目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
ノーラン・ミリガンはサイド2で生まれた。
父はコロニー建設公社の下請け会社に勤める建設員で、母は専業主婦。兄弟はいない。
裕福というほどでもないが、ことさら貧乏でもない。実に一般的な、特筆することもない家庭だった。
すべてが狂ったのは、8歳の時だ。
いつものように他バンチの商業施設へ買い物に行くため、母と連絡艇に乗った。
その連絡艇が連邦の輸送船と衝突してしまったのだ。
艦艇に穴が空き、添乗員が大慌てで客席にある緊急用防護服の着用をうながす。コンパクトだが、ヘルメットと緊急用酸素ボンベがついた代物だ。
母はまず我が子に、とノーランに防護服を着せ、ついで自分も、となったときにさらなる衝撃が船体を襲った。
ぶつかった拍子に剥がれた破片か何かが、ノーランの座るのとは反対側の客席の窓をぶち抜いたのだ。
大きく空いた穴に、物凄い勢いで空気が吸い出され、まだシートベルトをしていなかった者と母を飲み込んでいった。
全て一瞬のこと。
母の、絶望を湛えた顔だけがノーランの目にこびりついた。
事故の原因は連邦艦の管制無視だったが、いつの間にかコロニー出身の管制官がミスを犯したことになり、連絡艇を運行しているサイド側の責任ということにされた。
父との二人暮らしは特に会話もない静かなものだった。
もともと仕事人間であり、家庭に対してルーズな人間であった父は、娘に積極的に会話を行うようなことはできず、いつも二人は二言三言短いやり取りだけで、どこかよそよそしいものだった。
それでも、父はハイスクールまでノーランを進学させた。
サイド共栄経済圏構想を発表したサイド3にて、広く他サイドの留学生受け入れがはじまり、ノーランも機械工学を学ぶためにその意志を父に告げると、短く「やってみればいい」とだけ返ってきた。
こうして留学した矢先、忌まわしい事件が再び彼女の身に起きる。
サイド共栄経済圏構想を発表した後、連邦とサイドの間で艦艇の衝突事故が頻発した。
その日、管制を無視した連邦艦がサイド3のコロニーと衝突し、外壁に穴を開けた。
そこはノーランたちが滞在する学生寮が存在する区画であり、1000人規模の若者が死んだ。
ノーランは、たまたま他のバンチへ建設作業のバイトへと出ていたため、難を逃れた。しかし、同室であった友人はそうはいかなかった。
多くの級友を失い、ノーランは強い義憤に駆られる。
家族も、友人も理不尽に奪われた。それでも連邦政府は謝罪を告げるどころか、コロニー駐留軍の増員を行い、さらにはコロニー民の世論を突っぱね、その神経を逆撫でるかのように観艦式を強行する。
高まった不満を持つ若い学生たちの常として、彼女も反連邦運動へと傾倒していった。
ノーランが19歳を迎えた年、サイド3ジオン公国は、連邦政府に対して独立戦争を仕掛ける。
その戦いに、ノーランは志願兵として参加することを決意した。
母と、失った級友の仇を討つために。