の親しげな雰囲気がある。これは間違いなくめんどくせぇ案件だな。

 

 ソンネン少佐は敵意のこもった雰囲気を隠す気はないようだ。

 

「で、今更なんだ? 再評価試験だっていうからこんな僻地に降りてみれば、大した目標もなく補給物資の目録とにらめっことはな」

 

「上層部は見る目がなかったってことですよ」

 

 僕の物言いに、少佐は面白そうに口元を歪めた。

 

「ほう。言うじゃねぇか坊っちゃんよ」

 

「オルド・フィンゴ中尉です。このヒルドルブこそ、現環境に合致した兵器であると小官は考えますね」

 

 そう言って端末を取り出し、データを読み込む。

 

「評価すべきは分厚い装甲と大火力、そして高い踏破能力です。この重力戦線はMSだけでは心許ない。ドムは良い機体だが、給排気機構と砂塵の相性は最悪だし、AFVとしてのマゼラ・アタックは設計者の頬をひっぱたきたいほどの欠陥品だ。ありゃ戦車じゃなくて、移動可能な砲台でしかない」

 

「わかってるじゃねぇか!」

 

 少佐は破顔すると僕の肩に腕を回し、ばしばしと背中を叩く。すげー痛いです。

 

「まあ、欠点も大きいですけどね」

 

「なんだと?」

 

「まずモビル形態が気に食いません。この可変機構のせいで容積を無駄にとっている。しかもタンク形態では砲塔旋回もできないときた」

 

「位置が高くなるぶん、射撃に有利だろう、位置エネルギーを利用できる」

 

「砲を不安定にしておいてですか? モビル形態だと砲撃の反動を殺しきれないでしょう」

 

 少佐がうなる。自分でもわかってるんだろうな。さらに欠点をあげつらえば、ザクと同じマニピュレータを持っていることだ。

 

 運動性で劣る戦車で格闘戦なんてどだい無理なんだから、人型の腕をもたせる意味はない。それどころか、手持ちの武装で使えるのはマシンガンだけとか、人型の汎用性という言葉の意味をもう一度考え直してもらいたい。

 

「さらにモビル形態になったら、機構上脆弱な関節部や、コクピットを前面にさらさねばなりません。どこにメリットがあるというのです?」

 

 僕の言葉に、少佐の顔はみるみる不機嫌になっていく。あ、待ってください。ちゃんと代案あるんですよ。

 

「そこでこれですよ少佐。見てください」

 

「あー? こりゃ、お前……」

 

 端末に映し出された、設計データにソンネン少佐は絶句する。

 

「先程の欠点を排除し、本来のモビルタンク計画に近い形に再設計してみました。まだCAD/CAMシステムに通してないので具体的な数値は出せませんが、かなり親しみやすい姿でしょう」

 

 そこには、巨大な戦車の姿が映し出されている。

 

 好奇心に飽かせて手に入れたヒルドルブのデータを、弄りまくって作った設計図だ。

 

「変形機構を排したことで、空いた容積にドムの熱核ジェットエンジンを積みまして、ホバークラフトも可能にしました。軽量化もできてますから、水上も行けるようになります」

 

 ヒルドルブの重量を支えられる橋梁は存在しないので、ホバーで渡河できるのはかなり重要だ。

 

 さらに歩兵を輸送する設備を設けて装甲兵員輸送車としての機能も付加してある。可変機能とマニピュレータの排除によってジェネレーターの電力がだいぶ余るので、先日手に入れた連邦艦艇の電磁投射砲をコピーした砲塔を装備させてみた。口径は360mmまでのものが使用可能で、装填さえ可能ならば弾頭だけでなくガラクタでも撃ち出せる。射出時の初速を調整可能とかなりのハイスペ。

 

「おい、いくら何でも机上の空論すぎるだろうよ」

 

「いえ、どれも既存技術の寄せ集めですよ。それで本来の計画に沿った再設計を行っただけです。先日第2次降下作戦でキャリフォルニアを奪取しましたから、工廠が復旧すれば製造まで一足飛びですよ」

 

 実はガルマ大佐にまたまた無茶を言って、グラナダの方で設計図の計算をしてもらっている。設計自体は単純だから、開発費も大分抑えられた筈だ。おかげでMAという青い風船の製造が没になったようだが、知ったことか。時速10kmの移動砲台などいらない。

 

「操縦はMSとゾッドの制御システムを搭載しますから、旧来より遥かに簡便になります。つまりは――」

 

「MSの適性試験に落ちたものでも扱える」

 

 俺は笑った。

 

「ええ、そうです。陸の王者の戦い、再び見せつけてやりませんか?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告