目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「デメジエール!」
死んでいたはずの61式が砲塔を回すのを見た瞬間、俺は思わず叫び、フットペダルを踏みこんだ。
全身を襲う衝撃。
ドムの前面装甲はザクよりも遥かに厚い。だが直撃の衝撃をすべて殺せるものでもない。
視界が赤いのは緊急ダメージを報せるアラートか、俺の血なのか。
「無事かマイク!? 生きてたら返事しろ!! マイク! マイクッ!!」
聞こえている。
「そう、喚くな……聞こえている。中尉、残敵は?」
「処理しました。残敵反応なし、今度こそ終わりですね」
「良くやった」
機体が仰向けに倒れているのだろう。背中がシートに深く沈み込み、モニターに青い空が映っている。
「無事なのか?」
こちらを心配してくるデメジエール。
手足を動かし確認してみるが、問題はない。出血もなさそうだ。
「問題なしだ」
「馬鹿野郎が……なんで俺なんか庇いやがった」
「軍人として、任務を全うしただけだ」
ヒルドルブ、及びそのパイロットの護送。それが俺の任務……いや、
「違うな。俺は、お前に謝りたかった」
「なんだと?」
モニターに映る青い空と、流れる白い雲。
この地球に来て、唯一綺麗だと感じたものだ。
「俺は祖国のために、ジオンのために私情を捨てた軍人になるつもりだった。上がMSを主力兵器と定めたならば、それに従うのも当然だと思っていた。たとえ、これまでの俺たちの経験すべてを否定されたとしてもな。MTは時代遅れの不完全な兵器だと侮ってもいた」
だから、苦しむ友を見捨てた。
悩み、悲しみ、苦しむ戦友に背を向けたのだ。
「すまなかった、デメジエール。お前は、戦いたかったのだな……俺も、お前と供にもっと戦いたかった」
「マイク、お前」
俺はすぐに諦めた。上が決めたことだから、と戦車兵教導団に見切りをつけ、転換試験に受かったことで逃げるようにMSへ乗った。デメジエール、お前はずっと抗っていたのだな。
俺はここにいる。俺はまだ戦える。俺は、俺たちの技術は決して無駄ではない!
「すまなかった。そのひとことを伝えたかったのだ。MSに乗るたび、俺は常に後悔していた。お前が苦しんでいるとき、お前を支えることができなかった自分が不甲斐なかった」
「やめろ。もういい。俺は俺の生き方に後悔なぞしていない。俺は戦車兵だ。ロートルと言われようが、時代遅れの化石と言われようが、それしかできねぇんだ。それでも、俺には俺にしかできないことをする。それが軍人なんだ、と今日のことでわかったよ」
デメジエールの口調は、憑き物が落ちたように、穏やかだった。
「何も腐る必要はなかったんだ。それを、俺が勝手に身を崩しただけだ。おまえがその責任を背負うもんじゃねぇよ」
「あー、男臭い話をしてるとこ割り込んですいません」
通信に緊張感のない力の抜けた声がまざり、苦笑がもれる。
中尉、君はいつでもマイペースだな。
「大尉、機体を動かせないなら、ハッチを炸薬ボルトで吹き飛ばして外に出て貰えます? 正面装甲が歪んでて、こちらから開放することは無理そうですから。それと少佐――なにか悟ったようですが、大変なのはこれからですよ」
「あ? どういうこった」
「61式車両3つに、MSを4機。今日の少佐のスコアです。これだけの技術をもった兵士を上が切り捨てるとでも?」
「馬鹿言え。今回はMSと、マイクと共同しての結果だ。ヒルドルブ単体の戦果じゃない」
「だとしても、です。MSと連携すれば白兵戦も捌けるという証左でもあります。MSもそのパイロットも高価でまだまだ貴重だ。この過酷な地球環境で戦線を押し上げるには、単純で、強固で、でっかい戦車が必要なんですよ」
ペテン師というのは、こいつのような奴を言うのだろう。
まるで確定した未来を見てきたかのようにものを語る。それでいながら、嫌味がない。
ゼクス少佐に、スパイを疑えと言われた意味もわかる。ここまで胡散臭いと、疑いたくもなるものだ。
だが、今だけは騙されてもいいのかもしれないな。