目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
電磁砲云々の設定に関しては適当です。慣性誘導とか間違えてるかもしれませんので、鵜呑みにしないで。
UC.0079 5月上旬。
ジオン地球攻撃軍アフリカ方面軍は、来たる大型作戦に向けて、北アフリカにある連邦陣地を攻略することを決定した。
「それに伴い、我々第2混成部隊も陽動として北東にある連邦陣地への攻撃に参加することが決定した」
「お! やっと後方任務から開放されるぜ!」
「ひぃやっはー! 連邦はぁ、みぃな殺しだぜぇ!」
ミュラーの言に、トニーとドクは喜色を浮かべていたが、ノーランは血気にはやることはなかった。陽動ということは、敵の攻撃を集中して受けなければならない。
この地球攻撃軍に参加した当初だったらならば、手放しで喜んだ。敵を打ち倒すことができる、と。
だが軍の内情とこの過酷な地球環境を身体で感じ取って、そう容易いことではないのだ、と考え始めていた。そもそも自分たちは、兵器の扱い方を学んだだけの元学生だ。まともな戦力になるとは思えなかった。
「陽動といっても我らは予備のようなものだ。近くの陣地に近づいて敵を釣り出し、適当に戦闘して退散する。本命はMS3個小隊だ。こいつらは北方の大規模陣地を叩く予定だ」
その際に他からの増援などの横槍を通さないための陽動作戦である、とウッヒ・ミュラーは説明した。
「てことは、べつに陣地占領しなくてもいいわけ?」
「できるならそうする。作戦としては、隊のMSを先行して投入し、施設防御兵器を破壊。その後にマゼラアタック小隊をぶつける。相手の規模が小さければ、それで制圧可能だろうな」
「資源を確保した今、あえて資源価値の低い場所へ攻撃する意味はないんじゃないですか?」
ライル・コーンズがそう質問する。
開戦当初こそ、水と空気、鉱物資源に穀物と、かなりの制限があったジオンだが、地球の資源地を攻略することで問題は解決した。
隕石落としによるジャブロー攻略は叶わなかったが、勝ってはいないが、負けてもいないという状況を作り上げたのである。
さらに宇宙では、サイド1、サイド2、サイド4、サイド5との交易を密に行い、ギレンが公表したサイド経済共栄圏の土台が整いつつある。
このまま膠着した状態を維持すれば、経済的に連邦からの独立が叶うのではないか?
ライルはそう考えたようだ。
「まあそう簡単な話ではない。連邦もバカではないからな。本命が当たる北方の大規模陣地に、このキリマンジャロから持ち出された長距離電磁砲が確認されている」
ウッヒ・ミュラー隊長は説明した。
長距離電磁砲は超高速で砲弾を撃ち出すことのできる兵器だ。火薬には不可能な初速を砲弾に与えることができ、その有効射程圏は100数十キロにも及ぶ。
連邦は基地を放棄する際、この兵器を分解して持ち出したのであった。
トニー・ジーンが肩をすくめる。
「はー、どうりで奴らすんなり逃げてったわけだな」
「そんなものがあったんじゃ、宇宙に資源の輸送なんてしてられませんね」
「なんでそこで宇宙が出てくんだ?」
「資源輸送中のHLVが狙われたら困るだろ? ここにあった電磁砲は確か大口径だから慣性誘導が可能だったはず。狙われたらひとたまりもないよ」
「はぁ? ミノフスキー粒子があるから、誘導兵器は使えないんじゃないのかよ?」
トニーが首ひねる。ライルは待ってました! とばかりに目を開いて説明をし始めた。
「知っての通り、長距離の電波と赤外線誘導は不可能だよ。レーザー誘導も、ミノフスキーが撒かれた大気中じゃ安定しない。でも、砲弾に高度速度といった情報を読み取る機器を装備させて、予めインプットした地図データを照合しながら誘導すれば可能なわけだ。それが慣性誘導。件の電磁砲は、言葉通り火薬を使わずに撃ち出すものだし、大口径の砲弾ならそうした機材を取り付けることも容易だね。欠点はMSみたいな高機動の目標には適さない誘導方法でね、だけど施設などの固定目標なら百発百中ぐらいの命中精度で――」
「
ノーランの言葉にミュラーがうなずく。
「そういうことだ。大規模な宇宙港があるのはアフリカじゃこの基地だけだからな。よってこの作戦は重要だ。お前たちは前線に立つのは今回で初になるな」
ノーランは顔を固くした。キリマンジャロ攻略作戦の時は、マゼラアタックを操縦し、予備兵力として後方についていた。軍事のレクチャーは受けたがむろん急増。本当の意味で戦場では引き金を引いたことはないのだ。手のひらにじっとりとした汗を感じた。
「ノーランは1番MS、トニーは2番、ドクは3番機だ。ノーラン、お前にはMS小隊の隊長を任せる」
「アタシが?」
「お前がもっともMSを上手く扱えているし、広く物を見ている」
「アタシは上等兵だよ? 小隊長を任せられる身分じゃない」
ジオンのMS小隊は3機編成で1小隊と決められている。隊長は下士官と決まっていた。
「辞令はまだだが、明日にはお前は伍長に昇進だ。俺が推挙しといた」
「はあ!?」
「お前が適任だ。俺のような老人ではMSの扱い方はさっぱりだからな」
「おいおい! なんでノーランだけなんだ! 俺は!?」
何かとノーランに突っかかるトニーがミュラーに詰め寄る。
「お前はこの作戦を無事に生き残ったら上に話を持っていってやるさ。気張れよ」
「よおっし! その言葉忘れんなよ!」
子供みたいに張り切るトニーに、ノーランはお気楽なものだ、と呆れた視線を向けた。
「俺はぁ? 俺も昇格だろう?」
「ドク、お前は……頑張れ」
「なんで俺ばっかりぃぃ!?」
戦争をしているという緊張感のない男どもに、ノーランは今度こそため息を吐く。横にいたライルが同情をこめた苦笑を向けてきたが、それすらも煩わしくてその場を離れることにした。
今は他人のそばにいたくなかった。
この感情は不安じゃない。恐怖なんかじゃない。アタシは、復讐するためにここに来たんだから。
そう、自分の心に言い聞かせて。