目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第32話 Side『アフリカ戦線』

 

「こんなのが新型だって? これならマゼラアタックのほうが何倍もマシだね」

 

 整備用区画でMS(モビルスーツ)のコックピットから降りながらノーランは吐き捨てた。

 

 EMS-05G ゲーツ。

 

 ジオンがこのアフリカ戦線に送ってきた新型MSである。

 

 頭部はドムに、脚部はザクに似た機動兵器だ。しかし所々の装甲板が取り払われており、フレームがむき出しである。

 

「まあ、初乗りにしちゃあ悪い動きじゃなかったんじゃないか」

 

 苦笑しながらウッヒ・ミュラー中尉が言う。40代の彼はサイド1出身の傭兵上がりの兵士だ。この義勇兵を集めた第2混成機動部隊の隊長である。

 

 先程の演習で3機とも仕留めた熟練の戦車兵だ。

 

「ミリガンの動きはすごく良かったんだけどね」

 

 そう言ってフォローするのはライル・コーンズだ。

 

 ノーランと同じくサイド2の出身で、ノーランとはともに学生による反連邦運動からの仲間である。褐色の肌に、丸い眼鏡をした小太りの少年で、かなりのメカオタクだ。

 

「たしかにザクよりゃ動きやすくはあったかもしれないが……」

 

 ノーランは自機を見上げる。胴体の右側面、フレームがむき出しの部位にベットリとピンク色した塗料が付着していた。

 

 これが実弾だった場合、ジェネレーターごと操縦席を吹き飛ばされていただろう。

 

「連邦の戦車どもより装甲が薄いんじゃ、障害物のない砂漠で動くなんて自殺行為としか思えないね」

 

「そこは腕でカバーするのがエースってもんだろノーラン」

 

「うっさいよトニー! アンタも一撃だったろ!」

 

 自身を茶化してきたトニー・ジーンをノーランは睨みつける。

 

 赤い髪にバンダナをした少年。彼も学生運動で知り合った仲間で、ライルとともに3人で従軍を志願した。

 

「へへへ! オレは、連邦の奴らをバラバラにしてやれれば何でも――」

 

「ドク! アンタは論外! まともに歩けてもなかったろう」

 

「うひぃっ!?」

 

 ギョロリと剥きでた眉なしの目にスキンヘッドをした男は身をすくませて怖気づいた。

 

 ドク・ダームという名はおそらくは偽名だろう。年齢はその容姿のせいもあって不詳だが、ノーランたちのような学生ではない。発言はエキセントリックで過激だが、妙に臆病で弱気なところのある人間だった。

 

 他にも20名程が義勇兵としてこの部隊に所属しているが、顔は覚えていてもノーランは名前を知らなかった。

 

「まあ、こんな外人部隊に最新鋭のMSなんて配備してくるってのがそもそもな話だったからな」

 

 ミュラーはそう言って苦い顔を作る。

 

 新型MSとして部隊に予備を含めて4機配備されたEMS-05は、各サイド輸出向けのMSである。先行して開発された機体を重力仕様であるG型に改装し、試験的に設立していた志願兵や傭兵で組まれた混成部隊で運用データを見るつもりであった。

 

「乗った感想はどうなんだ?」

 

 そう言ってミュラーはノーランに視線を向ける。部隊のMS適性試験で評価がもっとも高かったのが彼女なのだ。

 

「いったとおり。マゼラアタックの方がいくぶんマシだね」

 

 ノーランは肩をすくめる。

 

「ライルが言うとおり、反応はまあ悪くなかった。だけどなんか機体が軽くて、あちこちガタついてる感じがする。テストで乗ったザクと比べたらあっちはがっつりした高級車。こいつは型落ちした作業用車ってところさ」

 

「なんだそりゃ? もっと詳細な感想はねぇのかよ」

 

「ろくに動かせないアンタに言われたかない」

 

「まあまあ、でも動かしやすいってのは利点だよ」

 

 ゲーツは輸出用のMSだが、新設計によりザク以上の機動性と運動性を目指した機体である。大胆にも被弾しても稼働に大きな支障が出にくい箇所の装甲を取っ払い、軽量化と可動域の拡大を実現している。

 

 しかし装甲が薄いために防御面にはかなりの不安がある。だが機体トルクはザクⅠと同値であり、ザクの扱う武器なら全てというわけではないが、問題なく使用可能であった。

 

 その実、フレーム構造が災いして内部容積を食っており、プロペラント容量が極端に少ないという欠点がある。

 

 他国への輸出用としてあえてそうした設計を行い開発したのであるが、専門家でもない隊員たちは分かり得ないことであった。

 

「機体冷却のついでにざっと見たけどさ、フレームがザクに比べてかなり大雑把で、ミリガンが乗ってて感じたガタツキってのはそのせいかもしれないね」

 

「不良品ってわけじゃなく、仕様だってことか?」

 

 ミュラーの問いにライルは頷く。

 

「これだけアバウトな造りだと、逆にザクやドムより整備が楽だ。雑に扱っても平気な感じ。装甲板もフローティング化されてるから、関節に防塵用の布でも被せるだけでこの砂漠での稼働率はだいぶ違うはず。性能はまああれだけど、さすがジオンの技術だよ!」

 

「はぁ、いくら技術がすごくても兵器の性能が低いんじゃ話にならないじゃないか。これならMW(モビルワーカー)に乗ったほうがマシだね」

 

 酷評するノーランの言葉に、ライルが何かを思いついたようて、眼鏡奥の目を大きく開いた。

 

「ああ、MWとして見るならかなり優秀かも。なんせMSは人型だから、人間が使う工具をもたせれば優秀な工兵になれるね!」

 

「はぁ、アンタ何言ってんーー」

 

「それはいいな。ちょうど次の任務で資源採掘坑道の拡張を頼まれていてな」

 

「ちょっと隊長!?」

 

「でかいツルハシがいるな。上には俺が通しとく、ライル、道具を3機分用意しといてくれ。宇宙からおろしてきたCAD/CAMを使って構わん」

 

「了解です!」

 

「ちょっと隊長! 冗談でしょう?」

 

「いや本気だ」

 

 ニカッと無精髭を震わせてミュラーは笑う。

 

「演習で戦車に負けたお前たちへの罰だ。ノーラン上等兵、トニー上等兵、ドク上等兵、お前たち3人はゲーツに乗り、坑道拡張工事に参加せよ。これはMSの操縦訓練でもある。気張ってやれよ」

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