目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第27話 Side『エイブラム・M・ラムザット』

 

「デメジエール!」

 

 死んでいたはずの61式が砲塔を回すのを見た瞬間、俺は思わず叫び、フットペダルを踏みこんだ。

 

 全身を襲う衝撃。

 

 ドムの前面装甲はザクよりも遥かに厚い。だが直撃の衝撃をすべて殺せるものでもない。

 

 視界が赤いのは緊急ダメージを報せるアラートか、俺の血なのか。

 

「無事かマイク!? 生きてたら返事しろ!! マイク! マイクッ!!」

 

 聞こえている。

 

「そう、喚くな……聞こえている。中尉、残敵は?」

 

「処理しました。残敵反応なし、今度こそ終わりですね」

 

「良くやった」

 

 機体が仰向けに倒れているのだろう。背中がシートに深く沈み込み、モニターに青い空が映っている。

 

「無事なのか?」

 

 こちらを心配してくるデメジエール。

 

 手足を動かし確認してみるが、問題はない。出血もなさそうだ。

 

「問題なしだ」

 

「馬鹿野郎が……なんで俺なんか庇いやがった」

 

「軍人として、任務を全うしただけだ」

 

 ヒルドルブ、及びそのパイロットの護送。それが俺の任務……いや、

 

「違うな。俺は、お前に謝りたかった」

 

「なんだと?」

 

 モニターに映る青い空と、流れる白い雲。

 

 この地球に来て、唯一綺麗だと感じたものだ。

 

「俺は祖国のために、ジオンのために私情を捨てた軍人になるつもりだった。上がMSを主力兵器と定めたならば、それに従うのも当然だと思っていた。たとえ、これまでの俺たちの経験すべてを否定されたとしてもな。MTは時代遅れの不完全な兵器だと侮ってもいた」

 

 だから、苦しむ友を見捨てた。

 

 悩み、悲しみ、苦しむ戦友に背を向けたのだ。

 

「すまなかった、デメジエール。お前は、戦いたかったのだな……俺も、お前と供にもっと戦いたかった」

 

「マイク、お前」

 

 俺はすぐに諦めた。上が決めたことだから、と戦車兵教導団に見切りをつけ、転換試験に受かったことで逃げるようにMSへ乗った。デメジエール、お前はずっと抗っていたのだな。

 

 俺はここにいる。俺はまだ戦える。俺は、俺たちの技術は決して無駄ではない!

 

「すまなかった。そのひとことを伝えたかったのだ。MSに乗るたび、俺は常に後悔していた。お前が苦しんでいるとき、お前を支えることができなかった自分が不甲斐なかった」

 

「やめろ。もういい。俺は俺の生き方に後悔なぞしていない。俺は戦車兵だ。ロートルと言われようが、時代遅れの化石と言われようが、それしかできねぇんだ。それでも、俺には俺にしかできないことをする。それが軍人なんだ、と今日のことでわかったよ」

 

 デメジエールの口調は、憑き物が落ちたように、穏やかだった。

 

「何も腐る必要はなかったんだ。それを、俺が勝手に身を崩しただけだ。おまえがその責任を背負うもんじゃねぇよ」

 

「あー、男臭い話をしてるとこ割り込んですいません」

 

 通信に緊張感のない力の抜けた声がまざり、苦笑がもれる。

 

 中尉、君はいつでもマイペースだな。

 

「大尉、機体を動かせないなら、ハッチを炸薬ボルトで吹き飛ばして外に出て貰えます? 正面装甲が歪んでて、こちらから開放することは無理そうですから。それと少佐――なにか悟ったようですが、大変なのはこれからですよ」

 

「あ? どういうこった」

 

「61式車両3つに、MSを4機。今日の少佐のスコアです。これだけの技術をもった兵士を上が切り捨てるとでも?」

 

「馬鹿言え。今回はMSと、マイクと共同しての結果だ。ヒルドルブ単体の戦果じゃない」

 

「だとしても、です。MSと連携すれば白兵戦も捌けるという証左でもあります。MSもそのパイロットも高価でまだまだ貴重だ。この過酷な地球環境で戦線を押し上げるには、単純で、強固で、でっかい戦車が必要なんですよ」

 

 ペテン師というのは、こいつのような奴を言うのだろう。

 

 まるで確定した未来を見てきたかのようにものを語る。それでいながら、嫌味がない。

 

 ゼクス少佐に、スパイを疑えと言われた意味もわかる。ここまで胡散臭いと、疑いたくもなるものだ。

 

 だが、今だけは騙されてもいいのかもしれないな。

 

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